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女の子はいつだってヒーロー ―吉澤嘉代子「月曜日戦争」の描くヒーロー像とは?

男の子はヒーローにあこがれる。 いや、正確に言うなら男の子はみんなヒーローだ。敵と戦うロボットや変身してすごいパワーを出す超人たち。男の子が思い描くヒーローはなりたい未来の自分だ。 女の子もヒーローにあこがれる。それはいつか会ったあの人。
「幼いころに救われた 貴方の役を
 いまこそ引き継ごう さあ敵はもうそこ」
 (“月曜日戦争”)


女の子であることは大変だ。女子力なんて言葉があるけど、同性を意識した彼女たちの饗宴はいつだってインフレ気味に上昇スパイラルを描いている。そんな女の子たちのヒーローはきっと熱しがちな女子の気持を代弁してくれる存在に違いない。

吉澤嘉代子。妄想系シンガーソングライターとして独自の地位を築きつつある彼女がエバーグリーンなメロディーに乗せて歌うのは、現実とイマジネーションをミックスした唯一無二の世界だ。

タクシードライバーとの会話がヒントになって生まれた「地獄タクシー」。夫を殺して逃げる凄惨な情景を軽快なホーンセクションに乗せて歌う。

夫を殺して逃げる凄惨な情景「地獄タクシー」

「「お客さま」 「はい」
「貴方」 「はい」
「貴方、もう地獄に落ちてますよ」 「え」」
(“地獄タクシー”)




背徳感と高揚感をあおるようにスウィングする曲調から緊張感が伝わる。しかしそれもどこかコミカルでユーモラス。どんな喜怒哀楽の感情も吉澤嘉代子の手にかかれば見事に5分間のポップソングという喜劇に早変わりする。

そんな彼女の新曲「月曜日戦争」は、20代女子の等身大の心情とファンタジックな世界観が融合した吉澤嘉代子の真骨頂といえる1曲だ。

あわただしい日々を生きる思いを彼女はそのまま歌わない。世知辛い一週間のはじまりの日に会社という戦場に駆けつける美少女ヒーロー。想像力という魔法をかけて現実にない架空の設定を生み出す図式は、まさにポップミュージックのそれである。

井上陽水やはっぴいえんどに影響を受けたと語る奥行きのある詩世界と古き良きポップスの魅力をつめこんだアレンジが、聴き手を彼女の生みだすパラレルワールドに運んでいく。


「ああ憧れの貴方ならどうしたでしょうか
 月のひかりに照らされた
 わたしは誰だっけ」
 (“月曜日戦争”)




同時にここには、想像のあわいを一周して現実に戻ってくる醒めた視点も共存している。会社というバトルフィールドにいるときでも、意識の片隅では演じている自分にちゃんと気づいているのだ。

女子は生き物として男よりもタフ

イマジネーションという武器を手にして現実に立ち向かうこと。そのことを本能的につかんでいる女子は生き物として男よりもタフだと思う。そんな女子的なあり方を自覚的にポップスに変換して届ける稀有な才能の持ち主として、吉澤嘉代子はこれまで以上に注目されていくはず。

さてキミの隣の彼女は今どんなことを考えているだろうか?


1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場育ち。 ヤマハ主催「Music Revolution」でのグランプリ・オーディエンス賞のダブル受賞をきっかけに2014年メジャーデビュー。 バカリズム作ドラマ「架空OL日記」の主題歌「月曜日戦争」を書き下ろす。2ndシングル「残ってる」がロングヒットする中、018年1···

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