3年ぶりのアルバム『あいすること』
──3年ぶりのリリースとなりましたが、お休みに入られた時にこのくらいのタイミングで戻ろうっていうことは考えていらっしゃったんですか?
Tiara:そうですね、自分の中ではもっと早く復帰をしているはずだったんですけれど、やっぱりやってみないとわからないですね(笑)。産後は思っていた以上に大変でしたし、時間かかっちゃいました。
──では逆に今なら大丈夫だと思えたきっかけというのがあったんでしょうか?
Tiara:復帰のお話自体は去年の初め頃から進めていたのですが、いつが現実的に可能なのかなってスタッフの皆さんと話し合いながら、楽曲の制作の時間や子供の預け先など、様々な問題について探ってきたという感じですね。
──アルバムの制作を決められてから、曲の制作に入られたんですか?
Tiara:ほとんどはそうなんですけれど、3曲くらいは産後に1人自宅で作っていた曲もありました。
──子育てをしながらの曲作りとなると、曲作りの時間をしっかり設けて作られる感じなんですか?それとも生活の中で自然と作られていくような?
Tiara:半々ですね。私の場合は制作に入ってからバーッと作ることが多いのですが、子供が生まれてからは自分に使える時間がものすごく少なくなってしまったので、不思議と集中力が高まったんですよ。今まで3日くらいかかっていたことが3時間でできるようになったりとか…人間ってすごいなって思いました。最初はそのバランスに戸惑いもありましたが、進めていくうちにだんだんいいバランスで出来るようになってきました。
──今作のアルバム『あいすること』のテーマって言うのは初めから決められていたんですか?
Tiara:いえ、タイトルを決めたのも最後の方でした。アルバムの中に入っている『あいすること』という曲が形になった時に、これをタイトルにしてもいいんじゃないかなって思って、ガラッと変えたんです。
──アルバム1枚通して、やっぱり女性の共感を呼ぶ歌詞になっていますが、今後もやっぱり女性の気持ちに寄り添っていくような曲を?
Tiara:そうですね、年齢を重ねるにつれて恋愛観も人生観も変わってきますし、結婚と出産を経験してまた新しい要素が加わり、かけがえのない大切なものが出来た事で、“愛するってこういうことだったんだ”ということがやっと分かりました。そして、両親からどれだけ自分が愛されていたのかという事も、人の親になってみて初めて感じる事が出来たんですね。新しい視点で曲を作り、歌えるようになったので、今作ではこれまでの作品とは違う、新しい表現ができているんじゃないかなと、実感しています。
──そうですよね、歌詞では特にそれが表現されているかと思うのですが、レコーディングをされていて3年前と変わった点など感じることはございましたか?
Tiara:この3年間は、音楽の事を考える余裕が無くて全く歌っていなかったので、本当に復帰できるかなという不安も正直あったんですけれど、ブースに入ったら違和感無く自然に歌う事が出来て、自分でもビックリしました。でも、お休みを頂いた事で全てがとても新鮮で、曲を作り歌う楽しさを改めて感じる事が出来、制作がとても楽しかったです。
世界の終わりを考えた時に生まれた『あなたとめぐる季節の中で』
──リード曲の『あなたとめぐる季節の中で』ですが、曲を書き始めるきっかけは何かあったんですか?
Tiara:この曲は、まず今井了介さんから楽曲を頂きまして、そこに歌詞をつけて行ったんですけれど、曲を聴いた時に最初に思い浮かんだのが「もし 世界が終わるとしても」のフレーズだったんです。そこからどんなストーリーがいいかなぁと色々考えながら作って行きました。子供の頃から、“ある日世界が終わるとしたら自分は誰とどんな風に過ごしたいんだろう”っていう事をふと思うことがあって、今の自分だったらどうなのかなって改めて考えてみました。
──ふとそう考えることってありますよね。
Tiara:いつ世界が終わるかが分かっていれば準備が出来ますが、今日かもしれないし明日かもしれないとなると、自分は後悔しないでさよならできるのかな?とか、ちゃんと愛してる気持ちとか、感謝の気持ちって大切な人たちに伝わってるのかな?とか色々考えてしまって。自分ももっとちゃんと伝えていかないといけないなと改めて思いましたし、聴いて下さった皆さんにも同じように思っていただけたら嬉しいなと思います。
──昔と母親になってからとで、明日世界が終わったらというテーマに対する答えに大きな違いが?
Tiara:母親になったら子供のために死ねるって思うのかと思っていたら逆で、子供のために絶対に死ねないって今は思うんです。怪我も病気もできないし、私に何かあったら子供に影響があると思うと、毎日緊張感があるというか、ちゃんとしなきゃって思います。それが覚悟や自信にも繋がってる部分もありますね。やっと大人になれたというか(笑)。
──考えれば考えるほど壮大なテーマですね。
Tiara:0歳児の子供を育てている時って、外の世界とすごく距離があって、お家の中でしゃべれない子供と二人きりで過ごすことが多いので、つい淡々とした日々に苛立ってしまったり、周りの友達と比べて羨ましく思ったりする時期もありました。でも、淡々と過ぎていく日々って、本当はとても幸せな事なんですよね。子供が生まれたことで毎日色々な事に気付かされます。
──「近くにいるほど 見えなくなるのに 遠くに行くほど 愛おしくなるの」ってすごく共感出来るフレーズですね。
Tiara:存在が近かったり一緒にいる時間が長かったりすると、人間ってつい甘えてしまうんじゃないかなって。本当は近くにいる人ほど、ちゃんと感謝の気持や愛情を伝えなきゃいけないのに、恥ずかしさで言えなくなってしまいませんか?それではいけないなと、そんな事を思いながら書いた部分ですね。
──タイトルはどういった想いでつけられたんですか?
Tiara:これは最後の最後まで悩みました。私は最初にタイトルを考えることが多いのですが、この曲に関してはレコーディングが終わっても決まらず、全部の作業が終わってやっと決まったんです。それくらい時間をかけて考えたタイトルです。今側にいる大切な人と、来年も同じ季節に一緒にいられる保証は何処にも無いけれど、それでも、また巡る季節を一緒に歩みたい、、、という、この曲の主人公の気持を表現出来たと思います。
──ご自身の中で特に気に入られているフレーズってありますか?
Tiara:先ほど挙げていただいた「近くにいるほど 見えなくなるのに 遠くに行くほど 愛おしくなるの」ですね。このフレーズを何処に持っていこうかという所から全体の歌詞を考えていったので、この曲の核になる言葉かなと思います。