メンヘラチックな一面に触れた『呼吸を止めないで』
──最後のフレーズはどういう意味だったんだろうと気になっているところですが、まずこの曲がどうして生まれたか、ということから聞かせてください。渡辺:例えば誰かの失恋の話とか、誰かの恋愛が実るっていう歌っていうのは自分の中でそんなに響かないことが多くて、それより“どう生きていくか”とか“生と死”みたいなところのテーマに惹かれることが多いんです。
この曲はまさに「呼吸を止めないで」って言っているから“生き続けていきましょう”っていう歌なんですけど、最後に「あなたの呼吸を止めてあげるよ」っていうのは、ひとりぼっちだったあなたの呼吸を止めてあげるよっていうことなので、呼吸が止まるのは孤独だったあなたで、その先僕と一緒にいるあなたは呼吸を止めないで生きていきましょうっていうことです。そこを伝えたいがための言葉遊びを最後に入れました。
──そういうことだったんですね!
渡辺:ちょっとメンヘラ的な告白の仕方というか、“あなたと生きていきたいです”っていう告白のために「孤独だった あなたの呼吸を止めてあげるよ」っていい方をしていますね。
──確かに、ちょっとメンヘラチックだったり女々しい部分がアルバム全体を通して見られましたが、渡辺さんご自身はそういった部分を自分に対して感じることはあるんですか?
渡辺:そうですね、男っぽいところだけをずっと押し通すより、男っぽさの裏側にある葛藤の部分を全部書きたいっていう想いがあるので、自分の弱さとか女々しいところ、っていう誰しもが少なからず持っている部分は書いていきたいです。
──『呼吸を止めないで』では分かりやすく反映したわけですね。
渡辺:俺の中にある女々しい部分とか、「呼吸をとめてあげる」って言いきっちゃうある種の強さも全部書きたかったです。表面と裏側の両面をどの曲にも残していきたいと思っています。
──この歌詞に共感したり、情けなく思ったり、時々わかりすぎて恥ずかしくなるような感情になったりするのは、そういった書き方をされているからなんですね。
渡辺:そうだと思います、そう感じてくれていたら嬉しいです。歌詞に対してそこまで触れていただけるのもすごく嬉しいです。
──歌詞って楽器隊の皆さんにはどの段階で渡されるんですか?
渡辺:後から歌詞を渡すことが多いですね。
──楽器隊の皆さんが、渡辺さんの歌詞に対して思うことは?
鈴木:いつも思うのは、性格出てんなぁってことですね。多角的にものを見ているというか、そういう人なんですよね。
自分が全然何も考えてないんで、スゲェなぁって思います。
全員:(笑)
本田:いいなって思う歌詞でも、レコーディング終わってみたら歌詞が全然変わってたなんてこともあるんですけど、それはめちゃめちゃ考えてるからこそだと思うんで、言い回しとか毎回出来上がりを楽しみにしていたりしますね。レコーディング終わってみたら歌詞変わってたっていうのが実は楽しみだったりとかもします(笑)。
渡辺:歌入れの直前まで気になるところは直しますね。
池田:普段思ってるけどなかなか言葉にしづらい部分とかを端的に書いてくれてて、わかりやすくもあるし、深読みしないとわからない部分も多いので本当に興味深いですよね。一緒に歌詞カードを見ながら深読みしてわかっていくことも多いです。
──深読みしないとわからないようなフレーズとかを、答えあわせのようにメンバー内で共有されるんですか?
渡辺:基本的には各々の解釈に任せています。
──歌詞がレコーディング終わったら変わってたなんてことがあるということでしたけど、言葉選びの基準や、どう言ったところで迷って歌詞を変えていくのかっていうことを聞かせてください。
渡辺:文脈見ての意味合いもあるんですけど、歌を入れた時の言葉の乗り方とか、リズム感がぴったりくる言葉じゃなかったりした時に、他の言葉がないかって探しますね。
──なるほど。そこも考えた上でこの歌詞が出来上がるっていうのは本当にすごいことですね。
渡辺:そうですね、歌詞は本当に一番時間がかかるのでギリギリまで悩みまくってることもあります。その分愛情が出てくるので、全部大事な曲になっていると思います。
──このアルバムが出来上がるまではどのくらい時間がかかたんですか?
渡辺:レコーディングは割と短かったんですけど、制作期間でいうと今回は時間とれた方だったのかなって思います。最終的にプロデューサーに見せた時に「ここ、もうちょっとこうした方がいいんじゃない?」って言われて直したりもありました。
──そのプロデューサーさんは今回のアルバムから一緒にやられるようになった方なんですか?
渡辺:そうですね、前作の『天国なんて全部嘘さ』っていうアルバムから半分くらい加わってくれてはいたんですけど、表向きにがっつりプロデューサーとして加わるのは今回が初めてです。
──第3者的な目で見てくれるプロデューサーという立場の方がいてくれる方がいいなっていう想いは生まれました?
渡辺:やっぱり違う視線から物をみてもらったりすると気付けなかったところに気付けたりしますし、基本的に自分の色を押し付けるようなタイプの方ではないのでバンドのやりたい事をもっと良くするためにはどうしたらいいかってバンドを尊重してくれる方なので、やってて色んな意見が飛び交うから楽しいです。
──「いつか全部わかるだろう やさしくなれるだろう」というフレーズからも感じ取れるように、渡辺さんご自身の中でも答えが見つかっていないような、曲の中で答えを言わないっていうそのスタイルについて聞かせてください。
渡辺:先ほど言った夜をテーマにしているっていうところなんですけど、夜って悩むことに悩みがちだったりとか、センチメンタルになりがちだったり、そういうモードに陥りやすい時間だと思うんです。でも意外と考えてることってどうしようもないことだったりするんですよね。
だからあえて曲の中で明言しなくてもどうせ分かるから考えすぎなくていいじゃん?っていうマインドがどの曲にも入ってきつつ、この曲では、いつか全部わかるだろうから僕と一緒に生きましょう。っていう繋がりにしています。
──『深海おまじない』は特に、夜考え事している自分と重なります。
渡辺:時間軸でいうと一番深い時間ですね。そういう時に寄り添える音楽であればなって思っています。
──楽器隊の皆さんもやっぱり夜に病んだり考え事したりってことはありますか?
池田:ある。
鈴木:人並みにって感じですね。現実逃避にゲームしたりしますけど。
──なるほど、何か別のことを始めちゃえばいいんですね。もしかしたら、なんだかんだ悩んでるのが好きなのかもしれないです。
渡辺:やっぱ悩むことに悩みたいっていうのはありますよね、頭で考えているから辛いのであって、思っていることがあるなら行動しちゃった方が以外と早かったりする。
──なるほど〜。人生の師匠になって欲しいです(笑)
全員:(笑)
渡辺:なんかもうどうでもいいことは 自分にとって納得のいくものを選んでいけば多分みんな楽しくなると思うんですけど、人間関係だったり会社の付き合いがあったり恋人関係があったりとか、そうはいかないところとかも絶対出てくるかと思うのでそれでも結局選ぶのは自分なんで、あなたがしっかりしなさいよって(笑)。あなたがしっかりするためにそばに寄り添えるものっていうポジションでありたいですね!