スモーキー・ロビンソンの「Tracks of My Tears(涙のあと)」
People say I'm the life of the party /Because I tell a joke or two(まわりはみんなちょっと冗談をいうからって 俺を陽気な男呼ばわりする)
静かに女性へアプローチしながら、まずは胸の内を言える状況を作ります。
どんなふうに自分が思われてるかは分かっているんだ、と分別のあるところをみせつつも、ほんとは違うんだぜと言いたいようです。
これで話を聞いてくれそうなら、脈アリです。ダメなら切り替えて、さっさと他をあたりましょう。
女性と少しずつ距離を縮める様子が手にとるようにわかる絶妙な歌詞
Although I might be laughing loud and hearty /Deep inside I'm blue(俺があっけらかんと笑ってるように見えても、胸のずっと深いところでは沈んでいるんだ)
ホントは結構根暗なんだよと打ち明けてギャップを狙っているのでしょうか。女性はギャップに弱いと聞いたことがありますが、どうなんでしょう。
まあギャップはともかく、自分に向けてシリアスに語り始めれば、ちょっとぐらいは聞いてやろうと思いますよね普通。
So take a good look at my face /You'll see my smile looks out of place
(俺の顔をよくみてくれたら 笑顔が場違いなのに気づくはず)
よーくみてごらんと少しづつ距離を詰めていきます。ほれ、ほれ、みてみ?嫌がらなければもう少しです。
If you look closer, it's easy to trace
(もっと近づけば、すぐにわかるよ)
お互いの顔がここで最接近。何がわかるの?
The tracks of my tears..
(涙のあとが)
彼は相手に涙のあとをみせつけます。
最後の最後に情熱的な愛の告白!一瞬にして聴く人の心をつかむ見事な詩的センス
I need you, need you(おまえが、おまえが必要なんだ)
ここで熱く自分の本音をぶつけます。うっとりしてたらチュッとしちゃいましょうか。
いかがでしたでしょうか。愛の告白のモデルとして適切かどうかはさておき、見事な歌詞構成だと思いませんか。
軽薄だとばかり思っていた男が、自分の顔をよく見てほしいと頼むまでの流れ。
陽気そうな男の表情がだんだんシリアスになっていくさまがありありと浮かびます。そのまま顔をぐっと近づけたら、そこに見えるのは涙のあと。
そして「涙の理由はお前なんだ」と情熱的な愛の告白をするこのダイナミクス。これほど鮮やかで伝わりやすいスモーキーの詩的センス。
偉大な詩人による美しい愛の告白は、いつまでも色褪せることはないでしょう。