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尾崎裕哉は『シアワセカイ』で現代社会に幸せかい?と問いかけている

2017年10月4日に2枚目となるEP『SEIZE THE DAY』をリリースした尾崎裕哉。タイトル「SEIZE THE DAY」とは「今を生きる」という意味の英訳にあたる。まさに音楽を通じて世の中の今に適当に向き合う尾崎裕哉にうってつけの言葉である。
リード曲でもある『Glory Days』は、映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』の主題歌に抜擢され、尾崎裕哉のファンならずとも一聴の価値ありの作品であることは間違いない。

YouTube上で同曲のMVが2タイプ(本人出演しているMVとアニメ版)公開されているところからもアニメのファンに向けられていることが伺える。





今回は『Glory Days』ではなく、同EPに収録されている『シアワセカイ』を取り上げたい。

尾崎裕哉の世の中に対する見地を垣間見ることができ、かつEPのタイトル「SEIZE THE DAY」(今を生きる)に密接に関係する作品になっている。

尾崎裕哉の「シアワセカイ」



Don’t ask me why
目には見えないものが本当の
幸せだと誰もが言うけれど

インスタグラム あげてる写真
加工された お洒落な生活
薄っぺらなやつばかり


“Don’t ask me why”から歌詞がスタートする。

帰国子女でもあり、自らの音楽性には父と洋楽という両軸があると語る尾崎裕哉。

ビリー・ジョエルの『Don't Ask Me Why』に影響を受けたものだろうか。

どちらの曲も取り上げる対象は異なるものの内容面は共通点も多い。

”Don’t ask me why”という言葉自体ありきたりであるため真意は不明であるが…。

この言葉には様々なニュアンスの解釈が可能だが、ここでは“Don’t ask me why”以後の歌詞に対する尾崎裕哉の総括的な感想のようにも思われる。

これから取り上げる歌詞の内容も踏まえて簡単に訳してみると、「目に見える一時的な幸せを最大の豊かさと考える世の中になっている理由は(俺には分からないから)聞かないで」になるだろうか。

歌詞の冒頭で「俺に聞かないでくれ」と事前に忠告することによりこれ以後の歌詞を彼が望む幸せな世界とは逆向することを示す。

まさに伏線としての役割を果たすのだ。そんな世界なんか知ったこっちゃないといった声が聞こえてきそうだ。

それを踏まえて続く歌詞を見てみたい。

目に見えないものを幸せだと皆は思っているはずなのに、実際に現実の世の中を見てみると人々は可視化できる幸せを追い求めているのだ。

尾崎裕哉は、ここでは「インスタグラム」を例に挙げ説明している。

「インスタグラム」と名指しで固有名詞を用いるのは少々意外に感じたのだが、よりリアルな状況を指摘するのには説得力が出てくる。

現代の偽りの幸せに対する警報

幸せなふりが上手いなんて
ヤバイくらい不幸じゃありませんか?
心の声 耳傾け
聞こえてくる「私を見て!」
うるさいほど鳴り響く


それに対する尾崎裕哉の回答はこうだ、「幸せなふりが上手いなんてヤバイくらい不幸じゃありませんか?」。

インスタグラムは写真を他人と共有することができるSNSアプリ。

他人との共有が前提にあるので、他人によく見られたいという承認欲求が生まれてくるのも分からなくはない。

しかし、加工してまで幸せであるかのように演じるのはいかがなものか。

最近はインスタ映えという言葉を聞くほど、インスタグラムで他人との共有を目的とするだけの行動も見受けられる。

現代に蔓延する過度な承認欲求に対しての警報のように感じる。

尾崎裕哉の幸福感と現代の幸福感にはギャップが存在していることはこれまでの説明から分かっていただけたと思う。

また、サビに入る直前の「うるさいほど鳴り響く」という言葉から感じる力強さ、それは現代の偽りの幸せに対する警報かもしれない。

相反する二重の想い

僕がこの世から
消えてしまうときのこと
考えていてもまだまだ先のことでしょう
だからいま生きるよ
怒りだけ糧にして
向こう側には何も持ってけない


ここで、EPのタイトルであり本作のキーワード「いま生きる」という言葉が出てくる。

理想とする幸せな世界と現実とのギャップを感じながら、尾崎裕哉は「今」を生きるという強い決意のようにも思われる。

尾崎裕哉は、そのギャップの中で世間に対し「幸せかい?」と問いかけるとともに「幸せな世界」を追い求めているのだ。

このように『シアワセカイ』というタイトルは相反する二重の想いが込められているような気がしてならない。

「世の中をよくしたい」そんな彼の言葉が聞こえてきそうだ。

大げさになってしまうが心の豊かさで溢れた社会こそが彼の理想とする幸せな世界なのだ。

前作『LET FREEDOM RING』と比較すると『シアワセカイ』を含めた本作はどこか余裕の感じられる作品に仕上がっている印象を受けた。

本作では、良い意味でも尾崎豊という父の面影も抜け、尾崎裕哉というアーティストの輪郭が研ぎ澄まされていくことだろう。

TEXT:川崎龍也

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