頑張り続けることで何時か春の桜のようにその人の人生も花咲くはず
──アルバムの最期に収録した『ラストナンバー』は、アンコールの場面や、ライブを終え、次の街まで移動しているときの様子を描き出しています。これを聴くと、こんな感じでみなさんアンコールの舞台へ向かっていたり、こんな感じでライブ後に移動してるんだと感じられました。
ファンキー加藤:『ラストナンバー』のような楽曲を作るのに、僕はホント憧れていたんです。いろんなバンドさんがツアーを題材にした曲を歌っているのを聴きながら、「俺も何時かミュージシャンとして食えるようになったときは、ツアーを題材にした曲を作りたい」という想いがあって。それを今回、ようやく実現しました。長く応援してくれてるファンの人ほど、ニヤリとする人物名やライブのシーンが見えてくるんじゃないかと思います。
──鳥越さんはマックスコーヒー好きなんですね。と言っても、面識も何もないんですけど(笑)。
ファンキー加藤:アハハハハッ。そう、鳥越さんはホントにマックスコーヒーが好きで、発見するたびにかならず飲んでいるんですよ。あれ、激甘じゃないですか。きっと、鳥越さんはそれが好みなんだと思います。
──こういう舞台裏が見えてくる楽曲、聴いてて楽しくなります。
ファンキー加藤:ジャッキー・チェンの映画で言う、エンディングで流れるNG映像集みたいな感じというか、あれを観ると撮影の裏側を覗けた気分になって楽しいじゃないですか。それと同じ空気感を楽しんでもらえたらなと思います。
──完成した3rdアルバム『今日の詩』、加藤さんにとってどんな作品になりましたか??。
ファンキー加藤:間違いなく言えるのが、「現時点で一番好きなアルバム」ということ。こうやって毎回「一番好き」と言える作品を更新し続けられてるのが嬉しいですよね。
3rdアルバム『今日の詩』初回限定版
──加藤さん、お勧めの歌詞も教えてください。
ファンキー加藤:自分として一番上手く起承転結を描けたなと思っているのが『風物詩』。「夏の花火」「真冬の雪」という季節の風物詩を描きながら、中へ「秋の桜」という表現も加えました。桜って春を象徴する存在。秋の桜ってまったくもって自分の本領を発揮出来る季節ではない。なのに、なんで秋の桜だったのか…。
裏話をするなら、僕は、桜舞い散る春の季節を舞台に『失恋の詩』を書き上げました。これは『失恋の詩』の内容とは関係なく出てきた想いなんですけど。僕も歌の題材にしてしまうくらい、桜って、春という季節にはみんなチヤホヤしてくれるけど、その短い季節を終えたら誰も相手にしてくれない。まして、葉っぱも散った秋や冬の桜の木なんて誰も見向きもしない。なのに、春になってふたたび花を開かせると、みんなが桜の木の下へ集まり、その存在を見上げ愛でてくれる。それって、人生もそうだと思うんです。今は秋の桜のように、必死にもがいていても誰も見向きもしてくれないけど、頑張り続けることで、何時か春の桜のようにその人の人生にも花が咲くはず。その想いを、『風物詩』には描いています。
歌詞だけを読んでも『風物詩』は伝えたい想いが響くけど。『We can Dance』は、歌詞だけを読んでいたら何のことかよくわからない。だけど、その歌詞がサウンドとメロディーに乗ったとたんに鮮やかに見えてゆく。言葉をリズムで奏でるのはこういうこと、それを示したのが『We can Dance』。そこの面白さも感じてもらえたら嬉しいですね。
アルバムの曲順は野球の打順のようにしてるんです
──心打つ名曲の『失恋の詩』や『風物詩』をアルバムの中盤に据えていたのは、嬉しい意外性でした。ファンキー加藤:僕は野球が大好きで野球少年だったこともあって、アルバムの曲順は野球の打順のようにしているんです。つまり、1曲目を飾ったテンポが早くつかみを持った『冷めた牛丼をほおばって』は、出塁率が良くて足の早い一番バッター。2曲目の『花』は、出塁した走者を送る2番バッターのように、『冷めた牛丼をほおばって』が持っている勢いをしっかり活かしてゆく。そのうえで、『失恋の詩』と『風物詩』という3番4番バッターが続くことで確実に点数を取っていく。そういう感覚で曲順を並べています。
──『急性ラブコール中毒 Solo ver.』は、どういうポジションなのでしょうか??
ファンキー加藤:ちょうど10曲目に入れてるように、DH。つまり、助っ人外国人みたいな存在。働きが悪ければ来季は切ってしまいますから(笑)。
──加藤さんは、このアルバムを手に、今年はライブ漬けの日々になるんですね。
ファンキー加藤:先にショッピングモールなどを中心にした全国フリーライブツアーを行い、10月から来年にかけ全国ホールツアーを行います。今年は、アルバム『今日の詩』と一緒にライブを楽しみ続けようと思っています。お近くに来たときは、ぜひ遊びに来てください。
TEXT:長澤智典
PHOTO:愛香