シュワシュワとはじける炭酸の泡は爽快感、その泡はあっという間に消えてなくなってしまう儚さ。そしてどんな色にも自在に変化していく。そんな“炭酸系サウンド”を目指し(オフィシャルサイトより)Yurin(Vo/Gt.)、知(Gt.)、フジムラ (Ba.)という3人のメンバーで2014年に結成。同年に行ったファーストライブは即日完売と、結成当初から大きな注目が集まった。以降順調にリリースを重ねるとともに、2016年には初の全国ツアーを敢行、そして2017年にシングル「エバーグリーン」にてメジャーデビューと、その動向にはますます目が離せません。
今回リリースされた「パレット」は、赤瓦もどむの人気少女コミックを原作としてドラマ、映画化した作品『兄友』の主題歌として書き下ろされた楽曲。映像では『honey』など、話題作への出演が立て続けに続く若手注目俳優横浜流星が、ウブな男子高校生・西野壮太を演じ、友人のキュートな妹・七瀬まい(松風理咲)とのプラトニックでかつ胸キュンな恋模様を描いていきます。「パレット」は、そんな荘太のちょっぴり甘酸っぱい恋心を、サイダーガールならではの爽やかなサウンドと独自の世界観を持った歌詞で彩っており、作品に鮮やかな色彩感を与えています。
今回UtaTenでは、このシングル『パレット』を作った思いなどを、『兄友』のストーリーに触れた感想などを交えておうかがいしました。
シングル『パレット』
王道っぽくない印象のラブストーリーに、王道ではないラブソングを
── 今回主題歌を担当された『兄友』の、ストーリーの感想的なところをおうかがいできますでしょうか?原作を読まれて、この曲「パレット」を作られたかと思いますが。Yurin:そうですね。少女漫画を拝見したり、台本とかも見させていただいて。今回の楽曲は、そこから構成していった感じです。
── 普段はこのような少女漫画などを読まれたりすることは?
Yurin:あまり読んだことはないです。これまでそれほど読んだことはなかったので、逆にすごくいい経験をさせていただきました。
── ストーリーの感想などはいかがでしょう?
Yurin:少女漫画ならではの青春感というか「こういう学生時代を送りたかったな」というのは、多分誰しも思える映画なんじゃないかなと思いました。女の子からすると”お兄ちゃんの友達”がイケメンだったら、メチャ嬉しいじゃないですか?(笑)。そんな”こんな生活だったら良かったな”というエピソードは、女の子だったらすごく響くと思う。だから、映画を見られる方は、そんなものをいろいろ重ねたり楽しんだりしていただければ。今回はそれを、僕らの曲でさらに余韻を引き伸ばしてあげられたらと思いました。
── なるほど。でもこれの作品に主題歌、となると楽曲作りはなかなか難しいところでもあったのではないでしょうね。どちらかというと女の子目線の作品なのでは、という感じもありましたし…今回この楽曲を作るにあたって、何かどんなものを作ろうという話は、バンドの中ではされたのでしょうか?
フジムラ:いや、特にはしていません。その時ちょうど別のタイアップの話もあって、いっぱい曲の元の部分を作っていた中で、いろいろ並んでいるタイアップに対してどれが合うかな、という感じで当ててみたりした上で、それぞれに制作に取り掛かっていました。この曲は、その上で原作を読んで“ここをこうして”みたいな感じで作り上げました。
Yurin:その元の部分というか、その時に選んだ“楽曲の種”みたいなものに対して、『兄友』のインプットを得て完成させたという感じ。最初は10%くらいの曲がたくさんあって、あと90%を『兄友』に絡めた形で作りました。
── なるほど。サウンドに対してはいかがでしょう?みんなで固めた形ですか?
知:そうですね。プロデューサーの人も含めて、みんなで相談して作り上げました。
── 楽曲は、爽やかなサウンドとボーカルのイメージに対して、詞で描いている視点がユニークですね。どちらかというと、恋に翻弄される自分の胸の内を描いている印象がありました。またラブソング的なイメージでは、二人称を"キミ”と書くものが多い印象もありましたが、敢えて“あなた”と書いてあるところにもちょっと目を引かれました。ここには何か意識されたものはあったのでしょうか?
Yurin:意識というほどのものはなくて、癖みたいなところだと思います。僕はわりと“あなた”を 使うことが多いかもしれないです、完全に個人の趣向というか。ただ、『兄友』自体が、それこそ少女漫画のラブストーリーの王道ぽくないと感じたところもあるし…
── 王道っぽくない?
Yurin:僕が思っていた少女漫画の王道って、“同級生や先輩が相手”というのが普通のイメージと思っていたんですが、相手が「兄の友達」って、ちょっと変わってるなと。だからこの楽曲も王道のラブソングにしたくない、ということも最初に思ったので、ちょっとひねくれていると感じるところもあるのではと思います。
”あんな青春を送ってみたかったな”そんな憧れみたいなものが歌詞に
── なるほど、王道っぽくないという印象は一理ありますね。この曲はYurinさんが書かれた楽曲ですが、この詞のイメージに対してフジムラさんや知さんが、何か感じたところはありますか?フジムラ:僕が思ったのは“ありきたりなラブソングも一興”というフレーズ。これが最初に聴いた時から、頭から離れなくて。 「何だろう?ラブソングだけどひねくれている」というか、そのフレーズからは、ストレートじゃないところを作ったという気がして。それがあって、さらに曲の展開なんかも、すごくハチャメチャになっているというか…
── ハチャメチャ?
フジムラ:例えばすごくストレートなところはストレートだけど、1回落ち着きながらも、だんだんグワーッと攻めていく、みたいな感じで起伏の激しい流れになっているんです。間奏なんかも…
── 思いきり歪ませたベースソロとか、派手に入っていましたね。確かに全体通して爽やかなハーモニーの中で、アバンギャルドな部分がフッと出てくる印象があります。
フジムラ:そう!そうなんです(笑)。今まであまりこういうものを作ったことがなかったし、その意味ではYurinの言うとおり、ちょっと今までなかったラブソングになっているんじゃないかと思います。
── “今までにない”、そういうターゲットを目指した、という思いは出せたという感じですかね?
フジムラ:そうですね。もともとYurinがそういう曲にしたいという思いを言っていたし、それが実際形になって、すごく良かったと思っています。
── 「パレット」というタイトルは、今回この詞のイメージと、どのように結びつくのでしょうか?
Yurin:他人から見た自分の見え方や、人から受ける感情というか…自分が人からどう見られているかというのは、人によっても全然違うと思うんですけど、その中で気になっているあの人からは、どう思われているんだろう?みたいな。
「僕はそんなにキラキラしていないけど、あの人にはどう見られているのか?」「こんな風に見られているんだろうか?」そんな感じの、自分の感情なんかを何かの色に例えたいと思ったんです。例えば2コーラス目の歌詞でも「美しさも醜さも、ごちゃ混ぜにして、染め上げていく」という歌詞があるんですが、それは思いや印象を色に例えていった歌だったから、それを描くものとして「パレット」というタイトルにしようと思いました。
── なるほど。描かれているのはわりと控えめな感情で、詞からの印象としてはどちらかというと寒色系の色彩感に見えますね。そこにサウンドも加えて、バランスよくカラフルな感じに見えるのかと。そのイメージって、例えば自分的にも思い当たる節があるのでしょうか?恋愛となると、結構引いちゃう感じになるからこうなる、みたいな(笑)
Yurin:いや~どうでしょうかね?あまりそこは関係ないと思うんですが…(笑)
── フジムラさんと知さんいかがでしょう?
フジムラ:恋愛ですか…僕は引いちゃいますね(笑)
知:僕も奥手で(笑)
── うわ、みんな奥手だ(笑)
フジムラ:自分に自信がないから。何事もガツガツ行けないというか…
知:そもそも僕達は、それほど青春を謳歌してきたってわけじゃないと思っているんですけど(笑)。でもそれは、ある意味でバンドの作る曲の良さにつながっていると思っています。
僕達はそんな時を過ごすことはできなかったけど、”あんな青春を送ってみたかったな”と、抱いている憧れのようなものが歌詞にも反映されていると思っているし。今回の「パレット」もその意味では、そういったものに対する僕達なりのアプローチだと思っています。
── これまでMVなどで前面に表現されている楽曲のサウンドを聴いた感じでは、全体的に非常に爽やかなイメージのあるものだと思いましたが。
知:そう、“できなかった”からこそ、そんなイメージを出すというか。自分達のやりたかったことが表現できているのかなと思うし、それがビデオでも表現できていると思っています。
── なるほど。なかなか気持ちを言い出せないという若い男性の方も多いと思いますが、そういう方も共感してキュンキュンしそうな感じですね(笑)
知:男性もキュンキュンしますかね?(笑)。まあ女の子もたくさん出てきますし…
── MVには3代目サイダーガールの、杉本愛里さんも出演されていますしね。カップリング曲「しょうがないよな」、「ハロー・ミュージック」についてですが、先程シングル制作時に“曲の種”のようなものを作って選んで、というお話がありましたが、これは「パレット」があったから、これに対して入れるものを決めた、みたいな考えもあったのでしょうか?
フジムラ:いや、それはあまり考えていませんでした。ただ、僕は最後の「ハロー・ミュージック」というのを作ったんですが、「パレット」自体が春のリリースだし、すごく自分の中でちょっとポカポカした感じの、曲のイメージだったので、それにマッチするようなサウンドの曲を作ろうと思っていましたし、その意味では「パレット」に影響を受けているかもしれないですね。
知の作った「しょうがないよな」も、別の映画のオープニングになっているものですが、すごくエッジーなロックソングになっていて「パレット」や「ハロー・ミュージック」とは対照的な曲になっているので、その意味ではこの3曲で、シングルの中でも幅は出せているんじゃないかと思っています。
── なるほど。このシングル用に作った曲の自信作、みたいな?
知:というか、ストックとかは僕らはあまりなくて、その時に作った曲で、思いにハマるものがシングルに入るので、あまり自信作だからというのはないかと思います。その時に作ったもので、いいと思ったものが入るという感じですね。