全体を通してBenthamの新しいスタートを切り開いたといっても過言ではない程、様々な表情を見せた5曲を収録。UtaTenでは、新譜『Bulbous Bow』を軸に置きながらも、バンド内でのメンバー同士の関わりや、楽曲にまつわるエピソードなどをたっぷり伺った。
「○○っぽいよね」を一番大事にしている
──メジャーデビューをして1年が経ちましたが、楽曲作りはインディーズのときと比べて変わられたりした部分はあるんでしょうか。
小関竜矢:メジャーデビューをしたタイミングから変わってきてはいるんですけど、今作は特にデータのやりとりが増えてきました。今まで培ってきた、スタジオに入って意見交換をして「こういうアレンジも良いよね」っていう試す作業を一通りこなしてきたので、データ上で遜色ないといいますか。スタジオにも入るので、そのバンド感っていうものを大事にしながらも、データ上でアレンジの幅が広がってきていますね。今作でも、想像しやすい音ネタっていうものが反映されているので、やり方的にも今のBenthamらしいものになっていると思います。
──小関さんは、曲作りの上でイメージだったり、「○○っぽいよね」というのを大事にされているとお聞きしました。
小関竜矢:そうですね。生活していく上で知識と経験している事って必ずしも一緒ではないと思っていて。テレビで見たことはあるけど、アメリカは行ったことがないとか、でもアメリカっぽさってなんとなくわかるじゃないですか。匂いとかも断片的に。それを繋げていく作業が割と好きで、「この曲何かいいよね」っていうのが僕的に一番良いと思っているんです。「この曲はこうこうこういう曲で、だから良いんだよ」っていうのはあんま良くないと感じるので、「○○っぽいよね」を一番大事にしていると思います。
──今作の『Bulbous Bow』にもその意識が活かされているのでしょうか。
小関竜矢:今作はそういうのも活かしていますが、パッと街中で流れたりとかした時に、「あれ、なんだろう?」って引っかかるようなフックのあるメロディーや歌詞を意識したので、「○○っぽいよね」っていうのからは少し離れている気がします。
須田原生:でもたまに、「○○っぽいよね」で盛り上がるときもあるんですよ。
──「○○っぽいよね」っていう話をされるんですか(笑)
小関竜矢:割とチャラい表現が多いんですけど…
辻怜次:なんかあったよね、今回も。
小関竜矢:何気ない会話から生まれる、テンションぶちあがる感じからですね。聴いている人が説明しなくとも伝わるようにといいますか、曲構成とかもどこで盛り上がるとか、どこに落とし込むとか、「学校っぽいよね」や「季節っぽいよね」とか、そういう所を大事にしていますね。
──Benthamさんはメンバー皆さんで楽曲を制作されていると思うのですが、全員で音楽を生み出すことによって軸としている部分はありますか?
小関竜矢:逆に決めごとはないです。自然とした共通項というか、歌のメロディーを活かすような感じで進めています。各パートそういうプレイを心掛けているので、自分の役目をしっかりこなしている形です。メンバーが作りたい曲に声色を寄せたりとかもそうですし、メロディーもピンとこなかったら「こうした方が良いんじゃない?」って話したりしていますね。僕、ドラム叩けないですけどドラムの事を言ったりもするので…。お互いが言う所で、新しい発見もあるし、尊敬もしているので任せられますね。
辻怜次:割と音楽の趣味とか趣向がみんな違った道筋で来ているのですが、それが逆に互いの刺激になるんです。こういうやり方があるんだっていう所もありますし。そういったものがBenthamらしさになっていたら良いなと思います。
小関竜矢:僕洋楽聴かないんですけど、この3人は聴くんですよ。そうなると「これ何か洋楽っぽいな」っていう気持ちと、「これは洋楽だからしないよ!」っていう彼らの言葉が混ざって新しい感じになるんです。それが良いですね。
──反対に音楽ではなく、バンド内で決めているルールはありますか。
小関竜矢:決めてはいないですけど、「思った事は言おうね?」っていう努力をしています。
全員:(笑)
小関竜矢:でもみんな言わないんですよ?
須田原生:空気を読んじゃう4人なんですよ(笑)
小関竜矢:ここは俺が我慢しておけばいいやって4人が思うみたいなんです。その中でストレスが溜まってもしょうがないので、そこをフォローし合っていますね。スケジュールがタイトになってきたりすると、誰が場を盛り上げて、誰が休んでとか、自然と役割分担が出来てきていると思います。
──『BenthamTV』を見させて頂いたんですが、かなり須田さんがバンド内でいじられている所が印象的でした。そういう立ち位置になっていたり…?
全員:(笑)
須田原生:いじられっぱなしなんですよ…人生…。
辻怜次:自然と横で事故ってたりするんですよ(笑)
須田原生:僕、自分でいうのもあれですけど、まったく怒らないんです。多分、みんななんでもできると思ってやってくるんですよね。
(ここで、小関が須田にちょっかいを出す)
全員:(笑)
小関竜矢:こんな感じで、やってますね。
──皆さん仲がいいんですね!Benthamさんの中で、兄弟構成を作るとしたらどのようになりますか?
須田原生:たまに冗談で兄貴って呼んでいるのは、たかさん(鈴木敬)ですね。
鈴木敬:一応生年月日順では、僕が一番早いんですよ。
須田原生:僕たち3人がダラってしちゃうときでも、ビシっと横から言ってくれるし。
鈴木敬:実際は、みんな末っ子なんです。だから兄貴感はあんまりないとは思うんですけど…。
須田原生:いや、兄貴に憧れた兄貴(鈴木敬)かもしれないですね!
──バンド活動を長くやられていると、喧嘩とかも起こると思うんですがBenthamさんはなさそうな感じがします。
須田原生:あんまないですね。
小関竜矢:ただ単に不機嫌になってみたいな事はありますけど、意見の食い違いとかはないです。
須田原生:煮詰まったときに空気が悪くなる時もあるけど、それを引っ張るとか言い合いになるとかは全くないと思います。
小関竜矢:いい大人なんで。ふざけている時が一番楽しいです。
全員:(笑)
──『BenthamTV』を見て思いましたが、小関さんのドSっぷりが凄いですね。
小関竜矢:いや彼(辻怜次)ですよ。
辻怜次:いやいやいや(笑)
小関竜矢:僕はちゃんと映像に撮られているのを計算しているので。
全員:(笑)
辻怜次:逆に腹黒いよ!!
小関竜矢:腹黒いんです。
前に進んでいこうっていう意味合いを込めて
『Bulbous Bow』──さて、楽曲のお話しにいきます!今作のタイトル『Bulbous Bow』の意味は、船の造波抵抗を打ち消すために、喫水線下の船首に設けた球状の突起だと思いますが、なぜこのような形に?
小関竜矢:5曲を並べたときに、前に進んでいこうっていう意味合いがあるねって思ったのと、リリースが春先っていう事で何か前に進んでいくっていう事がモチーフだと考えたんです。Benthamを船に例えたときに、今誰が乗っていて、誰が乗りこんでくるのか、誰が下りてしまったのか?行き先はどこで、どういう旅をしていくのか?と置き換えていくうちに、『Bulbous Bow』というタイトルを見つけました。語感も今までで一番攻撃的だし、仕掛けているのだろうなって周りが連想するであろうワードですし。
そのあと、意味を検索したら抵抗を失くし前に進むための場所という事がわかって、ぴったりのテイストだと感じました。Bulbous Bowって普段水面に隠れている部分が多いのですが、それが今までの僕ら(インディーズのときから)の活動とも似ているし、伝わりきらなかった部分が多かったと思うんです。今作は、それらが沢山詰まった1作になっていますし、リード曲の『FATEMOTION』は運命というテーマなのですが、何か光がさす方に引っ張られているのかな?という予感がビシビシするので、そんな作品になっていると思います。
──今作では、全てタイトルの表記が英語だと思いますが、これはあえてそうされたのでしょうか。
小関竜矢:そういう風に考えてはないですね。最初に決まっている仮のタイトルから今のタイトルになっていって、最後の方に須田の考えたものが残ったんです。そしたら全部英語になっていたみたいで(笑)僕もタイトルは気にする方なんですけど、今作は英語でも良かったし、逆に外す理由がなかった。「あんま深く考えないで好きなようなタイトルでいいよ」って流れになった感じです。
──ちなみに小関さんは、長いタイトルがお好きではないんですよね。
小関竜矢:そうですね。好きじゃないです。なので、長くつけるときは理由があります。あんま長いのは付けない気がするので、「○○○○」みたいな短いのが多いです。
──では今回、ビシっとまとまられたんですね。
全員:(笑)
小関竜矢:いや~今回大分良いです。
──『Bulbous Bow』が発売された心境をお聞かせください。
鈴木敬:すごく春らしい感じになりました。これはコンセプトがあった訳じゃないんですけど、4月に出すっていうのもあるし、そういうイメージを浮かべながら詞も寄せていって。そうする事によって、春の時期にぴったりの背中を押す曲っていうものが凄く集まったと思います。ポジティブな一枚に仕上がっていますね。
──今作のドラムで一番こだわった箇所は?
鈴木敬:ドラムの音が今までと違っていて、スタジオも違うんですけど、使ったドラムセットの数とかも違うんです。その曲にあったドラムの音になったかなって思っていて、今までの中で一番自分の音には納得がいっています。
──インディーズ時代は四つ打ちが多めだと思うのですが、今作ではあまり四つ打ちを入れられていない印象を受けました。
鈴木敬:そうでもないかもしれないですね。曲にあったアレンジを考えているので、今回はあまり入れていない気もします。必要な所で出してという形なんです。
辻怜次:今回、Benthamっていうバンドのロゴも新しくなりましたし、制作チームも人が変わって、今までやってきたプロデューサーさんとは違う方とやり始めて、心機一転したんですよね。さっき言ったこれから進む新たな船出じゃないですけど、そういった作品になったと思っていますし。メンバー4人がそれぞれこだわりを持ってサウンド面だったり、フレーズの面だったりとかも、新しいことにチャレンジが出来た一枚だなと思っています。
こだわり抜いた多くの部分を「人により届けたい」、その意識は4人が共通して持っていて、制作チームや、スタッフチームも同じように考えてくださっていたので、そういう意味では一丸となれた作品になれたと思います。
──今作の中で一番見せどころとなったベースの箇所を教えてください。
辻怜次:『FATEMOTION』や、『memento』などは、割と今までの自分らしさがあります。実は、今までベースのテックさんがちゃんとついた事がなかったんですよね。だけど、今作からはテックさんが入ってくれたり、一緒にアレンジを考えてくださる人がいたので、この2曲に関しては緻密に「このコードはこうだからこうしようか?」「もっと音の感じはこんぐらいいっていいんじゃないか?」、「歪ませていいんじゃないか?」などと、結構こだわりました。自分1人じゃ出なかった事もありますし、かと言って自分じゃないと出せなかった所も多くあったりしたので、ベースのこだわりはかなり強いですね。
──須田さんはいかがですか?
須田原生:今回、メジャー1stEPなのですが、僕らBenthamと言えばEP!というぐらいインディーズの時から4作品もEPを出していて。そしてメジャーになって、その集大成じゃないですけど、今までやってきた幅の中でこの5曲をどういう曲にしていこうか?っていう選曲もしたんですよ。これまでやってきた曲たちの進化版になっているので、それが凄く伝わりやすくなっているのが、今回のサウンド面でも出ています。レコーディングを終えて自分でも聴くんですけど、その時にこだわった部分が聴こえなくても、本当にわかんない程度のものもいっぱいあるんですよ。それが聴こえなくても、こうなった為にやった事なんだっていいますか。聴いた人がそういう風に聴こえるためにしてきた事が、すごい意味があったなって思っているので、『Bulbous Bow』もそうですけど見えないことの積み重ねが凝縮された一枚です。フルアルバムだと10曲以上で聴くのが大変だったり、シングルだったら何か物足んない、だけどEPなら今の僕らを全て見せれる状態で気軽に聴ける一枚なので、沢山の人に聴いて欲しいです。
──須田さんの攻撃的なギターソロも、今作には強く反映されていますね。
須田原生:元々うちはギターソロが多いので、今回もそこはかなりこだわった部分です。今まではライブで出来ることをCDでもやるっていう風にやっていたんですが、そういう風にはせず、CDだからこそできる、CDとしての良い作品という想いが向いていました。ギターの音を2、3本増やして重ねたりとかもしましたし、そうする事によってより派手に聴こえたりとか、メインで聴こえるべき音のサポートとしての音をかなり入れました。鍵盤の曲も入れたりしましたしね。
小関竜矢:僕は5曲全部一緒なんですが、サウンド面では全然違うアプローチをかけました。今まで音の入れ方や楽曲を含め色んな事を試してきたんですが、それが広い範囲に刺さらなかった所がありました。けれど、今作では間違いなく色んな人に聴いてもらえる一枚になったので、SNSなどでも「良かったよ!」って口コミなどで広がってくれれば良いと思う程の自信作になっていますね。音が本当にメジャーっぽくなっていると思いますし、僕たちの楽曲が、靄がかかっていない状態で聴いていただけるはずです。ストレスなく聴いて頂くっていう所が一つと、1曲目の『band wagon』の最後のサビの所でドラムがドーンってなるんで、そこが最大のクライマックスです。
全員:(笑)
──今お話しにも出ました1曲目の『bandwagon』ですが、こちらはバンドそのものの事を歌ったナンバーなんでしょうか。
小関竜矢:そうですね。その曲だけ今まで通りと言いますか、自分が得意とする表現方法を好きなように、好きなだけ書いた曲です。
──曲順の進み方についてもお聞きしたいです。
小関竜矢:各自話し合ったんですが、土台となるような曲順になったときに皆が「良いんじゃない?」ってほぼ一緒だったんです。
辻怜次:みんな考えている事がほぼ一緒で、『FATEMOTION』をどの位置に置くかだったりとか、『SAYONARA』をどうするかで悩んだ気がしますね。「ここはどう?」って言えばみんな納得して、これでいこう!となりました。
須田原生:一曲一曲の理解が個人個人で出来ていたっていう感じですね。