バンド名やアーティストそのものよりも先に音が伝わる結果、多くの人に聞かれること。そうやってエアプレイを重ねることで彼らの代表曲となったのが「NEW ERA」である。
Nulbarich「NEW ERA」
「Cuz I don’t have enough
No second thoughts
変わらない笑みで you set me free
Good morning to the sun
Let’s go for a walk
気ままに空気ふかせ
今大地の上で」
彼らが伝えるメッセージはシンプルだ。“余計なものも考えもいらない、必要なのはスマイルと自由”と言うとありきたりに聞こえるが、それがサウンドにあらわれているのがNulbarichのユニークなところ。
ソウルやヒップホップからの影響が感じられるNulbarichのサウンドはハンドクラップやレコードのスクラッチを重ねるなど遊びごころが随所にあふれている。その中心にあるのはグルーヴ。難しいことは抜きにしてまずはリズムに身体をまかせようというメッセージが伝わってくる。
心地よく日常へ溶け込むサウンド
「空気」はNulbarichのキーワードでもある。心地よく日常の空気に溶け込みながらエアプレイで拡散する。頭でっかちとは対極的な彼らだが、決して雰囲気だけの存在ではないことが続くヴァースからわかる。「がんじがらめのeveryday
そう思ってた今まで
でも守ってもらってただけで
自由に飛べた
And It’s up to who
選択まで誰かのせいじゃ
I can’t get started
邪魔してたのはmy heart」
自由に飛べなかったのは自分に原因があったという歌詞から、自分自身を見つめて成長しようとする姿勢が伝わってくる。Nulbarichのナチュラルなたたずまいは経験と確固たる意思に裏打ちされているのだ。
「Let yourself go get your life
たどり着いたwonderland
嘘みたいなbrand new world, yeah
このままeveryday is a new era
思うがままにtry
Let me know if you need me
まぁラフにタフにgo…」
リズムに乗るとまったく違和感がない英語と日本語のミックス具合。海外志向で英語にこだわるのでも日本語で歌うのでもなくその、ときどきでいちばん合った言葉を使うというアイディアはある意味でとても日本らしい。
日常生活の一部としての音楽
Nulbarichが「NEW ERA」で歌っているのは日々の率直な思い、それも大げさなものではなくちょっとした発見やささやかな希望だ。だからこそ、スター性と無縁な彼らの音楽はSNSやYoutubeで拡散しプレイリストでシェアされてきたのだと思う。情報が氾濫し無料でさまざまなものが手に入る現在、日常生活の一部としての音楽というNulbarichのスタンスは音楽との新しいつきあい方を提示している。
TEXT:石河コウヘイ