ときに自分を甘やかしてあげる…
――ドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」のヒロイン・義経えみるも、理想へ向かってゆく中、心にいろんな葛藤を覚える日々を過ごしていきます。
安田レイ:身近に頑張っている人が完璧に見えてしまう気持ちって、わたし自身も感じていることです。わたしも、同世代で活躍しているアーティストさんを見るたびに「すごいなぁ」と思えば、「自分はまだまだそこのレベルには辿り着けてない」と悩むこともあります。もちろん、「どうすれば理想に近づけるんだろう」と思い悩むことも多いです。
だけど、そうやって考える時間も大切なこと。きっと義経えみるちゃんも、わたしも、「そんな弱い自分も愛してあげるから」という気持ちの余裕を持とうとしているんだけど、実際のところ、そんな心の余裕もなくて、凹む毎日…。
でもえみるちゃんは、誰かのために頑張れば、その人からの感謝の気持ちや相手の笑顔に励まされ、そこから心の栄養を担っているのかなとも思うんですね。わたし自身も、届けた歌に対してファンのみなさんからリアクションが返ってくるたびに、「あー、音楽をやってて良かったなぁと思います。自分の悩みや弱い部分も「この感動を得るためにあったんだなぁ」と、ちょっと心がプラスになれたりもしています。
――ときには、一人で悩みを解決することも大切かも知れませんが。いろんな人たちの心の支えがあることで、人は前へ進めますからね。
安田レイ:そうなんです。人って、一人では生きていけないなぁと思います。わたしも、ソロとして活動をしていますけど。その背景では大勢の方々がわたしを支えてくれています。
そんな、たくさんの支えがあってわたしも生きていられてるんだなぁと感じています。 義経えみるちゃんも、自分のためには出来ないことでも、「誰かのために」と思うことで頑張れる子なんですよね。そんなときほど、いつもは出ない馬力も出てくる。そういうことって、わたしも含め、いろんな人たちの中にあることじゃないかともわたしは感じています。
――誰かの、何かのために行うことが自分を前へ突き動かす力になるのなら、それも大切な気持ちだなと思います。
安田レイ:そうなんですよね。たとえ、それで空まわろうと、その気持ちがあるから前へ突き進んでいけますからね。義経えみるちゃんは、つねに気持ちをフル稼働させている子。わたしも、つねにその気持ちで日々を生きてたいなと思い、『Sunny』の歌詞にも「不器用な心は今日もフル稼働 息を切らして」と書きました。
――フル稼働し続けると、たまに心が疲れません?
安田レイ:ちょっとぐったりすることもありますけど、そんなときは好きなことに時間を費やすようにしています。そういったメリハリもまた大切と言いますか、心が疲れたときはちょっとだけ息抜きをして、自分を褒めてあげながら、また気持ちを新たにフル稼働していく。わたしは、そんなローテーションを繰り返している気がします。
――それこそ、「今日はコンビニで甘いものを買って食べるぞ」と自分を甘やかすだけでも、気持ちは違ってきますからね。
安田レイ:そうなんです。わたしも、気分転換のご飯に救われてるところは大きいです。わたし、心が疲れたときは、気になっているお店へ行ってお腹いっぱい食べたりもしています。そこは人間ですから、ストイック一辺倒ではなく、ときには自分を甘やかす時間も必要なんですよね。
――ときどき自分を甘やかす時間もあるからこそ、逆に頑張れますから。
安田レイ:誰にだってそういう面はあると思います。人って、どうしても自分に厳しくなりがちだけど。ときに自分を甘やかしてあげる…心に隙間を与えてあげることも大事だと思います。
お気に入りのフレーズ!
――さっき「となりの芝生は青く見える」と言ってましたが、こういった活動をしていると、まわりと自分を見比べることも多いのでしょうか?安田レイ:なるべくそうしないほうが、自分らしく伸び伸びと歌えるんでしょうけど。やっぱり、他のアーティストさんのことも気になります。とくに同世代には才能のある人たちがたくさんいる。だからこそ、「自分はどういうオリジナリティを持って表現していったらいいのか」「まだわたしぜんぜん出来てないよ」など、いろいろ見比べてしまうこともあります。
ただし、それで落ち込むのではなく、相手の個性を認めたうえで、そこで感じた想いを、なるべくプラスに持っていけば、「じゃあ、自分の魅力や武器は何かな??」と考えるようにもしています。
――『Sunny』にも、心葛藤しながらも、自分を信じて未来へ向かってゆく想いを投影していますよね。
安田レイ:そうです。きっとこの感情って、終わりのないこと。ずっとループしてゆく感情なんですけど。ループしてゆく輪が大きく広がり続けてさえいれば、それが成長していることだともわたしは受け止めています。
――『Sunny』の中で、お気に入りの歌詞なども教えてください。
安田レイ:やっぱり「不器用な心は今日もフル稼働 息を切らして 朝日が昇ったら始まるの 現実と理想が渦巻くリアリティ」の部分です。どんなに不器用で、どんなに求めたことが出来なくても、その中で必死に息を切らしながらもフル稼働で生活をしていたい。しかも、朝日が昇るたびに、その生活を繰り返し続けてもゆく。結局は、そうやって理想と現実の狭間で心渦巻く日々を人は繰り返し続けるんですよね。そんな気持ちを、この二行に表現しています。
――人は、何時だって理想と現実の狭間を埋めようと、必死に生きているんでしょうからね。
安田レイ:一つ満足をしても、また新しい課題や意欲が生まれてゆく。わたしは、理想と現実の狭間を埋めようと頑張ることを楽しんでいます。人はどうしても、人生の苦しいことをクローズアップしがちだと思うんです。わたし、「ため息ひとつで逃げてく 小さなしあわせ追いかけて ナミダ流してもいい 太陽が笑う日を 一緒に見ていたい」という歌詞もお気に入りです。
じつは幸せって、何時も目の前にあること。パッと逃げていきそうなものを一生懸命に追いかけ、それを心の栄養素にしながら日々のいろんなことを乗り越えてゆく。わたしも、必死にもがきながらも、少しでも「幸せだな」と思える瞬間に出逢うたび、「生まれてきて良かったな」と感じています。それが小さくても構わない、そんな幸せを日々の中に見つけていけたらいいなとわたしは思っています。
――『Sunny』というタイトルが素敵ですよね。
安田レイ:『Sunny』はサウンドも夏っぽいですし、歌詞の中でも「誰かの存在になりたい」と歌っているように、そういうイメージを「太陽」という意味を持つ『Sunny』というタイトルへギュッと濃縮させました。
――完成した『Sunny』、今のレイさんにとってどんな楽曲になりましたか?
安田レイ:『Sunny』は、自分の弱い部分をギュッとひねり出して作った楽曲です。誰だって、現実と理想の狭間で苦しむこともあれば、その中で幸せを感じることだってあると思います。
その気持ちを『Sunny』を通して…みんなと一緒に、わたしも日々悩みや苦しさを覚えようと、「生きてて良かったなぁ」と思える瞬間を見つけていきたい。そう思う気持ちを『Sunny』から感じ取っていただけたらなと思います。サウンドにも夏らしさが出ているように、ぜひ、この歌と一緒に熱い夏を乗り越えましょう!!