9月にメジャーデビューシングル『HANDSIGN』を発売し、デビューを飾ったHANDSIGN。MVとして収録されている、実話を基にした『僕が君の耳になる』と『この手で奏でるありがとう』は、HANDSIGNが手話を取り入れ歌う姿が高い注目を集めている。
HANDSIGNは、TASTUとSHINGOによるユニット。彼らはラッパーの輪入道を迎え、11月21日にデジタルシングル『新時代 feat.輪入道』をリリースする。手話ラップという新たなスタイルに挑戦した彼らに、その理由を伺った。
手話を取り入れることで、想いを伝えやすくなった
──もともとダンサー・パフォーマーとして活動していたわけですが、なぜ自身の活動の中へ手話を取り入れるようになったのか、その理由から教えてください。TASTU:「オレンジデイズ」というドラマの中で使われている手話を見て興味を持ったことが、そもそものきっかけでした。
HANDSIGNはもともとダンスグループとして活動、その中へ手話を取り入れたら恰好いいんじゃないか。加えて、自分の好きな音楽を、手話を通してより多くの人たちに伝えられるのではないかと思ったことも、理由として大きかったですね。
──パフォーマンスの中へ手話を取り入れた成果、当時はどのように返ってきていたのでしょうか?
TASTU:他とは異なるパフォーマンスとして見えていたのか、「恰好いい」「感動した」と言われることが多かったです。手話を取り入れたことで、他のダンスパフォーマンスとは異なる表情を持つ魅力を描き出せたのはHANDSIGNにとって強みになったこと。
ただ、手話という手の会話を取り入れることで、手の動きが普通のダンスよりも制約は生まれました。そのぶん、これまで以上に想いを伝えやすくなったとも感じています。
音楽が好きになったと言われたときは本当に嬉しかった
──今、動画サイトでHANDSIGNのデビュー曲『僕が君の耳になる』と『この手で奏でるありがとう』のMVの再生回数がすごく伸びています。この2曲は、耳の聴こえない人と聴者とが織りなす実話を基にした楽曲。HANDSIGNの場合、誰かの経験を基にした歌も多いのでしょうか?TASTU:実話を基に楽曲を作ったのは、デビューシングルに収録した『僕が君の耳になる』と『この手で奏でるありがとう』の2曲だけです。僕らがHANDSIGNとして活動を始めてから今年で13年が経ちました。以前からそうですが、手話パフォーマンスをしてきた僕らだからこそ、普段の活動ではなかなか出会うことのない方々と触れ合い続けてきました。
その活動の中、「自分たちにしか表現できない音楽を作ろう」と模索していくうえで、実際にある(耳の聴こえない方と聴者との)物語を歌にして、こういう素敵な現実があることを伝えようと思ったのがきっかけでした。
SHINGO:その前から、今へ繋がるきっかけはありました。というのも、以前から耳の聴こえない人たちの通う学校などへ足を運んでは、そこで手話とダンスで楽しみましょうという想いからパフォーマンスを行い、それこそ、卒業式にまつわる卒業ソングを手話と歌を交えて作ったりという活動を続けてきました。
それがきっかけで、今のような手話を取り入れた歌の数々が生まれれば、ろう者のオリンピック「デフリンピック」の日本選手団応援ソングを手がける機会を得るようにもなりました。
そうやって、ろう者の方々やその身近にいる人たちとの触れ合いを多く重ねてゆく中、今回のように、「彼ら彼女らの姿を歌にして届けたい」という想いへと繋がりました。
今の活動をしながら感じている嬉しさが、HANDSIGNの手話ダンスや歌をきっかけに、耳の聴こえない方々が喜んでくださるのはもちろん。それまで手話のことを知らなかった人たちが「手話って恰好いい」「手話、楽しそうだな」と興味を持ってくださるようになったこと。あと、耳の聴こえない方々に「音楽が好きになった」と言われたときは本当に嬉しかったです。
【動画】僕が君の耳になる MVを見る
TiKToKの中に手話ユーザーが1万人程いること
──配信がスタートした最新曲『新時代 feat.輪入道』では、手話ラップという新しいスタイルをHANDSIGNは取り入れました。TASTU:ラップは若い人たちの間でも熱い注目を集めている音楽ジャンル。
僕ら自身も、以前からラップで手話を行う手話ラップに興味を持っていて、それを表現する機会を探っていました。
今回リリースした『新時代 feat.輪入道』でラッパーとして参加してくれた輪入道君は、片耳が突発性難聴。実際に出会う機会を作り、今の僕らの活動について話をしました。
そこで輪入道君も僕らの活動へ共感を示してくれたことから、今回の手話ラップへ挑戦する道を切り開きました。ラッパー本人がラップをしながら手話をするのは、前代未聞のチャレンジでした。
──いわゆる早口ラップではなくわかりすくライムをしているのも…。
TASTU:手話としてもしっかり伝わりやすくということからのスタイルです。
SHINGO:輪入道君と話をしていく中でも、「早口で言葉を詰め込みすぎると手話の動きとして伝わりにくくなるから、あえてゆっくり、しかも数は少なくともしっかり伝わる言葉で歌にしたいよね」という会話をしながら、今のスタイルを作りあげています。
これまで、相反する印象を持たれていた手話とラップを『新時代 feat.輪入道』を通し合わせ持った表現を行ったことで、新しいスタイルを築くことが出来ました。その面は、これからも追求していこうという気持ちを僕ら自身は持っていますからね。
TASTU:それまでになかった手話ダンスが、僕らHANDSIGNの活動を通して少しずつですが広がったように、僕らと輪入道君とのコラボを通して、手話ラップも「恰好いいから真似てみよう」という人たちが増えたら嬉しいなと思っています。
──手話ダンスや歌の中へ手話を取り入れた活動、世の中へ認知させるまでには、やはり時間を要してしまうことなのでしょうね。
TASTU:今では僕ら以外にも手話ダンサーやシンガーがいますけど、最近始めた人たちが多いように、浸透するまでにある程度の時間を要していくのは感じています。
今、面白い現象だなと思っているのが、TiKToKの中に手話ユーザーが1万人ほどいること。
しかもTiKToK愛好者のように、世代も10代から20代中盤くらいの人たちが中心。きっかけが、『僕が君の耳になる』『この手で奏でるありがとう』の音楽に合わせ手話をしてくれてる動画を1000人以上の人たちが真似したり、オリジナルを制作したり、アップロードしてくれている。
人気アプリでの広がりは昔では考えられないですからね。
昔は、手話ダンスを行っても物珍しさで終わっていたことが、今は動画を撮り、自分でそれを発信するところまで変わってきました。そこは、時代性に関係していることだなとも感じています。
他にも、僕らも毎年参加している「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」という、全国各地の高校生たちが手話ダンスや手話ソングなどで表現を競い合う大会があり、そこを通しても手話の魅力が広がり続けています。
しかもその大会には、佳子さまも来賓として参加してくださって手話でスピーチをされています。同じ大会に参加できていることは大変光栄です。
僕らも手話ダンスを作って提供したDANCE EARTH PARTY さんがパフォーマンスに手話を取り入れたりなど、色々な方々によって手話の存在が広がり始めていると、僕らも感じています。