ZYUN.の心のハードディスクを覗く
──初のファーストアルバムで、新曲が10曲も収録されているということですが、このボリューム感は制作を通していかがでしたか?ZYUN.:リード曲の『registry』に関してはレコーディングの1週間前にできまして、その前は『ミカヅキ』という曲をリード曲にするつもりだったんです。でも進めていくうちにもう1曲書こうかなと思い始めて、制作がすっごいギリギリになるっていう(笑)。
──『registry』が出来上がった時は“やっぱりこれをリードにしよう!”と思われたんですね。
ZYUN.:そうですね!これしかないなと思いました。なのでアルバムのタイトルも最初に仮定していたものとは変わりました。
──後からアルバムタイトルが決まったということは、タイトルに付随したような、一貫したテーマ性を持って制作をされていたのとはまた違った作り方をされたんですか?
ZYUN.:今回のアルバムの中で、ソロになる前にやっていたバンドの時に大切にしていた『Re:PLAY』という曲を“本編最後”っていうような立ち位置で入れていて。そのあとに入る『hope』という曲はどちらかというと映画のエンドロール的なイメージなんです。
なので『registry』が出来る前から、自分の音楽の始まりまでを振り返ってみたいなというテーマというか、想いはありました。
バンド時代の『Re:PLAY』はこれまでCDにも入れてこなかったですし、今の自分とは別だと割り切っていたんです。アルバムで過去を振り返って、最初から応援してくれているファンの方にとっても意味のあるアルバムにしたかったし、ファン独特の“もっと最初から知りたかった”っていう気持ちにも応えられるように昔僕が凄く大切にしてきたものを入れたっていうこともあります。
『registry』ってコンピューターのハードディスク的なイメージがあって、自分の心の中のハードディスクを覗いたら、この12曲が入っていたんだよ、っていうような形になっているので、いつは最初からアルバムのテーマは変わっていなかったです。
──『registry』って直訳したままの意味だったんですね。そうすると、この12曲それぞれにZYUN.さんの時代背景が含まれているような。
ZYUN.:そうですね、自分の中ではベスト盤くらいの気持ちで出させていただきました。CDを出させていただくということ自体が自分の中ではすごく嬉しいことですし、せっかく皆さんに手に取ってもらうのなら楽曲だけじゃなく、ジャケット写真のアートワークだったり、アルバムの監督・演出も自分でやらせていただいて。自分の全てを出し切れたフルアルバムになったんじゃないかと思います。
──曲順に関しても、心の中のハードディスクを表現したものになっているのでしょうか?
ZYUN.:『registry』というリード曲が未来に向かう自分の背中を見せてくれているような曲で、だんだん過去に遡っていくようなイメージも含んだうえで、聴き心地も考えて決めました。
──最後に『hope』という曲が収録されているので、希望に向かってアルバムが進んでいくような、そんな想いも込められているように感じました。
ZYUN.:ありがとうございます(照)。
──『hope』はすごくゆっくりしたテンポで、こう見ると歌詞もすごく少ないですよね。
ZYUN.:そうなんですよ。この曲は1番だけで。収録曲を選曲するときはワンコーラス作ってから、どの曲をフルで作って収録していくかっていう作業をするんですけど、この曲に関してはフルにしなくてもワンコーラスで完成されていたので、このまま入れた感じになっています。
──今作のレコーディングに関してはいかがでしたか?
ZYUN.:6曲目の『体温』という曲以外は昔の曲も含めレコーディングをしました。
『雨の日に逢いたくなるのはいつも君だけ。』という曲のMVを手がけてくれた堤幸彦監督とはプライベートでも今すごく仲良くさせていただいていて。その堤監督との出会いの曲が6曲目の『体温』って曲なんです。
移籍前の去年の春、『体温』を聞いてくださって僕に逢いたいって言ってくれて。CDを出すことも何も決まっていない状態で映像を作ってくれることになりまして、実は去年の4月には映像を撮っているんです。
『体温』はバンド時代の曲なのでデビュー前にレコーディングもしていて、堤監督と出会わせてくれた曲でもあるので、あえてこの曲はデビュー前の歌声をそのまま使っています。
registry
──(楽曲資料をめくる)ZYUN.:すごい(自分の)髪の毛黄色いですね(笑)
──綺麗な黄色ですよね!
ZYUN.:自分ずっと髪の毛シルバーで衣装も白だったんですよ。だったんですけど、監督が「金髪がいいんじゃない?」って言われた一言で翌日には黄色にしてきました(笑)。
──すごい行動力(笑)。今後も、これまでのシルバーヘアのイメージを離れて新しいイメージを作られていくような感じなんですか?
ZYUN.:そうですね、今までは中性的だとか無機質っていうものをテーマにして、見る人が僕のことを自分にとっての楽な存在に置き換えられるようにと思っていたんですけど、今回の移籍をきっかけに“自分”っていうものをもう少し出してみてもいいんじゃないかと思いました。
それに、これまでの2作品は自分の奥深くから出てきたままの言葉を羅列したようなアルバムだったんですけど、今回の作品はなるべく大きの人に聞いていただきたいなっていう気持ちが出てきたので、一貫してきた“心が軽くなるように”っていうところは変わらずですけど、サウンドも歌詞もわかりやすくてキャッチーなものをという意識もありましたね。
──心が軽くなるように、ですか。確かに、何か許容してくれているような包容力が。
ZYUN.:頑張らなくていいんだよ、生きてるだけで頑張ってるんだから、もう良くね?っていうラフさは、エモい曲でもロックなサウンドでも入れ込んでいます。
ZYUN.の独特な曲づくり方法
──そんな収録曲について詳しくうかがっていきたいと思います。『registry』ははじめ収録予定もなく、“もう1曲欲しいな”というところから作り始めたとのことでしたが、それはどうしてだったんですか?ZYUN.:単純に、最新の自分で曲を書き下ろしたくなったんです。そんな時に今までのことを振り返ってみたりとかして、自分の性格に忠実に基づいたような。
ファンの方だったり関わってくれている人たちと出会って変わった“今の自分”の曲を書き下ろしたくて。
──この曲に限らずでいいのですが、ZYUN.さんは曲を作る際、メロディーと歌詞とってどのような順番で作られるんですか?
ZYUN.:ヘッドホンをつけたら即、歌詞とメロディーが降りてきたタイミングで吹き入れちゃって、その後に自分が何を歌っていたのか歌詞に起こしていく。っていう作業をするので、歌詞とメロディーが同時にできたものが8割ですね。
──そういうやり方は初めて聴きました!考えより感覚が先行して制作をされているんですね。
ZYUN.:そうですね。僕、音楽の理論とかは全くないのでコードとかもわからないし、譜面も書けない。だから気持ちのままに書いて、後々にららら♪って書いてあるものを“僕はきっとこういう風に歌いたいんだ”って考えて歌詞を足していきます。ただこれはZYUN.の曲に関してだけなんですよね。junxix.という名義で他のアーティストさんに楽曲提供をさせて頂いているんですが、その場合は緻密に計算して書いていくんです。
──その曲づくりの方法がよく伝わって来るなと思うのが、『Sensational baby』な気がします。歌うのが難しそうなくらい、コード進行の固定概念にとらわれずに作られているなって。そういうのってとても大事ですよね。
ZYUN.:そうですね。元々歌手になろうと思って歌っている訳でもないし、ボイトレも習ったことがないんです。そういう歌手ではないからこそ、こういう書き下ろしの仕方ではないと歌いきれない。だからしょうがないっていう作家の気持ちなんですよね(笑)。 『Sensational baby』は幼いときの自分と向き合ったりして書いた曲です。
──幼い部分という意味では、『registry』も共通してそうだなと思いました。『registry』のMVに少年とそのお母さんが出てきますし。ZYUN.さん中で、『registry』と『Sensational baby』で共通したり近い部分ってありましたか?
ZYUN.:そうですね。『Sensational baby』を書き下ろしたのがつい最近なので、ここら辺は同じですね。振り返るという部分で、テーマを作った曲なので思い出す部分というのは似ているかもしれないです。
──20歳過ぎてからですけど、このくらいの歳になると自分を形成している経験や環境について考えてみるのが楽しいですよね!?なので、『Sensational baby』や『registry』ってそういう考えを持ちながら聴いていきたい!と個人的に、思ったんです。
ZYUN.:そうですね。昔の納得できないことや傷ついたことや、忘れられない人も含め、今振り返ってみると、そういう出来事があったから今がこうなっているんだって帳尻が合うように出来ているんですよね。
だからUtaTenさんを見てくれている方は、きっと恋愛、仕事、人間関係で真面目に悩んでいる子が多いと思う。でも結果何を選んでも悲しいことはあるだろうし、楽しいこともあると思う。自分が選んで選択したものが正解だと思うので、ぜひこれを読んでくれている方には、このアルバムを聴きながら見て欲しいなって思います。