今回は「ヒバナ」のサウンド、歌詞に隠された意味などをじっくり紐解いていこうと思います!
一度聴くとやみつき!ループ再生したくなるこの曲の良さが、この記事で少しでも伝えられれば嬉しいです!
ヒバナとは
「ヒバナ」はボカロP、DECO*27の42作目として2017年8月4日に、ニコニコ動画とYouTubeで公開された楽曲です。
初音ミク誕生10周年記念のコンピレーションアルバム「Re:Start」のために書き下ろされました。
10月にはニコニコ動画上で100万再生を達成。ちなみに2019年1月時点でDECO*27の楽曲は20作品ミリオンを達成しています。とんでもない人気ですね!
この記事公開時点でのニコニコ動画、YouTube上の合算再生数は1300万!色褪せることのないボカロの名曲と言っても過言ではありません。
作詞作曲はミュージシャンとしても活躍するDECO*27
では、作者であるDECO*27のご紹介です!13歳の時に父親の影響でギターを始めたところから、音楽歴がスタート。1年後には作曲をするようになり、バンドマンとしても活動。そして2007年に初音ミクと出会い、2008年10月にボカロPデビューをしました。
バンド構成を軸にしたサウンドとセンチメンタルで共感しやすい歌詞が多くの人に支持され、人気に。今ではニコニコ動画を代表するボカロPの1人に数えられます。
2011年には女優で歌手の柴咲コウ、音楽プロデューサーのTeddyLoidと音楽ユニット「galaxias!」を結成したことが話題に。プロのミュージシャンとして活動の幅をどんどん広げていきました。
2013年にボカロPとしての活動を休止することを考えましたが、自身の楽曲で盛り上がるライブイベントなどを見て心変わり。現在でもVOCALOID界の第一線で活躍しています。
また、中川翔子やKOTOKO、Bouno!などへの楽曲提供やプロデュースにも携わっており、音楽業界からも注目されている人物です!
シンセサイザーの音色が曲を華やかに
ここからは「ヒバナ」の魅力を語っていこうと思います!
まずご紹介したいのは疾走感溢れるロックサウンドです…と言いたいところですが「ロックサウンド」と簡単にくくるのは気が引けます。
確かに軸にあるのはバンド構成。ラウドなギター、芯のあるベースライン、軽快ながらも重さが感じられるドラムフレーズ。
ドラムロールから始まり、四つ打ちのリズムとエモーショナルなギターリフ。イントロからテンションが上がりますね。
しかし、この曲の味付けはシンセサイザーの音色。下地だけ聴くとバンドサウンドではありますが、その上に乗っかっているキラキラしたシンセの音色が曲の高揚感を爆発させています。
音をひとつひとつ追いかけようとすると耳が忙しいですよ。
間奏はどっしりとした印象。ヘドバンできちゃいますね!音楽ジャンルで言う、ダブステップのような重みがあります。
大サビへの盛り上がりはEDM的ですね!
「バンドサウンド」では括れず、曲全体に抑揚があり、聴き飽きない。これが「ヒバナ」の魅力のひとつと言えます。
「単純じゃない恋」歌詞の意味について
ここからは歌詞の意味をしっかり読み込んでみようと思います。
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コンコン 優しくノックして
乗り込め ココロの奪還戦
妄想ばかりが フラッシュして
加速するパルス 答えはどこだろう
さあさあ弱音はミュートして
くだらないことで躊躇して
冗談ばかりね?あっはっは
壊せない壁が キスを迫るでしょう
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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Aメロの歌詞です。「キス」という言葉が出てきている辺り、恋の歌だなと察しがつきますね。しかしこの歌、例えば、学生たちの甘酸っぱい恋物語ではありません。
かっこいいギターのバッキングに乗せての「コンコン 優しくノックして」。誰かが扉をノックします。好きな相手でしょうか。
ただ、その後に登場する言葉は「ココロの奪還戦」です。しかも「乗り込め」と。恋の歌の言葉選びとしては激しめ。意中の相手の心を奪うための戦い、と読み取れます。
妄想や考えが頭の中をぐるぐる回り「答えはどこだろう」と悩んでいる様子も。
次のフレーズに「弱音はミュートして」とあります。「ミュート」とは音が出ない状態を指す、音楽用語のひとつです。
これなんですが、「音が出ない状態」=「音量が0」ではありません。
実際音響機器のミュート機能を使ってみると分かりますが、音が鳴っている状態でもミュートは出来ます。
もちろんスピーカーなどからは音は出ません。が、機器の中には音の信号が来ています。なので、無理やり無音の状態を作っていると言えます。
つまり「弱音はミュート」は弱音を言わない、ということではなく、弱音を抱えたまま、という表現です。
不安や迷い、ぐるぐる頭の中を回る考えを抱えたまま、それでも進んでいかなければいけない、という決意がこのAメロから分かります。
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嗚呼、厭 「そんなわけないや」
嗚呼、厭 「わかってくれるでしょ」
その頭を撃ち抜いて
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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「そんなわけないや」や「わかってくれるでしょ」なんて、気休めみたいな言葉が頭の中を巡ります。
恋をしていると相手のことならなんでも分かる気になったり、相手なら自分のことを全て分かってくれている、と思いがちですよね。
そういうところからすれ違いが起こって、ケンカしてしまうことも。
そういう甘い考えを「撃ち抜いて」欲しいと願っているのが、Bメロの歌詞です。
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終わんない愛を抱いてたくないの
もっとちゃんと不安にしてよ
いないいないばぁで演じて欲しいの
もっとちゃんと応えてよ
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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世の中に完璧なものなんてないはずだ、という思いがサビから伝わってきます。
全てを理解してくれる相手…確かに理想ではありますが、相手が完璧であればあるほど、自分は不安になるもの。
ただそれが「あ、ちゃんと自分のことを考えてくれているんだな」と思えるきっかけになります。
ちゃんとしようとするから失敗してしまう。そういう姿を見てこそ、思ってくれているんだな、と感じるのです。
Aメロの歌詞にあった争奪戦のような感情。不安や悩みを抱えて、それでも進んでいくから気持ちが伝わるし、伝えられる。この曲のメッセージ性はそこにあります。
DECO*27の楽曲はそういった、恋や愛についての思いが込められていることがとても多いのです。
この気持ちに共感できるのは、特に若い方なら多いはず。それこそが彼の人気の秘密と言えます。
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nanana
「未完成」だって何度でも言うんだ
nanana
NOを空振った愛の中で
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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それが、完璧ではない「未完成」だからこその思いです。
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トントン これで御相子って
埋まらない時に篭っちゃって
完全主義はスモーキーに
孤黙する声に目眩とモノトニー
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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2番では1番の歌詞をさらに突き詰めています。
「完璧主義はスモーキーに」完璧とはなんでしょうか?煙の先のように、見ようと思っても見えるものではないのかもしれません。
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Knock knock! Let me go in and get the ace
You'll paint your face with tears that don't feel the same
Now Heart Reinforce's up to end this game
You'd better give up and throw your MP5away
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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そして、ここで登場するのが英語歌詞。
簡単に訳してみると、
コンコン!切り札はもらっていく
君はいつもとは違う涙を流すだろう
このゲームを終わらせる準備はできている
あきらめた方がいい、その銃を捨てて
となります。(人によって訳した方に差はあるかもしれませんが。)
「君は」と出てくる辺り、日本語歌詞部分の主人公ではない人物の発言なのかもしれません。
「あきためた方がいい、その銃を捨てて」というセリフが意味深ですね。
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不甲斐ない 愛を愛したくないの
もっとちゃんと痛くしてよ
笑えないくらいが きっと楽しいの
もっとちゃんと溶かしてよ
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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曲の主人公は痛みのある関係を求めています。英語歌詞の部分であきためた方がいい、と書かれていた部分はそのことでしょうか。
ここまでの流れで、痛みのある関係が、「未完成」こそが主人公にとっての「完璧」とも取れますね。
そして、それをあきらめろ、と。考え込んでしまう内容です。
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nanana
「未完成」だって何度でも言うんだ
nanana
NOを空振った愛の中で
nanana
「未完成」だって何度でも言うんだ
nanana
NOを空振った愛の中で
≪ヒバナ 歌詞より抜粋≫
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何度も出てくるこのフレーズ。耳に残りますね。
「NOを空振った愛の中で」否定の言葉が愛の中で空振る。
否定するということは満足していない、ということです。愛に包まれていながらも満足していない、未完成な状態、未完成な関係。
ちょっと切ない気持ちになる恋の歌ですね。
実はゲームが題材の楽曲?
ここまで全く触れてきませんでしたが、実はこの曲はゲームが題材と言われています。そのタイトルは「レインボーシックス シージ」。
2015年には発売されたオンライン対戦型FPSです。特殊部隊の隊員たちを操作して、ミッションをクリアしたり陣地を取り合ったりします。
このゲームの中に登場するキャラクターの1人がコードネーム「ヒバナ」。日本人の女性隊員です。
プレイしたことがある人なら「もしかして…」と思ってしまうフレーズが、歌詞の中にいくつか登場しています。
分かりやすい例を挙げると英語歌詞部分の「MP5」という言葉。
訳詞では「銃」と表現しましたが、「MP5」は銃の名称です。
「ヒバナ」と銃の名前が登場する歌詞、これだけで「レインボーシックス シージ」が連想できます。
なのでこの曲は、ヒバナという女性が主人公の、恋の歌ということになりますね。
動画に使われているイラストをよく見ると、銃の照準も描かれています。
DECO*27の得意な「愛」を表現する音楽センスと「レインボーシックス シージ」の世界観ががっちり融合した、興味深い楽曲です。
スピード感のある曲調なので、カラオケを盛り上げるのにぴったりですよ!
キーは高めなので、自分の音域に合わせて調節した方が良いかもしれません。
英語の部分が覚えられず詰まるかもしれませんね。そんな時はUtaTenの歌詞ページに読み仮名を振ってあるので、ぜひ活用してみてください!
TEXT 荒木若干