独自の世界観が魅力な椎名林檎
彼女の登場は衝撃的でした。独特の歌い方、睨め付けるような視線、今までに無い歌詞…。ゾンビメイクで愛車を真っ二つにしちゃったり、ナース姿を披露したりと、PVの印象も強烈でしたね。
現在で言うレディ・ガガ並みに全てが強烈で、後々まで色濃く記憶に残る歌手ではないでしょうか。
そんな彼女の曲で一際異彩を放っている曲、それが『歌舞伎町の女王』だと思います。
わずか30分で完成させた楽曲『歌舞伎町』
この曲を作った当時の彼女はまだ上京したての二十歳前後で、渋谷のレコードショップでアルバイトをしていたのだそうです。そこでSMクラブのスカウトマンから「女王様をやらないか?」とスカウトされた事を切っ掛けにこの曲を思い付いたのだそう。
なんと約30分で曲を完成させたと言うのだから、絶句してしまいます。そんな椎名林檎の『歌舞伎町の女王』の歌詞をご紹介します。
歌舞伎町の女王
----------------
蝉の声を聴く度に
目に浮かぶ九十九里浜
皺々の祖母の手を離れ
一人で訪れた歓楽街
ママは此処の女王様
生き写しの様なあたし
誰しもが手を伸べて
子供ながらに
魅せられた歓楽街
十五になったあたしを
置いて女王は消えた
毎週金曜日に来てた
男と暮らすのだろう
≪歌舞伎町の女王 歌詞より抜粋≫
----------------
実際にこんな幼少期を過ごした女の子って探せば結構いそうな気もしますが、現代と言うよりも少し昭和の香りがして、そこはかとなく情緒を感じますよね。
作中の女の子の成長過程を歌詞で感じられれるのがこの曲の醍醐味でもありますが、この女の子、最後にはとんでもない方向に突っ走って行きます。
「女の子」から「女」になった彼女は、母親に対する恨みや誰にも見せまいとする強がり、そして野心を胸に、歌舞伎町に深く根を張る事になりますが、その様子は気高くもあり、不憫でもあり、またどこかコミカルで、一度聴けば絶対に忘れられない歌になっているのです。
実は彼女、ここ数年まで実際に歌舞伎町へ訪れたことは無かったらしく、この曲を製作した時は、歌舞伎町の事を「何処と無く雅な色街なのだろう」と認識していたそうです。
想像だけで完成させた色街
実際に歌舞伎町に赴いた時は、雅とは無縁な、きらびやかなネオンに驚いたのだとか。いわば「雅な色街・歌舞伎町」を脳内だけで完成させてしまった彼女。
過激さの中にもユーモアがあり、ねっとり歌うのにどこか淡々と聴こえてくる、本当に不思議な歌です。
彼女の歌う歌舞伎町と実際の歌舞伎町を、ちょっと比べに行きたくなって来ました。
TEXT:rie-tong