伏線回収の答え合わせ
──『交換日記倶楽部feat.高橋久美子』に触れていきたいと思います。高橋久美子さんがフィーチャリングで入られていて。これは、もはや歌ではなく…北島康雄:そうですね、朗読ですね。
──これはどう言った経緯で製作されたのでしょうか?
北島康雄:徳島で僕らがイベントをやった時に久美子さんに出てもらうことになって、詩の朗読とをする予定なんですけど。
その中で、連詞というやつを一緒にやらないかという話をくれまして。
僕も連詞というのをやったことがなかったんですけど、四星中学校というイベントだったので中学校をテーマにやらん?ということで製作が始まりました。
──連詩というテーマありきで製作されたのですね。
北島康雄:はい、この曲の四連目ができたときくらいに、交換日記というワードを大事にしたいなとなって。
──「枯れたれんげ」という歌詞が出てきますが、この後に収録されている『Soup』にも「れんげ」って出てきますよね。れんげに何か仕掛けがあるんですか?
北島康雄:僕らワンマンライブのときに、そういう伏線回収みたいなことをよくやっていまして。ダブルミーニング的な遊び方も多いんですよね。
例えば、聞き間違えて、違う小道具が出てきたりとか。ちょうどワンマンライブをやっているときにアルバム制作をしていたので、ワンマンライブの感じがアルバムに反映されたというところですかね。
実は『鋼鉄の段ボーラーまさゆき』で先に振っているんですよね。「レンゲを作っていて」って言って、そのあとに間違えてレンゲを作っちゃって、両方のレンゲがここで使われていくという。
──エモい!なんですか、これ!
モリス:エモいんかな?(笑)
北島康雄:ライブと上手にリンクできたかなと思いますし。ここで久美子さんがレンゲというワードを入れてくれたおかげで『Soup』という曲に入れ込めたので、ここも感謝していますね。
──面白いですね。この仕掛けに気づいてから、もう一回聴いてほしいです。
北島康雄:うん。アルバムという意味ではやっても良いかなと思って、やらせてもらいました。
──次はアルバムのタイトルになっている『SWEAT 17 BLUES』にいきます。アルバムタイトルになっている曲だけど、意外と多くは語らないという感じですね。
北島康雄:はい。
──この曲で一番伝えたかったところはどういうところなんでしょうか?
北島康雄:このアルバム自体、17歳という瞬間だけを切り取ったと取られないようにしたかったんです。"ずっと17歳を続けている"という感覚が、とりあえず一番伝わればなというところで「晩年の」という言葉を入れていたりもするんですけれども。
この曲は最後に出来て最後にレコーディングしたので、ジャケとかが仕上がっていて作ったという今までにない状況で作った曲なんですよ。
ジャケを撮ったときに、アルバムにまだ思春期の感じとかが足りていないなと思ったので、この曲の「抱擁」とか「かけ合わさって」とかっていう歌詞で、フォローしました。
──そういえばジャケに写っている、あれは背中ですか?
北島康雄:僕の背中じゃなくて女性の方に来ていただきまして、裏ジャケを見ていただいたら、その人の背中って分かるようになっているんですよ。だから、あの撮影は盛り上がりましたね。
──女性の背中の撮影現場に居たのですか!?
北島康雄:いましたね!
──だめでしょ!
北島康雄:だめですよね(笑)。いや、だめですよ!盛り上がりましたね〜。でも僕たちはジャケットの中の写真を撮るために居て。一緒に撮っていったという感じですね。
──なるほど…
北島康雄:いるしかないです。
好きな歌詞フレーズ
──皆さんに、このアルバム収録曲の中で一番好きなフレーズを1フレーズずつ紹介いただきたいです。北島康雄:伏線的なところのホスピタリティというか。伏線回収みたいなことが元々好きな人間なんですけど。実際、それがなくて面白いほうが、絶対的に面白いと思っているんですよ。それだったら、これをホスピタリティ的に使うというのを今回考えたことがあって。
さっき言ってくださった『SWEAT 71 BLUES』に、"高田さん"が出てくるんですよね。初めての人は高田さんが誰か分からないんですけど、U太のことなんです。これをまず最初の『鋼鉄の段ボーラーまさゆき』のときに「俺も姫路だー(高田)」と言っているんですよ。そこで、後に分かるようにしているので。
これはちょっと案内するという意味では、良い仕事をしたなとは思いました。「俺も姫路だー(高田)」というのは、アルバムバージョンに変えたんですよ。
──シングルの時ってそこ何でしたっけ!?
北島康雄:前回はずっと「(竹田)」でいっているんですけど。今回「(高田)」というのを入れて。
というところで、高田はメンバーというふうに初めて聴く方にも分かってもらえると。
歌詞を書くこだわりとかっていう世界の話じゃないかもしれないですけど、演出面で気に入っている部分ですね。
まさやん:僕が好きな歌詞は、『交換日記倶楽部feat.高橋久美子』12月5日のくだり「自由の中の不自由、の中の自由、の中の… えっ!?中野の体操服盗まれたって!?」っていうこの一言。
これまで、けっこう久美子さんと康雄で、どっちかと言えばシリアスに来ているんだけど。そこで康雄が「自由、の中の…」と「中野」を掛けたことによって、一気にコミックバンド感が出るというか。康雄が書いた意味がここで出てくるというか。
前までの感じも良いけど、ここでちょっと久美子さんに変なボールを投げたろ、みたいな。腹の探り合いというか、対決的な要素が出てきていて。
でも、ちゃんとそれを次のターンで、「こないだ中野が子どもの体操服買ってたよ」っていう。ここで時間も変わっちゃっているのが分かるし。お互いが変わっていくというのも一気に来ていて。このやりとりはすごいなと思いましたね。
──久美子さんと北島さんの間でものすごいキャッチボールができているような。
まさやん:これが中野の体操服のくだりで、きているんじゃないかなと僕は思うので。
その前に、久美子さんが「名前入りの体操服で」って中学生感を出しているワードを拾って。すげえ、と。コミックバンドの意地というかね。
──モリスさんか、U太さんはどうですか?
モリス:僕は『Soup』で。どこのフレーズかというか。このアルバムのそういう伏線とか、言葉遊びみたいなことがふんだんに盛り込まれているんですけど。『Soup』はけっこう"あるある"みたいなこともいっぱい入っているなと思って。
「味噌と醤油で悩んでたんだ 君が醤油にしたから僕は味噌にした」ってあるじゃないですか。どっちも気になるけど、同じにしなくて、違うのを頼んでみるとか。自分がスープを先にあげておいて、もらう作戦だとか。
そういうあるあるみたいな楽しみ方は、『Soup』が一番目立ってるんかなと思ってます。ラブソングなんですけど、ラブソングのかわいらしい感じを手伝って出来上がっている雰囲気が。
まさやん:実際、康雄に言われたことあるしね。
モリス:ある。そういうタイプやし。
まさやん:スープだけくれや、って。
北島康雄:それは言わんといて(笑)奥さんが怒るんですよ。人から一口もらうやつ、奥さんが怒るんですよ〜。
モリス:めちゃくちゃもらうタイプですよね。
北島康雄:もうやめてるって言ってる。
モリス:怒るからね。
北島康雄:もうやってないって言ってます。
──このやりとりで、ひと笑いできる大人って良いですね。
モリス:たしかにそうですね。
北島康雄:奥さんとの付き合いが長いので、たぶん、奥さんからもらってきたスープの量がえぐいと思う。だから、もうええ加減、いやしいという意味でやめてって言われてる。むこうがあげたくないとかじゃなくて。
──(笑)、最後はU太さんお願いします。
U太:『SWEAT 17 BLUES』で「あの時あっちを選んでいたら どうだったかなんてあの世で語ろう」です。
──まんま良いフレーズですよね。「あの時あっちを選んでいたら」と思うことは、やっぱりありますか?
U太:そうですね。しょっちゅうですね。このバンドをやっていること自体が、どっち選んどるか分からないし(笑)。
まさやん:たしかにね。選んでやってきたからUtaTenさんとお話できたりね。そういうことを考えると…ね。選んだ道やから。
──きっと勇気がいりますよね、四星球さんの楽曲は。
北島康雄:思い切りやっていますね。
──誰もやっていないから本当に唯一無二ですし、いなくならないでくださいと本気で思います!
モリス:ありがとうございます。
北島康雄:ありがとうございます。
まさやん:そんな匂いします?いなくなりそうな(笑)!
──いや、しないです!そう言う意味じゃ(笑)!!
北島康雄:このアルバムを聴いて思った(笑)?
モリス:一発屋の匂いしました?
まさやん:こいついなくなりそうやなって(笑)。
──いやいや、また来年もぜひ取材させてください!
U太:年1なんや。
──前回のインタビューが1年前だったので..(笑)
北島康雄:そのペースでね、ちゃんとね。ありがとうございます。
──こんな感じですが、まとめに入ります。今回のオリジナルフルアルバム『SWEAT 17 BLUES』は、四星球の皆さんにとってどんな1枚になりましたか?
北島康雄:メジャーファーストオリジナルフルアルバムなので、オリジナルアルバムでいうと、インディーの頃に最後に出したやつからの、3年あいているんですよね。
洗練っていう言葉は、普通は良い意味で使うんですけど。どうしても僕たちは洗練されるという言葉に良い印象だけを持てないタイプのバンドじゃないですか。でもそれを単純に、良い意味で洗練されたなと言える作品かなと思いますし、ちゃんとメジャーのコミックアルバムになったなとは思いますね。
ボリューム的にはすごいのに、過去で一番聞きやすいような作品になったかなと思います。
1枚そういうのを作っておかんと、今度、よりごちゃごちゃしたやつというのはこれができてこそやなと思うので(笑)。
──皆さん的にも出来上がってみて好感触なんですね!たしかに、1枚聴き終えた時の感覚が、"お腹いっぱいだけどおかわり欲しい"くらいのちょうど良いボリューム感でしたね。
北島康雄:ありがとうございます。
──3月から始まるライブの告知もお願いします!
北島康雄:リリースツアーっていうのが本当に久しぶりになるんですよね。僕ら、アルバムを作るときに一番大事にしているのが、アルバムを出すことによって今までやってきたこととライブに色がつくというか。違う色をもたらしてくれるってところなんですけど。それが今回、久しぶりの感覚でできるので。楽しみですね。
あと、ゲストバンドを1バンドお招きしてツーマンということなので、そこも楽しみだし。対バンさんのライブを見て、テンションええ形でライブができるというのもありがたい話ですので。6月まで長いので。あと体ですよね。体ね。長いので体だけ気をつけてやっていきたいと思います。
──最後まで元気に突っ走っていってください!
全員:ありがとうございます!
Text 愛香
Photo 片山拓
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