風がヒンヤリ。そろそろ秋?
見上げれば、空が遠くなっている。風に冷たさが混じってくれば、そろそろ秋の気配。
槇原敬之38枚目のシングル『Firefly~僕は生きていく』。この楽曲でも、不思議な秋を感じることができる。発売自体は2008年2月8日と冬のころで季節は異なるが、歌詞の中に“秋の空”が入っていてリンクさせやすい内容だ。
また、切なさの達人と称される小説家:乙一の短編小説「傷-KIZ/KIDS-」の映画主題歌でも話題となった。
この映画は、小池鉄平と玉木宏をダブル主演した作品だったので知っている人も多いのではないだろうか?
人の傷を自分の体に移すことができる主人公:アサトと、どこか影を抱える青年:タケオとの出会いから始まる物語は感涙ファンタジーと呼ばれている。
アサトの秘密をタケオが知ったときから始まる友情とお互いに自身の心の傷に向かい合う瞬間の、あたたかさと痛み。大人になると忘れてしまいそうな「大切」がブレンドされた映画だ。
「あなたの生きてく理由って何ですか?」
そんな映画の問いに、この楽曲はきちんと答えている。生きてくのに大切な理由が詰まっているのだ。
Firefly ~僕は生きていく
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暗い夜の中に見つけた
小さな蛍の淡い光に
希望を見いだせる気がして
気付けば追いかけていた
生きる意味も見つけられないような
暗闇にいるこの僕に
こっちだよと注意を
引くように飛んでいたんだ
≪Firefly ~僕は生きていく 歌詞より抜粋≫
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この楽曲は、映画に負けないくらいファンタジーに溢れている。秋の空と言いながら、蛍が飛んでいるのだ。
蛍は夏の風物詩であるわけだから、合わないように感じるがそんな事はない。ここでの蛍は見えない暗闇を照らす、灯のようなもの。
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力になろうと夏が過ぎても
ここに残ってくれていた気がした
≪Firefly ~僕は生きていく 歌詞より抜粋≫
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そんな淡い光のような存在は人の心に勇気を与えてくれる。強い光の下では見えなくても、誰かとっては光の象徴だ。暗い中、立ち止まって動けないでいる人を引っぱる力がある。
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自分に生きていく価値を
見つけられないならば
誰かの幸せの小さな
きっかけになりたい
だから僕は生きていく
≪Firefly ~僕は生きていく 歌詞より抜粋≫
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そんな蛍のような存在になら、自分もなれるような気がしてくる。大勢とは言わない。たった1人のために、“君と同じ気持ちを僕も知っている”と。
誰かの幸せのきっかけになれたなら
ちっぽけな言葉だけど、伝えることで誰かの幸せのきっかけになれたのだとしたら。人はその事実だけで、生きていけるのだ。
冷たい風に、拒絶の色を感じ始める秋。でも、その空の下にはあたたかい光が舞っているかもしれない。
恐れずに先を飛び、進むべき道を照らして。
TEXT:空屋まひろ