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■あいみょん「恋をしたから」Studio Recording Scene
あいみょんの歌う恋は全てにおいてストレートである。
あいみょんと言えば、歌詞が絶妙にリアル。
特に恋の歌を聴いていると“あ〜そうなの!"と、人には言えない恥ずかしい想いも切なさも、“好き"という感情全部を共感で刺激していく。
何故、あいみょんが紡ぐ歌詞はこんなにも恋心を刺激してくるのだろう。
それは、彼女自身が“好きな女性に対する男性の必死な様などが好き"という点にある。
それは、たくさんの人の恋を観察してきたという事でもある。
その結果が、恋する人に“共感"される絶妙な歌詞に活かされているわけだ。
言わば、恋の伝道師と言っても過言ではない。
しかし、彼女の歌う恋の歌の多くは、夢物語でもなんでもない。
そう“なんでもない恋"なのである。“なんでもない"と言っても、つまらない恋という意味ではない。
ありふれた恋、身近な恋という意味だ。言い換えれば“みんなが主役の恋"。
ちょっと恥ずかしい妄想や恋の重みだったりと“本当はそう想っているけれど、あまり大きな声では言えない気持ち"が気持ちよくストレートに表現されている。
恋をする事でしか知る事の出来ない様々な感情、体験。
それは人生を変えるものだ。
『恋をしたから』と言う、失恋を題材にした曲であいみょんが“恋の素晴らしさ"を描いている。
恋が実った曲ではなく、あえて失恋の曲の中に込めた“恋の素晴らしさ"と。
“恋をする意味"を考えていきたい。
あいみょんが感銘を受けた言葉は“恋は革命"。
太宰治の著書、斜陽に“人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ"という一節がある。
この一節にあいみょんは“恋愛をすると物の見方が変わる。恋と言うのは一個人にとって革命だ。"と、とても感銘を受けたのだと言う。
その感銘を、次の歌詞の一節に表現している。
この一節の意味がはっきりと解れば、あいみょんの言う“恋の素晴らしさ"に今度は私たちが感銘を受ける事になる。
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恋をしたから
空が綺麗と思えた
恋をしたから
明日が大好きだった
恋をしたから
貴方を知れた
≪恋をしたから 歌詞より抜粋≫
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恋をすると言うのは、それまで何でもなかった物。
存在しなかった物が突然自分の世界に輝きを纏ってやってくる事だ。
当たり前に頭上にある空ですら「綺麗と思えた」程に、恋は人を変える。
恋をしていると、心が豊かになるのだ。
空なんて、何でもないことの方が多いはず。
でも「綺麗」だと想ったすぐ先で、出会う感情は“あの人にも見せてあげたいな"と言う気持ちだったりする。
恋は、自分に降り注ぐ全てが、好きな人へと繋がっているのだ。
「明日が大好きだった」も同じ事で、当たり前に繰り返しやってくる。
別段、代わり映えも無く心が大きく動くこともさほどない。
多くは、1日が無事に過ぎてくれれば良い。くらいの事しか、明日に期待はしないだろう。
そんな明日も、好きな人がいれば「大好きだった」と想えるようになるのだ。
好きな人がいれば、その人の全てで明日が決まる。明日に大きな期待、希望を掛けるからだ。
恋をする。
それは一人の人を深く知る事でもある。
好きでなければそんなに人を見つめる事もないし、気にする事もないだろう。
それが好きな人となれば、たちまち目は一人を追いかけ始める。
そして、興味のほとんどがその人へと向けられるのだ。
そうなると、人は不思議で影響を受け出すのだ。
今までは興味のなかった事も、自分から知って行くし。
そのうち、それを好きにもなってくる。
気がつくと世界はその人を中心に広がって、たくさんの出会いと経験をする事になる。
それは、楽しい事であり嬉しい事に感じられるものだ。
好きな人と同じである事、好きな人からもらった世界だから。
その心の姿は「恋をしたから」得られた“進化"なのだ。
なぜ恋は素晴らしいのか、その答えとは。
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忘れられないものなどなくて
譲りきれない思い出ばかりで
当たり前なんてものはなくて
いつか失うこともあるわけで
≪恋をしたから 歌詞より抜粋≫
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あいみょんは、恋についてこう語っている。
“人間を「恋」という文字で表現してもいいぐらいだなと思った。だって恋がないと人類は生まれないし、恋愛って生きることにも死ぬことにもつながっているんじゃないかと。"
一人の人間が「当たり前のものはなくて」「いつか失う事もあるわけで」と、物事や人の命は必ず“無くなる"と言う事を知る。
それを痛感すると言うのは素晴らしい事だ。
人生がまるで変わるから。
今、当たり前にある恋が終わるかもしれない。
その事を想像出来れば、人を大切に出来る。
大切にした関係からは「忘れられないもの」が生まれる。
「忘れられないもの」「譲りきれない思い出」は、必ず人生の味方になって行く。
これは恋に限った事ではなく、家族や友達にだって当てはまる。
恋は人生そのものだ。人生の不幸も幸せも、全て詰まっている。
恋をすれば、そのどちらも知り得るのだ。不幸も幸せもわかっていれば、良い道を自分で選ぶ事が出来る。
生きる喜びを味わいながら、人生を歩けるのだ。
あいみょんの『恋をしたから』。
それは、恋をすれば人生が豊かになると言う事を絶妙な表現力で聴かせてくれる。
しかし、これは忘れてはいけない。
あいみょん自身も、女性にぜひ聴いてほしいと語る 『恋をしたから』。
その思いは、画面の中の世界がリアルだと思い込んでいる今の若い世代に“ 心で感じる事の凄さ(恋愛が人に与える影響の凄さ)"を感じてほしいと言うものだ。
画面の中の世界にも、恋はあるだろう。
そして、もちろん失恋だってあるだろう。
しかし画面の中の恋に体温は存在しない。
自分以外の誰かの温もり。手を握る力強さ、抱きしめられた時の安心感。
愛情に溢れた笑顔や、恋焦がれた切ない瞳。
それらは、画面を超えた先にあると言う事を。
TEXT 後藤かなこ