マイケル・ジャクソンの歌詞を語る
Michel Jacksonは、アメリカのエンターテイナー。数々のヒット曲を生み出し、ポップの世界に革新をもたらし、「史上最も成功したエンターテイナー」としてギネスに登録されている功績などから、「キング・オブ・ポップ」とも呼ばれている。 もともと、1960年代から兄弟で結成した音楽ユニット「···
インパーソネーターとは日本でこそ馴染みはないが、特定の歌手や俳優などになりきって芸をする人・職業のことを言う。
モノマネタレントとは少々違い、周りの文化やその人自身を深く理解したうえで本物を思い起こさせるような力を持っているというのが特徴だ。
今回はそのインパーソネーターとして生きる主人公ITTOにスポットライトを当てた小説をリリースした、HOME MADE 家族のKURO(小説家名義はサミュエル・サトシ)にインタビューを敢行した。
2019年3月18日発売
▶マン・イン・ザ・ミラー 「僕」はマイケル・ジャクソンに殺された/サミュエル・サトシ
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──小説、『マン・イン・ザ・ミラー 「僕」はマイケル・ジャクソンに殺された』の出版、おめでとうございます!本を読むのが5-6年ぶりの私でも本当に楽しく読み進めました!
KURO:ありがとうございます!
──主人公のITTOさんの心情に入り込んで読めるようでした。小説のタイトルにもなっているマイケル・ジャクソンの『Man In The Mirror』で歌われているようなことが小説を通しても伝わってきますが、意識された部分でした?
KURO:実は『マン・イン・ザ・ミラー』というタイトルは最後に決まったんです。書いている時に曲のことは頭になかったんですけど、ITTOくんの生き方を追っていったら知らず知らずのうちに"鏡"っていう言葉を使ったりしていたんですよね!
最終的に幾つかタイトルを挙げた中でも『マン・イン・ザ・ミラー』だ!って決まりました。僕も大好きな曲で、自分が死んで出棺するときには流してほしいくらいなんです(笑)。
なので自分にとってもこのタイトルはしっくりきていますね。
──確かに、作中での"鏡"を使った描写は印象に残っています。
KURO:小説の主人公であるITTOさんはマイケルに近づくことが唯一の正解で、小説の後半で鏡に映っているやつれた自分がマイケルに似ていないって思う瞬間があるんですよね。
自分でも書いていて切ないなって思った部分です。
──実は私自身、マイケル・ジャクソン世代ではなく『Man In The Mirror』も小説を読んだ後に初めて聴いたんです…。
KURO:すごいですね!それは嬉しいです!インパーソネーターを通してマイケルの魅力が伝わるといいなと思っていたので、マイケルを知らない世代が"マイケルってどういう人なの!?"って興味を持ってもらいたいなと。
『Man In The Mirror』はどうでした?!
──ひとことで言うと、カッコイイです!歌われていることも壮大で、マイケル・ジャクソンって見ている世界が違うなって。後半に進むにつれて音やコーラスが増えていく感じは音楽っていうものを超えた何かが伝わってくるような気がしますし、最後の「Make that change」というひとことで"自分にもできる!"って思わせてくれる魔法にかけられたような気がします。
KURO:はい、わかります!マイケルにハマりましたね!?
──これをきっかけにいろんな曲を聴いてみたいと思いました。
KURO:良かったです!
──タイトルに関しては意識して書き進めたわけではないということでしたが、KUROさんの視点で解釈したマイケル・ジャクソンの『Man In The Mirror』について伺いたいです。
KURO:僕、「As I,turn up the color on my favorite winter coat This wind is blowin' my mind」からのBメロの歌詞も好きなんです。
特に好きなのは「Pretending not to see their needs」っていう部分で、"あの子達の訴えを 見て見ぬ振りしているなんて"って言っているんです。
「Pretending」って"装う"って意味なんですけど、見て見ぬ振りをしているっていうワードにハッとさせられたんですね。見て見ぬ振りをしている人も罪なんじゃないかなって。
てっきり当事者とか加害者だけの問題なのかなって思っていたんですけど、この歌詞を始めて聴いた時に見て見ぬ振りをしている僕もダメだなって思ったんです。
──この曲がリリースされた1987年にいち早くこのことを訴えていたというのはすごいことですよね。
KURO:そうなんですよね。またサビも秀逸で、"自分から始めよう"とストレートに言わずに"鏡の中にいる奴と始めよう"っていう言い方をしているのが、よりメッセージが強く突き刺さりますよね!
歌詞を書いているのはSIEDAH GARRETTという女性なんですけど、とてもマイケルの歌っぽいんです。
マイケルはすごくピースな人なんで、その思想も反映されていてマイケル・ジャクソンのものになっているんです。
──マイケルが書いているのかと今の今まで思っていました!それと『Man In The Mirror』の歌詞で「A summer's disregard, a broken bottle top and a one man's soul」という情景描写というか表現がありますが、このイメージや感覚が掴めなくて…KUROさんはどう思われますか?
KURO:これはストリートのことを歌っているんじゃないですかね。黒人の子供たちが裸のまま外で遊んでいるようなそんなイメージも持ちます。
あと当時って、『Hotter Than July』というスティービーワンダーの曲があるくらい、夏にすごい暴動が起きたりしていたので「A summer's disregard (夏の戯れ)」だったり「a broken bottle top(割れた瓶の蓋)」っていうのは暴動にあった人のさまよう魂とかっていう表現をしているのかもしれないですね。
──鳥肌立ちました…。
KURO:ミュージックビデオを見るとそんな背景を感じるようなシーンも差し込まれているんです。
いろんな意味が込められている、本当に良い歌詞だと思います。
──素敵ですね。そして後半コーラスが増えて壮大になっていく感じはまさにITTOさんの人生のようです。孤独だったITTOさんがマイケルを通してかけがえのない存在が周りにいるようになってという。
KURO:特に「If you wanna make the world a better place Take a look at yourself, and then make a change」からの部分ですよね!
ここは有名なゴスペルシンガーの方がコーラスに入っていて、非常に教会チックなものも感じますし、唱和している感じやテンポ感もリズミカルになっているところがとてもかっこいい。
──『Man In The Mirror』はマイケルのライブではどういった立ち位置になる曲なんでしょう?
KURO:割とライブの最後の方にやる曲なんですけど、この曲の最高潮の部分でマイケルが感極まって高速スピンをするんです。小説の中でもそういう描写があるので見て欲しいです。
僕もライブ映像をよく見ていたんですけど、この高速スピンを真似したくて仕方がなくて(笑)。
本当にこの世のものとは思えないくらいにすごいスピードで回るんです!最後に崩れ落ちるんですけどそれが死ぬほどカッコよくて!
──やっぱりマイケルの話になるとKUROさんアツくなっていますね(笑)!
KURO:そうですね(笑)、僕自身もマイケルをすごく好きだったので。
人のことを書いた小説なんですけど、自分のことを書いているような感覚もありながらでした。
──確かに!フィクションも交えた小説ということだったので、小説の中であれだけ細かい情景描写がされているのに驚いたんです。
KURO:インパーソネーターのインパーソネーターみたいな(笑)。