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【歌詞コラム】草野マサムネ×松本隆、2人の詩人が魅せる「水中メガネ」の向こう側

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日本歌謡界が誇る名作詞家、松本隆の作詞と、デビュー32周年を迎えた、ご存知スピッツの草野マサムネ作曲による隠れた名曲「水中メガネ」。稀代の詩人2人が紡ぐ、水中メガネの向こう側に見える景色とは? 歌詞の内容から考察します。

公開日:2019年9月22日 更新日:2019年9月22日


この記事の目次 []
  1. ・偉大過ぎる作詞家・松本隆
  2. ・スピッツと昭和歌謡
  3. ・失われた時間を映す「水中メガネ」
Chappie、オトナモードも歌う『水中メガネ』。この曲の、悲しいほど美しい歌詞には、どんな意味があるのでしょうか。松本隆と草野マサムネ、2人の関係性から、その真意に迫ります。

偉大過ぎる作詞家・松本隆


1980年代のヒット曲のクレジットを見ると、「作詞・松本隆」と記されている曲の多さに驚かされます。

寺尾聰『ルビーの指輪』、近藤真彦『スニーカーぶる〜す』、松田聖子『赤いスイートピー』、C-C-B『Romanticが止まらない』、薬師丸ひろ子『探偵物語』、イモ欽トリオ『ハイスクールララバイ』、YMO『君に、胸キュン。』そして、大瀧詠一の名盤『A LONG VACATION』…。

あれもこれも、記憶に残っているヒット曲の作詞は松本隆ではありませんか。

歌は世につれ世は歌につれと言いますが、松本隆はまさに1980年代の歌謡史を築き上げた作詞家です。

作詞家になる前の松本隆は、細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂と結成した、日本のロックバンドの草分け「はっぴいえんど」のドラマーでした。

文学青年だった事から作詞を担当し、『風をあつめて』のような、英語を使用しない「日本語ロック」を確立します。

はっぴいえんど解散後、作詞家として本格的に活動をスタート。歌謡曲全盛期の立役者となった1980年代の後、1990年代に入ってからも、KinKi Kidsの『硝子の少年』で、『ルビーの指輪』を上回るヒットを記録します。

そして、現在に至るまでに松本隆が生み出した2000曲以上もの作品は、もはや音楽史を超えて日本史に残る一つの文化となり、2017年、学術芸術の業績に対して授与される紫綬褒章を受賞しました。

スピッツと昭和歌謡


4人全員が1967年(昭和42年)生まれのスピッツのメンバーは、バリバリの昭和っ子です。松本隆が生み出すヒット曲が巷で流れる時代に多感な10代を過ごした、まさに松本チルドレン。

時にソフトに、時にハードなスピッツ特有の音楽性は、幼少のみぎりに自然と耳にしていた昭和歌謡と、その後の洋楽の影響が相まって完成したと言えます。

そんなスピッツと草野マサムネは、多くの昭和歌謡をカバーしています。

その中の松本作品『タイム・トラベル』を、1991年、松本隆作詞活動30周年記念ライブ「風街ミーティング」に参加した草野マサムネが、子供の頃に聴いたこの曲の思い出と共に歌いました。

失われた時間を映す「水中メガネ」

1999年7月にリリースされた『水中メガネ』は、昭和歌謡のレジェンド松本隆と、松本隆の歌詞を聴いて育った昭和っ子草野マサムネの、夢のコラボレーション作品です。

架空の着せ替えキャラシンガーChappie(チャッピー)へ提供された、知る人ぞ知るこの曲は、2015年、松本隆作詞活動四十五周年記念トリビュート「風街であひませう」で、草野マサムネのセルフカバーとして日の目を浴びる事になりました。

草野マサムネが書いたスピッツの歌詞にも共通する、人の心の奥を覗き込むような、松本隆の歌詞の世界に浸ってみましょう。

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水中メガネで
記憶へ潜ろう
蒼くて涼しい
水槽の部屋
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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人は記憶を遡る時、まるで映画を観るように少し離れた場所から、冷静な目線で過去の映像を見ているはずです。

人間の脳に蓄積される記憶とは、透き通る水のようなもので、透明な記憶の水槽の底に沈んだ宝物は、手を伸ばせばすぐに掴めるような気がします。

しかし、実際の水深はとても深くて、宝物には手が届きません。

失った宝物を探すために、人は水中メガネをかけ、水面に顔をつけて底を覗き込み、そして、記憶という水槽の奥深くへとゆっくりと潜って行く。

「水中メガネ」は、思い出を振り返る時に、自分の目線が第三者的な目線に切り替わる事を意味しているのです。

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泣きながら鏡の前で踊る
ゆらりゆらり俄か雨
水中メガネをつけたら
わたしは男の子
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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今、鏡に映るのは、恋人と別れ、予告もなく降り出す俄か雨のように涙を流している自分の姿。

その現実から目をそらし、記憶の水槽の中へと沈み込めば、通りがかった少年の目線になって、水中メガネの越しのスクリーンの中に、次々と映し出される情景を見る事が出来ます。

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微かな潮騒
空耳なのかな
無言の会話が
きしむ音かな
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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記憶の水槽を潜り始めて、まず見え来たのは、潮が満ちて行く夏の海。打ち寄せる波の音が遠くから聞こえて来ます。

そして映像は、砂浜に座る自分と恋人の姿へと移り変わり、潮騒の音は、会話すらなくなってしまった2人の気まずい沈黙へと変わります。

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あなたは 無視して
漫画にくすくす
わたしは孤独に
泳ぎだしそう
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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恋人は、2人の心が離れている事に気が付いているのに、知らぬ顔で漫画に夢中。その隣には、孤独感で感情が爆発しそうな自分がいます。

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岩陰で
いちゃついてた
あの夏の
匂い
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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記憶のもっと奥深くへと進んで行くと、ようやく底に沈んだ宝物の輝きが近づいて来ました。

2人がまだ愛し合っていた頃の、あの夏の日です。海風に乗って漂うムッとするような潮の匂いすら感じるほど、手を伸ばせば届く、すぐそこに。

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洪水みたいに 時の波が
ゆらりゆらり打ち寄せる
水中メガネの
向こうで
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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宝物に手を伸ばした瞬間、時間の流れが大きな波となって一気に打ち寄せ、水中メガネの向こうの景色が遮られます。

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水中メガネを 外せば
見知らぬ女の子
≪水中メガネ 歌詞より抜粋≫
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時間の波の中をもがきながら、記憶の底から現実へと引き戻されると、鏡の中には、去年の夏とは別人のような女の子の姿が映っていました。

それは、失われた時間は、どれだけ手を伸ばしても二度と戻って来ない、その悲しみを知ってしまった少女の姿でした。

松本隆と草野マサムネ、2人の作品には共通する部分がたくさんあります。

人間の感情への深い洞察力、聴く人を旅へと誘う世界観、次世代へと受け継がれて行く普遍性、日本語への愛。

2人の詩人の手にかかれば、失われた時間を探す人間のせつなささえも、これほど美しく、映し出す事が出来るのです。

TEXT 岡倉綾子


草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人組ロックバンド。 1987年結成。1991年3月シングル『ヒバリのこころ』、アルバム『スピッツ』でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル『ロビンソン』、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを···

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