双子の兄弟で、ボーカル・ギターの三原健司と、作詞/作曲を担当するベースの三原康司を中心に、独特の歌詞と、親しみやすい楽曲センスで独自の世界観を作り出し、ロックシーンでも注目を集めているフレデリック。
現在行われている全国ツアー『FREDERHYTHM TOUR 2019-2020』も折り返しに入り、来年二月に行われる2度目のアリーナライブに向けてますます盛り上がりを見せている彼らですが、『VISION』はタイトル通り、これからの自身の目指す方向を示したものとなっています。
今回は、フレデリックの三原康司さんに、フレデリックの目指す未来の姿とともに、新たなEP『VISION』やツアー、そして来年2月に開催される横浜アリーナでのライブに向けた思いや、今後への意気込みを語っていただきました。
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「いいアーティスト」「いいバンド」になりたい
──フレデリックの活動として、今後こうしていこうという思いや今後の目標を、たとえばメンバー間で話をされることはありますか?三原康司:今明確になっている目標としては2回目のアリーナ、来年の横浜アリーナでのライブなんですが、アリーナが決まって僕ら自身の活動内容としても、どんどん視野が広がって「次はこうしていきたいね」ということを話すことがあります。
これまで大きな目標はその都度に決まっていく感じはあったし、今は横浜アリーナに向けてというところで皆の思いが通じている感じです。
──具体的に「こうしたい」「こうなりたい」みたいなことは、自分たちとしてもあまり決めていかない感じですか?
三原康司:当然「こうなりたい」という思いは、個人としてもバンドメンバーとしてもそれぞれあると思うんですけど、具体的というよりは、自分たちも「いいアーティスト」「いいバンド」になりたい、という大まかな気持ちのほうが強いと思います。
みんなに評価されるというか、ロールモデルになれるようなアーティストになりたいという思いは、常に目標としてありますし。
──「いいバンド」ですか。それをどう達成するかは難しいですよね。そもそも「いいバンド」って、なんだろう?って…。
三原康司:確かに。アーティストによっては長く続けて、本当にカッコいいと思えるアーティストさんもいます、音楽的にすごい技術を持っていたりとか、演奏面や歌詞の言葉選びという面とか。
いろんなところでバンドのよさ、尊敬する部分というものを、自分たちも様々なことを経験していく際に見てきて、自分たちの伸ばせるところを考えながら伸ばしていくことが、自分たちもいいアーティストという目標にたどり着ける道筋になると思っているので。
▲フレデリック 『VISION』通常版ジャケット
──メンバーとの話の中で気になったことなどはありますか?
三原康司:最近、健司が言っていたんですが、僕らがもうすぐ30歳になることに対して「30代を、一番楽しい年にしたいよね」って。学生のころなんかは、20代であることが一番楽しいと思っていましたが、それに対して年をとっていくごとに若返っていくというか。
さっき、まさしく「そういうバンドでありたいよね」ということを言っていました。だから本当にそんな年を過ごしていけるようになりたい、と思ったんです。
──30代というと、人生の中でも一番いい年齢ですもんね。具体的な目標としては、評価としては最もわかりやすい進歩の表し方として「大きなところでプレーし、多くの人に認めてもらう」ということを考えている、ということですかね?
三原康司:実際に立ったことのない場所に立ったときに言える言葉もあると思っていますし。その視野でわかっていくことも自分たちで実感して次を決めていけたほうが説得力もあるし、等身大の自分でいられると思うので、そういう活動をしていきたいと思っています。
──今回リリースされるEP「VISION」ですが、詞には非常に自発的に前を向くイメージがあり、また新しい方向に進んでいこうとしているのか、目標を見据えたところがあるのではと思いました。
三原康司:一度アリーナを経験して、また次の横浜アリーナに向けて…と僕らがライブ活動をしていく中で、同じ場所でライブをすることもあるけど、同じ感覚は全くないんです。
一つ一つの活動に意味があって、会場がどんどん大きくなるごとに、いろんな見方や演出、音楽的な挑戦とかいろんなことができるようになるし、そういう意味ではすごく自分たち自身も成長していかないと、面白いものを見せられないと思うんです。
その意味では、健司がさっき言っていたような「30代を楽しい年にしていく」ということを自分たち自身で築き上げていくことが一番大事だと思っているし、前を向いて精力的にいいものをちゃんと見せていこうという意識がすごく強かったので、今回はストレートに未来を見据えるテーマにしました。
──一方でできることが増えると逆に、やることを躊躇することはありませんか?
三原康司:まあ幅が広ければ広いほど、なにを選ぶかという選択肢も増えますから。ただ常に広く自由に、という方針は、以前からバンド自身が持ち続けてきたことではありました。
基本的には健司が決めたことなどに対して「こうしていこう」というターゲットを決めていくので、そのときに指針はもう決まっている感じもあります。今回に関しては選曲、どの曲を出していくかということをいろいろ話し合った上で一番いい形、一番これが面白くなっていくだろうという選択が、今回もできました。
──カップリングの「イマジネーション」「終わらないMUSIC」もこの「VISION」というイメージの方向につながるものを感じました。
三原康司:今回は横浜アリーナに向けた音楽を意識した感じもよりありましたし、音の感じとかシンプルさ、という点で結構アリーナロック、みたいな感じをイメージしましたし、そういう形にはなったと思います。またその形が、フレデリックの新しい進化の形だとも思いました。
「なにかを得ようとすると、絶対犠牲がある」
──「VISION」「終わらないMUSIC」と、EPの曲名は現在行われているツアーのサブタイトルにもされていますが、こういったテーマを今回取り上げようと思われたきっかけは、やはり横浜アリーナという場所に向けての思いがあったのでしょうか。三原康司:ありました主に健司からそういったものをテーマとしてリード曲にしたい、と言ってきたんですが、そこから僕は「だったら、未来について歌った曲がいいな」ということを思い、テーマを未来として「VISION」を書き始めました。
「終わらないMUSIC」も、横浜アリーナで鳴らすライブのイメージ、ステージに向けての気持ちみたいなものを言葉にして作っていったんです。
──フレデリックとしての今後に向けての宣言のようでもありますよね。”やめないよ!”と(笑)
三原康司:“おじいちゃんになってもやる”ってね(笑)。でも自分たちの目指す目標というだけでなく、お客さんも同じような気持ちで見に来ていると思うんです。
だから僕らとしては横浜アリーナ、そして他の人にとってはやっぱり目指すものを持って頑張っている、という格好で同じ気持ちを持っている人に少しでも寄り添ってあげられることが、やっぱり横浜アリーナでプレーする意味じゃないかと思っているんです。そんなこともすごく考えながら作りましたね。
──こういうタイトルをつけると、自分たちの思いというところが出過ぎるというところもあると思いますが、聴く人がどう考えるかということも確かに大事ですよね。
三原康司:逆にやっぱり、そうやって自分たちのことを見てもらえたほうが、今なにをしているか、どういう行動をしているかというのが、すごく明確にわかってくるというのもあるんですよね。実際にそれを見て私も頑張ろうと思えたら、素敵なことだと思うし。自分に置き換えないとまずは言えないなと思うんです。
──ちなみに先程、「VISION」という曲を作られたときに、健司さんの意見から、というお話をいただいたのですが、そういうものをいつも曲作りのインプットとしている感じですかね?
三原康司:みんなと話し合わずとも、行動で僕が感じることもあって、そういうものをインプットとしていることがあります。たとえば今健司はこう作っていることを歌ってなにかを伝えること、目の前にいる人と話す。
そこでいろんなことを一番感じ取っているのは、実際にそういうことをしている健司自身なんです。その意味では健司にしか見えないところって絶対にあるし、そこが今回はすごく重要になってくる部分だと感じていましたし。
──では、恒例の「ピックアップフレーズ」を教えていただければと思います。
三原康司:「VISION」の「さようなら 古びたプライドは捨てて」というところですね、サビの部分。自分で経験してきた中ですごく感じることが「なにかを得ようとすると、絶対犠牲がある」ということ。それってホントにつきものだなと言葉だけでなく身を感じていろいろ思ったこともありました。
そんなことって、誰もが感じていると思うんです。でも、そんなことを見せずに頑張っている人たちもいっぱいいるし、そういう人って本当に強いと思うんです。
だから固くならず後ろ向きにならずに視野を持って、前を向く人のカッコよさみたいなところを大事にするには、なにかを捨てなければいけない。そんな思いが大切だと考えながら作ったところであり、強く印象としても持っているところなので、ここをピックアップしました。
──ちなみに康司さんとして、ご自身が「捨てた」、最も強い印象のあるものはなんでしょうか?
三原康司:歌詞の形に対して、固執していた思いではないかと。昔はすごく意味がない歌詞を書くことに専念していた時期がありました。でもそんな詞を書いていることが自分の中で「これだったら俺、ずっとこのままでいるんだな」と思ったんです。
ただ一方で自分がやり続けたことを変えることの恐怖のようなことも結構前に抱いていて、なかなかその思いを変えることができないままでいました。でもそのときにフレデリックとしてこう新しい音楽を書いていこう、それが、フレデリックが新しいことに挑戦していくことだと思ったんです。今は昔書いていた歌詞の形に比べて、すごくストレートになったんです。
──でもふと思い出したときに「時には昔みたいなことをやってみよう」と考えたりすることもあるかもしれませんよね?
三原康司:確かに。今活動し続けている中で、また新しい挑戦とかいろんな変化をしていくうちに、それが正しかったかと考える時期があると思うんです。この前それを感じた日があったんですが、それは今回っているツアーのSEASON2のことでした。
このときは昔のライブハウスを回ったツアーで昔の曲もやったんですが、昔の曲と今の曲が共存してライブをやったときに、それぞれの曲を演奏しながら、昔の曲でも新しい曲でもそれぞれでフレデリックらしさを感じて「あ、これでよかったんだな」と思ったんです。