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【インタビュー】sajiの新曲、明日の自分は「ずっと」未定。だから「きっと」…。歌詞の向こうにある希望。 (1/2)

saji(ex.phatmans after school)が、改名して初のシングルをリリースする。『ツバサ』はTVアニメ『あひるの空』のエンディングテーマにもなっている、爽やかなポップチューン。このバンドの詩曲を手掛け、他アーティストにも多数曲を提供しているヨシダタクミ(Vo,G)のクリエィティビティーが存分に発揮されたグッドメロディーと、こだわり抜いて綴る「生きた言葉」に、ますます磨きが架かった印象だ。3人揃って登場。

各部屋に漫画スペース

──TVアニメ『あひるの空』のエンディングテーマということで、唐突ですが普段から漫画は読まれますか?

ヨシダタクミ:僕の両親、少年漫画、青年漫画、ほぼ全部毎週買っていたんですよね。

ユタニシンヤ:高校生の時、よくタクミの家に行ってたんですけど、だいたいの部屋に漫画があるんですよ。


──漫画部屋じゃなくて、すべての部屋に漫画スぺースがあったということですか?

ユタニ:そうなんです。


──なるほど。昔から漫画は読まれてきたんですね。ちなみに『あひるの空』以外でバイブルと呼べる作品はありますか?

ヨシダ:うっわぁ、むっずー。

ユタニ:全然、絞れない。


ヤマザキヨシミツ:旧作でもいいですか?ダメですか?

(しばし、3人、喧々諤々……)


──いきなり問題発言しましたでしょうか、私。

ヨシダ:いえいえ。でも、選ぶのが、すっげ、難しいんですよ(笑)。小さい頃から読んでたから、ありすぎるというか。すぐは絞れないというか。『あひるの空』もそうですが、僕、バスケットやっていたっていうのもあって『スラムダンク』です。

ユタニ:僕は『るろうに剣心』ですかね。週間の少年漫画誌に連載されていたのは、僕が小学生の頃だったんですけど、その時にはあんまりはまっていなくて。中学時代に『るろうに剣心 追憶編』を読んで「なんだこれ、面白い」ってなって、そこから単行本を買って読み始めて、はまりましたね。

ヤマザキ:旧作だったら『幽遊白書』。今連載中のなら『MAJOR』です。


──ヨシダさんは、バスケットをやっていたんですね。

ヨシダ:バスケは、地元の少年団みたいなチームに入って、小中とやってました。僕らのチームって、全国的な平均からすると身長が低くて。僕、当時170㎝ちょいだったんですけど、その僕がセンターを務めるようなチームだったんです。で、僕、そもそも運動、得意じゃなかったんですよ。でも僕の親父が元々バスケ選手で、インターハイまで行ったような人だったんですね。兄貴も陸上やってて、それなりの戦績を残していて。でも僕はあまり運動は得意じゃ無かった。

小学生の頃って、どんな夢でも見られるじゃないですか。プロ野球選手でも、サッカー選手でも、それこそ何でも目指せる。でも僕はわりと早い頃から達観していて、そういう夢が無かったんですね。家族、親戚の中でも、勉強もスポーツもあまり得意じゃ無い。まぁ、なんでも、そこそこというか(笑)。だから、やる気が無かった。やる気が無いって、努力しないから伸びない。そういう子供だったんですね。

きっかけはクリスマスプレゼント

──そこからどうやって音楽をやろうと?

ヨシダ:で、そんな中、兄貴がクリスマスプレゼントでカシオの電子キーボードが欲しいって言い出して。当時、鍵盤が光って、そこを追って押していくと曲が弾けるっていうキーボードが流行ってたんです。確か、2000年初頭くらいでしたかね。元々、そのキーボードに入っていた曲が椎名林檎さんの「罪と罰」とかだったから。でも、小学生のプレゼントにしては結構高かったんですよ。だから兄貴が「お前の分と一緒にして、クリスマスプレゼントで買って貰おう」って、俺に持ちかけて来て。


ユタニ:よくあるよね、そういうパターン。

ヨシダ:そう、兄弟あるある。で、買って貰って、最初は兄貴の部屋に置かれてたんですけど、兄貴すぐあきちゃって、僕のモノになったんですね。それから、毎日夢中になって弾いてて。学校の教室にあるオルガンでも、弾いたりしてたんですね。そうすると人が集まってくるじゃないですか。で、「あ、俺、音楽向いてるかもしれないな」と思って。そこからずっと音楽ですね。こういう風に、小学生の頃、自分に自信が持てるフィールドが見つけられたから、得意気になって始めたっていうのが、そもそもの起源で。そこからいろんな楽器を触って、気が付けば、今……って状態。


──なるほど。

ヨシダ:いろんなものを諦めてから見つけたものが音楽だった。あれでもし、俺が運動神経めっちゃよかったら、アスリートを目指していたのかもしれないし。逆に劣等感があったから、音楽を見つけられたのかもしれない。


──音楽で諦めそうになったことは?

ヨシダ:無いですね。諦めそうになるくらい、まだ全然やれてないと思うし。極論で言ってしまえば、生きるために音楽やってるって思ったことは1回もなくて。音楽やってるのがすごく楽しくてやってたら、たまたま生きているって感覚に近いっていうか。音楽やめたら、生きているのも楽しくないと思うし。こう……自分のやりたいことを探したくて生きている……とか思ったことは無いですね。ただ、僕みたいな人間でも生きていけるっていう意味では、この世界はある程度優しいと思う。みんな辛いって言うけどね。


──そうですね。世論も長い間、そんな風潮ですし。

ヨシダ:ですね。でも、僕はそんな辛くないと思うんです。僕らのお客さんも、よく言っているんですね。「夢がまだ見つからないんです」とか「生きていくのが辛いです、どうしたらいいですか」って、良く言われるんですけど。でも生まれた時から使命持ってる人なんて、いないじゃないですか。例えば「僕は、この国を救うために生まれて来た」とかっていう人、1人もいない。


──あぁ、使命を果たすためというか……目標を持つために生まれて来た人間ってことですね。

ヨシダ:そうそう。親の教育方針とか、育つ環境とかいろいろ違いはあると思うけど、大切なのは分岐点、転機だと思うんです。例えば、20歳まではやりたいこと見つからなかったけど、25歳の時に見付けて大成する人もいるから。


──なるほど。人生の上での分岐点をどれだけ敏感に感じて、自分自身で選択していくのが大切。

ヨシダ:僕はそうだと思いますね。

タクミの武器

──曲のお話しを。「ツバサ」を作ったのはいつ?

ヨシダ:これは2年前くらいの曲なんですよ。その頃、既に、今回のタイアップのお話しはいただいていて。僕なりに曲の設計図を書いて、仕上げたのがちょうど1年半前。レコーディングも1年前に終わっている曲なんですね。だから、今の自分だったら、もう少し違った視点で書いた可能性はありますけど。でも、曲作り、特に歌詞はその場その場のタイミングでしかないので。活動を続けていく中で、歌っていくことで変わっていくことも当然あると思うので。


──ユタ二さん、この曲を初めて聴いた時の印象は?


ユタ二:確かあの時は、データ送られて来て、パソコン開いて部屋で聴いて。「爽やかな曲だなぁ」と思いましたね。

ヨシダ:今懐古するおじいさんみたいだったぞ。「確かあの日は……」って。

ユタ二:「たぁしかぁ~、あの日は……晴天で……」(一同大爆笑)


──(笑)文字では伝えにくいです、今の語り部口調は。

ユタ二:(笑)。「ツバサ」は、どうギター入れていこうとか、迷った覚えがありますね。これまでの曲には、あまりギターでハモリとか入れなかったんですけど、この曲ではハモリを入れて、よりクリアで綺麗な印象になるように作ったりしてましたね。


──ヤマザキさん、いかがでした?

ヤマザキ:まったく覚えてないです(一同爆笑)。


──わかりました。では、今改めて聴いてどう思います?作った本人を目の前にして質問するのもなんですが。

ヨシダ:はははははは。

ヤマザキ:いや、普通に本人にも言ってるんですけど(笑)、いい曲だと思いますね。


──ヤマザキさんにとって、いい曲とは? 

ヤマザキ:やっぱりいい曲って、作る人によって違うっていうか。タクミだったら、ハードな曲よりポップな曲歌った方がカッコいいと思うし。得意分野、武器をうまく使ってるなって思えるようなバンドが好きだし、いいバンドだなと思います。


──とすると、sajiは、そのマッチングのレベルが高いですね。

ヤマザキ:そう思いますね。

明日の自分には……

──「ツバサ」の歌詞について伺いたいんですけども。「ずっとずっとずっと」「きっときっときっと」というフレーズがありますよね。ここのメロディラインって、たぶん、他の言葉でも成り立つんじゃないかと思ったんです。


ヨシダ:あぁ、なるほど。確かにそうですね。


──でも、そうしていない。同じ言葉を3回重ねてる。すごいな、と。意図したところはあったんですか?

ヨシダ:歌詞は本当に曲によりけりなんです。曲によって、言葉の言い回し変えるんですけど、「ツバサ」に関しては、僕が『あひるの空』をリアルタイムで読んでたことも大きかったですね。これは良く言ってることなんですけど、昔の僕、少年時代の僕が聴いて、いい曲かどうかっていうのを基準にして、曲を書いてるんです。大人の俺が聴いてカッコいい曲かではなく、音楽を知ったばかりで、音楽的な知識は無いけど、ただ音楽に夢中だった中学生の自分が聴いて、あのアーティストいいなと思えるような曲を今作れるかどうか、なんですね。


──あぁ、めっちゃ納得しました。すごく言い得てます。

ヨシダ:で、「ずっとずっとずっと」「きっときっときっと」に関しては、これはリフレインの手法でしかないんです。そこから言葉の歌詞の部分にフォーカスすると、僕のポリシーが出ているというか。僕、基本的には明日に対して希望を持ちたいんですよ。昨日、今日が辛いっていうのは、よくある話じゃないですか。でも、明日も同じ様にこうなんだろうなっていう考え方に関しては、僕は否定派なんです。だから、曲でも映画でも漫画でもバッドエンドがとにかく嫌い。なんで俺の心をこんなに締め付けた状態で、この作品は終幕するんだ、と、いつも思う。だから曲では、どんだけ鬱屈した感情を伝えたとしても、最後は多少無理があったとしても希望で締めるんです。



──それはシンプルに、さっき言ったように、中学生時代の自分がそういうのが好きだから?

ヨシダ:それもあるけど、今日がどんな日であっても、明日以降の自分、明日以降の未来って常に未定じゃないですか。昨日までの自分には期待できなくても、明日の自分には少し期待できるかもしれない……と思うのが、生きていくことだと思うんですよね。


──うん、うん。

ヨシダ:だから「ずっとずっとずっと」「きっときっときっと」っていうのは、わからないって意味合いが含まれている。わからないけど、こうであって欲しいなって時に、人間は「ずっと」や「きっと」を使う。例えば「君をずっと幸せに……」とか。


──本当だ! 確約されてないけど、確約が欲しいって希望する時に使われる言葉だ。

ヨシダ:そう、願いの言葉なんです。僕もそういう表現が好きなんで、そういう言葉を使ってますね。


──「きっと」も「ずっと」も、希望に続く言葉ですね。

ヨシダ:そうですね。未来はこうあって欲しいって曲なんですよね。

▲saji-「ツバサ」MUSIC VIDEO

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北海道出身の3人組バンド。 2010年に「phatmans after school」を結成。全楽曲の作詞・作曲を手がけるVo.ヨシダタクミの透き通る歌声、圧倒的で叙情美溢れるメロディーライン、そして葛藤や憂いをストレートに表現した歌詞に、Gt.ユタニシンヤ、Ba.ヤマザキヨシミツのパフォーマンスが相乗効果を···

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