割れたグラスは何を表しているのか?
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浮かんだんだ 昨日の朝 早くに
割れたグラス かき集めるような
これは一体なんだろう 切った指からしたたる滴
僕らはこんなことしたかったのかな
≪Just Be Friends 歌詞より抜粋≫
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”割れたグラス”というと良いイメージではありません。
手で拾い集めようとすれば、もちろん何処かしら怪我をしてしまいます。
「切った指から滴る雫」からも指を切ってしまったことが分かりますが、どうやら痛みというよりただ指から滴る血をぼんやり眺めているようです。
「僕らはこんなことしたかったのかな」と過去を振り返っていますが、注目したいのは「かき集めるような」というフレーズが比喩表現だという点です。
壊れてしまった関係を、二度と元には戻らない割れてしまったグラスに例え、関係を修復しようと拾い集めても元に戻ることはない。
逆にその破片で傷ついてしまい、ふと冷静に「なんでこんなことをしているのだろう」と考えてしまったのでしょう。
辛い選択とは何か
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分かってたよ 心の奥底では
最も辛い 選択がベスト
それを拒む自己愛と 結果自家撞着の繰り返し
僕はいつになれば言えるのかな
≪Just Be Friends 歌詞より抜粋≫
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「分かってたよ」と自嘲気味に「辛い選択がベスト」とありますが、この辛い選択とは何を指しているのでしょうか?
「自己愛」の意味は、ナルシシズムや自己陶酔とも言われるもので、自分自身を愛し自分に酔っている人のことを指します。
「自家撞着」の意味は、一人の人間の言動の辻褄が合わないという意味を持っています。
「自己愛」が辛い選択を拒み「自家撞着」を繰り返してしまう。
付き合っているカップルの一番辛い選択とは別れ。
主人公は、別れを切り出し関係が完全に終わることや自分や相手を傷つけることを恐れる「自己愛」と、別れるべきと頭では理解しつつも別れたくないという「自家撞着」で、いつになっても別れを切り出せずにいるのでしょう。
朽ちていく世界と僕の足掻き
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緩やかに朽ちてゆくこの世界で
足掻く僕の唯一の活路
色褪せた君の 微笑み刻んで 栓を抜いた
≪Just Be Friends 歌詞より抜粋≫
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「緩やかに朽ちていく」と関係がすでに冷めつつあり、別れを切り出さずともこのままお互い何もしなかったら、遠くない未来に自然消滅するというところまで来ていたのかもしれません。
「足掻く僕の唯一の活路」とありますが、それは恐らくこのまま時の流れに身を任せて自然消滅させるつもりはないということでしょう。
自然消滅をするのであれば足掻く必要はありません。
「色褪せた君の頬笑み」から考えると、もう彼女は主人公に笑いかけることもなくなっていたのかもしれません。
ただその微笑みを思い出し、決意を固めたことが「栓を抜いた」から窺うことが出来ます。
また、ここで栓を”抜く”ではなく”抜いた”と過去形で表現することで、これが過去であると強調しているのかもしれません。
別れた後を思わせるサビ
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声を枯らして叫んだ 反響 残響 空しく響く
外された鎖の その先は なにひとつ残ってやしないけど
ふたりを重ねてた偶然 暗転 断線 儚く千々に
所詮こんなものさ 呟いた 枯れた頬に伝う誰かの涙
≪Just Be Friends 歌詞より抜粋≫
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盛り上がりどころであるサビの「反響 残響 虚しく響く」から察すると、もしかしたら同棲や半同棲状態だったのかもしれません。
「外された鎖」が繋がっていたのは別れた彼女であり、別れたから何もなくなったと考えるのが自然です。
ではなぜ糸ではなく鎖なのでしょうか?
それは恐らく思いの重さを示しているのではないかと考察します。
それほどに大きい思いだったものが、繋がっていた先の彼女と別れたことでなくなってしまう。
「なにひとつ残ってやしない」と空っぽになった虚無感を感じさせる言葉で表現されています。
何かの偶然で出会い、付き合っていた二人を別れが暗転させ、縁が断線してあっさりと崩れ去ってしまいます。
「所詮こんなものさ」と自分に言い聞かせるように呟くものの、心の何処かで後悔しているのか、涙を流しますが泣いているという自覚はないようです。
サラッとした雰囲気がありながらも、後悔やそれでも前を向いて歩かなければいけないという気持ちが詰められたような歌詞。
ちなみにタイトルの『Just Be Friends』は「ただの友達になろう」という意味で、英語圏では実際にカップルが別れるときに使われる言葉らしいです。
一番のみの考察でしたが、二番以降はあなたなりに考えてみると楽曲の世界観がまた広がるかもしれませんよ。
TEXT Noah