哀愁を大事にしてきた
──なるほど。ちょっと話がずれてしまいますが、是非、伺いたいことがあるんです。喜怒哀楽の中で、1番大切にしているのは? プライベートも楽曲作りも含めて、1番大切にしているところ。山田義孝:時期によって違ったりもするんですけど、今は「哀」かな。モノでも、景色でも、なんでも哀愁を探してしまうというか。人の哀愁にすごくひかれる。
──それは、孤独につながったりもしますか?
山田義孝:あぁ、根本にはそれもあると思うんです。で、そこにいろんな色のフィルターがかかって哀愁になったりするのかな、と。街を歩いてても、哀愁を感じると胸がギュッと痛くなって、いろんなものが美しく感じたりとか、愛おしく感じたりするんですよね。
──普段、普通に歩いてても感じるの?
山田義孝:うん、めちゃ感じる。街を歩いてても。
吉田結威:めちゃ感じる……って、お前、友達?急に同級生みたいになってるな(笑)。
──(笑)。光栄です。街を歩いてると哀愁を感じる、と。具体的に言うと?
山田義孝:古い家とか。ライブで全国回った時に、街を歩いてるとシャッター商店街があったりすると、ノスタルジックな気持ちになりますよね。「あぁ、ここにいろんな生活があったんだろうな」と想像したりして。
吉田結威:僕も「哀」ですね。今、質問を受けて、山田の話を聞きながら考えてたんですけど、ずっと「哀」なんじゃないかなって。僕は、音楽でここ10年は生きて来たわけですけど、自分自身が音楽で救われた経験っていうのが、自分が哀しいときが多かったなぁって思ってます。
音楽っていろんな楽しみ方があるじゃないですか。例えば、楽しいときに一緒に踊るためだったりとか、楽しさを共有するためだったりとか。僕は違っていて自分が楽しい時は音楽をあまり必要としていないなぁって。哀しい時や急に孤独を感じた時とかに、音楽に手がのびてたんですね。だから、自分もそういうものが作りたいっていうのが根本にあるんだと思う。
──自分にとって音楽は、何か足りないものを埋めるものだった? 何か潤すものだった?
吉田結威:というよりは、救われるものです。音楽によってこの哀しさもちゃんと意味があるんだって、思えます。それで、その哀しさの中にある喜怒哀楽の中の喜、哀しさの中にある喜びにたどりつくためのものだったんですよね。その助けになるのが音楽だったんだなと思う。だから音楽の力ってすごいなって思ったんです。
──なるほど。
吉田結威:気分がいいときより、落ち込んだ時の方が曲が出てくるし、だから僕が作る曲ってアップテンポの曲が少ないんですよ。山田が作ったアップテンポの曲を歌うのはすごく楽しいんですけど、自分の中からはあんまりアップテンポの曲が出て来ない。苦手なんですよね。
根底にあるのは別れ
──なるほど。では、吉田山田の楽曲にある「哀愁」の理由はどこにあると思いますか? たぶんメロディーとかじゃなく、人生への価値観に通ずる意識だと思うんだけど。
吉田結威:別れだと思います。少し前にある友達が、お父さんが亡くなられたのをきっかけに地元に戻ったんですよ。それでつい最近荷物整理してたら、お父さんが亡くなったときに会社の同僚が弔辞で読んだお手紙が出て来た、と。改めてそれを読んで、途中からもう読めなくなったんだよね……って話をしてくれたんです。この話を聞いて気付いたっていうか……別れについて考えた時、やっぱり僕らの歌のどこかには、別れっていうのがすごく漂ってるなと感じます。
どんなに楽しくてもいつかすべて別れがくるっていう切なさだったり、だから大事にしなきゃいけないものがある。そういう気持ちが、僕らの音楽の根本にあるって改めて気付かされたんですよね。そしてその友達には家庭があって、幸せにしなきゃいけない人もいて。いろんなことがあってもすごくたくましく生きている。その姿を歌にしたいなって、思ったんですよ。
──少し、意地悪な質問になっちゃいますけど……。
吉田結威:全然かまわないです。なんでも聞いてください。
──すべてに「別れ」があるという実感は、ある意味、すべての終着点が別れともとれる。エンディングが見えているとも言えますよね? そこに虚無感とかは感じない?
吉田結威:それは感じないですね。基本的には楽観的で、楽しいことが好きだからだと思う。だからこそ心のどっかで忘れちゃいけないっていう具合に戒めのように思っているんですよね。
──さっきおっしゃった「哀」の部分ですね。
吉田結威:そうです、そうです。僕ら、気の合う同級生と音楽始めてここまで続けてこられて、基本的には楽しくてしょうがないです。その楽しさに浮かれ過ぎちゃうときがあるので、世の中に自分が生きた証を音楽として残すときに、戒めとして覚えておかないといけないことって気がしてますね。
──自分が音楽に助けられたってことも含め、自分たちの音楽も聴く人を助けられたらいいなって思いは?
吉田結威:そうですね。それは次の段階かなとも思ってて。まずは自分が感じること、伝えたいことを自分の言葉でちゃんと伝えられるかっていうことです。それで、助けられたとかっていうのも含めて、評価されたらすごく嬉しいです。
でも、評価が先にきちゃってて、それで曲を作るってなるとバランスがおかしくなっちゃうから。歌詞が書けない時ってだいたいそうなんです。「こっちの言葉の方が聴きやすいかな」とかって考え始めると、もう泥沼にはまっちゃうんです(笑)。だからそれよりも今は、1曲1曲を悔いなく作れたかっていうところにテーマをもってますね。この3年くらい特にそういう思いが強いですね。
衝動の第一弾「微熱」
──では。ボーナストラックの「微熱」について。
吉田結威:これは去年の夏くらいに始動し始めたプロジェクトのひとつとして、去年の夏くらいから作り始めていったんですね。去年、47都道府県ツアーも終えて、なんとなく10周年もまとまってきた中で出て来た1曲です。これまで『変身』『欲望』『証命』と、アルバム三部作をあえて同じ方にアレンジをお願いしたんです。その中で出て来た、新しいことをやりたいっていう衝動の第一弾が「微熱」なんです。
プロデュースを三宅彰さんにお願いしたんですけど、47都道府県ツアーにライブを観に来てくださって、「今の吉田山田にこういう曲を歌って欲しい。こういう曲を聴かせて欲しいってイメージがあるんだよね」っておっしゃってくれて。じゃあ、それを形にしてみよう、と。三宅さんからは、最初、ワンコーラス分のコードを送られてきたんですね。それがまた自分では絶対に出て来ないようなコード進行で。マイナー調のど真ん中をいく、でもちょっと洒落てて……みたいなコード進行だったんです。
三宅さんは「自分達の歌い易いようにコード変えていいからね」っておっしゃってくれたんで、いただいたコードを元に、自分なりにコードも変えながら、仕上げていったんですよ。これだけ最初からがっつり他の人に入ってもらうのって、本当に久しぶりで。10周年がひとまとまりした後のタイミングじゃなかったら、ちょっと拒否反応が出てたかもしれないなと思うんです。でも、新しいことを学びたいなと思うタイミングだったから、いろいろ受け入れながら作ることが出来たと思います。
──なるほど。出し切った後だから、次は吸収だ、と。
吉田結威:そうなんですよ、吸収したかったんですよね。正直、作っていく途中で、自分の中ではしっくりこない部分もあったんですけど、レコーディングして、全体のバランスを整えて聴きなおしたときになるほどなって思うことがたくさんありました。すごく刺激になるなと思いましたね。
山田義孝:歌詞はよっちゃんが書いたんですね。さっき哀愁の話をしましたけど、スパイスとして曲の中に入れていたものを、全面に出している曲が「微熱」だと想うんです。
正直「ここまで哀愁を全面に出してって、僕ら、今、歌えるのかな」って思いもありましたけど、出来あがったものを聴いたら、ちゃんと僕らの色になっている。しかもすごくいい色だなと思ったんですよね。最初は、くどいんじゃないかなと思ってたんですけど、バランスよくちゃんといい色で出すことが出来たと思ってます。
TEXT 伊藤亜希
PHOTO 片山拓
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