少しだけ頑張ろうでいい
──「Never too late」は、ダークな世界観も感じるハードなアップナンバー。七海ひろき:ノリのいいダンスナンバーのような曲を作りたいと思いました。ライブで盛り上がれる曲にしたいと思ったので、掛け声を入れたり。あと、カッコ悪いことがカッコ良く感じることがあるということを表現したかった。
──今おっしゃった、カッコ悪いこととは、例えば、がむしゃらさ、とかでしょうか?一生懸命に何かやるということが、カッコ悪いと思われることも、今の世の中、多々ありますもんね。
七海ひろき:そうなんですよね。でも、がむしゃらに頑張ってやることを私はカッコいいと思うので。曲タイトルにもつながるんですけど、何かを始める時に遅すぎることはない、と。たった一度の人生なんだから、カッコ悪くても突き進んだらいいんだよという思いを伝えたいなと思って歌詞を書きました。
──そういう……始めることに遅すぎることはない……みたいなことを日々考えたりすることはあるんですか?
七海ひろき:私自身は、どちらかというと、今やりたいことは、今やろうってタイプなんですが、そう思える時もあれば、そう思えない日もあります。
──少し立ち止まって休憩したい時もありますよね。
七海ひろき:そうですよね。そういう時は、休憩して、また少しだけ頑張ろうって思えるような曲になったらいいなって。すごく頑張らなくてもいいから、ちょっとだけ、昨日より今日、今日より明日みたいに、進んでいければいいと思うから。
初回盤が弟、通常盤が兄
──アルバムタイトルにもなった『KINGDOM』について聞かせてください。
七海ひろき:この曲を聴いた時、私の中に王族の血を引く双子の王子の物語が浮かんだんです。実は、CDのジャケット写真はその双子の兄弟をイメージしています。初回限定盤が弟。弟はちょっとやんちゃでみんなの人気者。通常盤が心優しく頭脳明晰でちょっと体の弱いお兄ちゃん。このイメージから、歌詞を書いていって。だから1番は弟を、2番はお兄ちゃんを歌っているんです。
──すごい切り口。想像力が豊か過ぎる。今伺って、とても面白かったです。ただ、個人的に『KINGDOM』を聴いて孤独というイメージが浮かんだんです。そこで伺いたいのが、七海さんの中にある孤独のイメージについて。ちょっと作品からは離れてしまうかもしれないんですけど。
七海ひろき:孤独………(真剣に考え中)……すごく極論を言ってしまえば、人間、最後は1人で死ぬわけじゃないですか。そういう意味では、人間って、個人だし、孤独と感じることもあると思うんです。でも、今、私の周りには助けてくれる人がたくさんいる。応援してくれるファンの皆さんもいる。だから今は、私自身、孤独を感じることは無いですね。私1人だったら、『KINGDOM』って作品も出来なかったと思うし。皆さんがいたから、作ることが出来たアルバムだと思っています。
──そう思えるのは、すごく幸せなことですね。
七海ひろき:本当にそうです。私は、周りの人に、そしていろんな人との出会いに恵まれていると、すごく思う。とても幸せなことだと思ってます。
──人の出会いに感謝出来るって、すごく素敵なことだと思うんです。それだけで才能というか。出来ない人もたくさんいるわけですから。七海さんの中には、そういう感謝の気持ちっていうのが、ベーシックにあるように感じるんですが、いかがでしょう?
七海ひろき:そうですね。私自身が不器用な人間なので、すごくカリスマ性があって、1人で何でも出来る人になりたいなと思うのですが、自分はそうじゃない。皆がいろいろ助けてくれるからこその七海ひろき、なんですよね。退団して、この1年間、その思いがさらに強くなりましたね。
──周りのスタッフがいて、ファンの皆さんがいるから、自分が七海ひろきになれるという感覚?
七海ひろき:そうです。本当にそう思います。こう思うことが出来るって、すごくありがたいことだなと実感してます。
褒められると…?
──退団後の自分を改めて振り返ってみて、新発見などはありました?
七海ひろき:新発見ですか……そうですね……(再び真剣に考え中)……。
──………私は、先日まで放送されていたアニメ『織田シナモン信長』を見て発見がありましたよ。声優・七海ひろきがやった三津秀人という役は、いつでもテンション高い天然キャラでしたよね。あ、こういうテンションの役も出来るのかという発見でした。すみません、ちょっと偉そうな言い方になってしまいました。
七海ひろき:あはははは(笑)。秀人(=三津秀人。七海が「織田シナモン信長」で担当したキャラクター)はテンションがいつも高かったですからね。私、普段は、のんびりしていて(笑)ずっとテンションが高いという方ではないので、アフレコの時は大変だったんですよ(一同笑)。
──で、新発見、ありましたでしょうか?
七海ひろき:新発見というよりも、改めて気付かされた部分が多かったかな。改めて自分はこういう性格なんだとか、こういうクセがあったんだとか。自分はこういう風に見えたりすることがあるんだとか。そういう部分を改めて気付かせてもらえた。そこが自分にとっては発見でしたね。
──改めて言われて、1番嬉しかったことは? 言葉とかでもいいんですけど、思い出せますか?
七海ひろき:うーん……(さらに真剣に考え中)……あ、あった! すごく単純だけど“褒められると伸びるタイプだよね”って言われた時が嬉しかったな(笑)。結構、私、言われたことによって気分が変わるタイプなんですよ。例えば、ライブとかで、ファンの皆さんに「カワイイー!」とか「カッコいいよ!」って言われると、どんどんテンションが上がっていく(笑)。お手紙で「私たち(=ファン)のそういう声(=声援)で、どんどん七海さんのテンションが上がっていく姿を見て、褒められれば伸びるタイプなんですね」ってお言葉をいただいて(一同大爆笑)。
──ファンの皆さん、めっちゃ分析してますね(笑)。
七海ひろき:皆さん、私より私のことをよく知ってくれています。ライブやイベントって、例えば舞台観劇よりも、お客さんにとって自由度が高いんです。舞台観劇中に、突然「カッコいい!」とか叫べないですよね(笑)ライブの方が、コールアンドレスポンスが、圧倒的に多いんです。
皆さんが盛り上がってくれていることに、私自身が、どんどん盛り上がっていって、それをみなさんも感じてくださって、その一体感がとても楽しいです。
──では最後に。ファンの皆さんにメッセージをお願い致します。
七海ひろき:1曲1曲、言葉や気持ちをすごく大切にしながら、作詞をしたので、聴いて楽しむのはもちろん、歌詞もゆっくり読みながら聴いてもらえたらと思います。そして、このアルバムを聴いてくださった方が少しでも笑顔になれたらいいなと思っています。11曲全て雰囲気の違う曲となっているので、何度でも聴いて楽しんで貰えたら嬉しいです。
TEXT 伊藤 亜希
PHOTO 片山拓
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