恋の苦しみから始まる「裸の心」
あいみょんの10枚目のシングル『裸の心』は、多部未華子主演のドラマ『私の家政夫ナギサさん』の主題歌です。
実は、この曲はドラマのために書き下ろされた曲ではなく、あいみょんが2017年に既に作っていた曲。
200曲ものストックを持つと言われるあいみょんの才能をうかがわせるエピソードですよね。さっそく歌詞の内容を見ていきましょう。
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いったいこのままいつまで
1人でいるつもりだろう
だんだん自分を憎んだり
誰かを羨んだり
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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失恋してから、次の彼氏ができるまでの苦しい状況を思わせる冒頭です。
一人の時期が長くなると、彼氏のいる友人を羨んだり、恋人ができない自分はダメな人間じゃないかと自己嫌悪に陥ったりしてしまいますよね。
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いつかいつかと
言い聞かせながら
今日まで沢山愛してきた
そして今も
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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誰かを好きになった時“今度こそ自分にぴったりの人だ”と思っても、付き合っていくうちにお互いの違いを感じて別れてしまうケースは多々あるでしょう。
それで何度も傷ついてきたのに“いつかきっと運命の人に出会えるはず”と言い聞かせてまた恋をしている自分がいる。
こんな考えを頭に巡らせながら、眠れぬ夜を過ごした経験がある女性は多いのではないでしょうか。
苦しみを乗り越えて強くなる心
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バイバイ愛しの思い出と
私の夢見がちな憧れ
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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苦しみから始まったこの曲は、次に希望へと向かっていきます。
「愛しの思い出」とは、過去の恋愛の思い出ですよね。
そして「夢見がちな憧れ」とは、若い女の子なら誰しもが持つ”理想の恋”への憧れでしょう。
その二つに「バイバイ」すること、それは、過去ばかり見るのはやめて前を向くという意味ではないでしょうか。
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優しくなれたよ 少しね
強くもなれたみたい
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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過去にしがみつく事をやめた時、人は初めて前へと進み出します。
そしてその苦しみがあったからこそ以前より優しく強くなれる。
それが大人になるということですよね。
「裸の心」とはどんな心?
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どんな未来も
受け止めてきたの
今まで沢山夜を越えた
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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いくつもの恋愛の結末を受け止めるうちに、心を覆っていたプライドというバリアも壊され「裸」になってしまった心。
そのむき出しになってしまった「裸の心」こそ「ありのままの自分」なのではないでしょうか。
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この恋の行く先なんて
分からない 分からない
ただ想いを
今、私 伝えに行くから
裸の心 受けとめて
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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敏感な「裸の心」は、やはり次の恋を恐れてしまいます。
しかし、本当に自分を愛してくれる人とは、良い面と悪い面の両方を含めた自分の全てを受けとめてくれる人ですよね。
飾らない「裸の心」で想いを伝えればきっと受け止めてくれるよと、あいみょんは伝えようとしているのかも知れません。
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この恋が実りますように
少しだけ少しだけ
そう思わせて
≪裸の心 歌詞より抜粋≫
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『裸の心』は、あいみょん自身が自宅で撮影した映像を使用したshort movieも話題になっています。
このMVの中でネイルを塗ったりメイクをしたりしているあいみょん。
ゆったりとした曲調の『裸の心』は、そんな日常生活の中で何気なく口ずさめる曲ですよね。
そして「この恋が実りますように」と何度も口ずさむうちに、恋に悩む女の子たちをそっと勇気付けてくれる曲ではないでしょうか。
進化が止まらないあいみょんの音楽
『裸の心』の歌詞には、若者から大人へと成長しつつあるあいみょん自身の姿が投影されているような気がします。あいみょんが同世代から支持される理由は、彼女が自分たちと同じように悩み、成長している姿を楽曲の中に見い出せるからでしょう。
そして、そのシンプルでストレートな言葉は、若者だけでなく大人の心にも響くのではないでしょうか。
『裸の心』の、どこか昭和のフォークソングの雰囲気漂う曲調や、骨太な歌声に心を掴まれる大人も多いような気がします。
また『君はロックを聴かない』の「誇りまみれドーナツ盤には あの日の夢が踊る」という歌詞には、アナログレコード世代の人々はグッとくるでしょう。
その感性は、音響のお仕事をしているお父さんや、歌手を目指していたというおばあさんの影響かも知れません。
日本の歌謡曲やフォークソングの遺伝子を受け継ぐ若いあいみょん。
この先どんなアーティストに進化して行くのか目が離せませんね。
TEXT 岡倉綾子