様々な音楽に触れてきたあいみょん
幼い頃から「浜田省吾」や「小沢健二」などの音楽を聴いて育ってきたというあいみょんの楽曲には、簡単な言葉でありながらもストーリーを感じられるものが多い。
2017年にリリースされたシングル『君はロックを聴かない』もそのうちの1つだ。
君はロックを聴かない
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少し寂しそうな君に
こんな歌を聴かせよう
手を叩く合図
雑なサプライズ
僕なりの精一杯
≪君はロックを聴かない 歌詞より抜粋≫
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ロックを聴いてきた “僕”とロックを聴いてこなかった “君”で楽曲の物語が描かれている。僕が元気のない君にロックを聴かせようとするところから始まる。
「僕なりの精一杯」という表現からもサプライズに慣れていない不器用な僕の人柄が伝わってくる。そして君を元気づけるため、精一杯必死に音楽を再生させる。
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埃まみれドーナツ盤には
あの日の夢が踊る
真面目に針を落とす
息を止めすぎたぜ
さあ腰を下ろしてよ
≪君はロックを聴かない 歌詞より抜粋≫
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緊張感が鮮明に描かれている。昔から聴いていた音楽を1人で再生する時には胸が高鳴るが人に勧めるときはどうだろう。
相手の事を思えば思うほど“この曲で本当に元気になってくれるのか”“僕が今まで聴いてきた音楽についてどう思うのだろう”といった心情になるだろう。
“真面目に針をおとす息をとめすぎたぜ”という歌詞からは、僕が不器用ながらも君のことを大切に思い愛していることがよく伝わる。
ロックを聴かせることの意味
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僕の心臓のBPMは
190になったぞ
君は気づくのかい?
なぜ今笑うんだい?
嘘みたいに泳ぐ目
≪君はロックを聴かない 歌詞より抜粋≫
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そしてそんな君は、僕が緊張を隠そうとしていることすらも見抜いている。お互いの事を分かっている2人だけど音楽のルーツはまったく違う。
自分のルーツになる青春時代の音楽には思い出がたくさん込められている。夢を抱いた日々や、挫折に苦しんだ時、そんな時に寄り添ってくれた音楽達だ。今の僕を作ってくれているといっても過言ではないのだろう。
だからこそ君に音楽を聴かせるということは、大好きな人にまだ未熟だった頃の僕を知ってもらう事でもあるのだ。ただ音楽を聴かせて、さみしそうな君を慰めたいだけではなく“僕がロックを聴いてきた日々のこと”もっと知って近づいて欲しかった。
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僕を助けてくれたロック
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ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
また胸が痛いんだ
≪君はロックを聴かない 歌詞より抜粋≫
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僕がロックを聴いてきた日々はどのようなものだったのだろうか。「僕はこんな歌であんな歌で恋を乗りこえてきた」というように片想いの人を想いながら聴いていた時もあっただろう。
不器用な僕のまっすぐな思いをストレートに歌っているのが“ロック”であったのだ。だからロックは過去の僕を助けてくれた存在でもある。
また「君はロックなんか聴かない」と思う理由の1つとして、恋人である君への“憧れ”も感じられる。
僕から見える君はまるでロックの世界観とはかさならないところで生きてきた美しい人。それに比べてロック“なんか”を聴かないと恋も乗りこえられなかった不器用だった僕。そして大人になった今でも「まだ胸が痛い」のは君に恋をしつづけているからだろう。
本当はロックを通して “過去の僕”だけではなく“君を思っている今の僕”のことも知って欲しかったのだ。
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TEXT 松原千紘