1番高いテンションで
──楽曲の話に戻りますね。完成した曲を実際に歌ってみてどうでしたか?
鍵本輝:難しかったですね。こう……自分たちには、こういう引き出しが無かったから。
──いやいやいやいや、そこは……ブラックミュージックをルーツにした歌い方とまったく違いますからね。引き出しが無かったっていうより、未知との遭遇に近い(笑)。
鍵本輝(笑)。本当、リズムをとるのが難しかったり。どう跳ねさせて歌おう、とか。跳ねてるリズム自体は、これまでも何度も歌ってきたけど、ここまでロックだったことは無かったんですよね。それで、ギターのサウンドに負けない自分の声色ってなんだろうなとか考えたりしましたね。それから、これまでは、小節きっちりしてA型のように歌って来たんですけど、あえて大雑把にしちゃった方がいいのかな、と。フレーズの最後を投げて終わるとか、音符にしないとか。そういうギミックで、ロックっぽさを出していこうって思って歌いました。
──あぁ、わざと、語尾を放り投げるみたいなニュアンスですよね。
鍵本輝:そうですね。
──敬多さんは、どうでした?
古屋敬多:ディレクターさんによって、歌録りのスタイルがあるんで、それによって録り方が変わるんですけど、今回の『Tuxedo~タキシード~』のディレクターさんは、パートを決めずに、最初、全部通して歌を録るんです。それでパートを決めていくってスタイル。あとは、今回のレコーディングはやっぱり……ソーシャルディスタンスも気にしましたよね。いつもだったら、メンバーいるし、いろんなスタッフもいるけど、それを最小限にして。いつもは1日でワーッと(歌を)録るんですけど、それを1人1日ずつにしたり。
──歌っている時のテンションの持って行き方は?
古屋敬多:あぁ、それはこれまでと違いましたね。自分の中で1番テンションの高い状態を維持して歌ったというか。この曲は、テンションが1番大事だなと思いました。歌詞に出て来る「プロム」とか、外国の文化だし、経験ないけど、そういうのをイメージしながら、テンションを高めていってっていう(笑)。本当に映画で観たくらいなんですけど、そのワクワクを想像しながら歌いました。
「恋は盲目」普段は使わない
──なるほど。『Tuxedo~タキシード~』は、米国の50年代半ば~60年代初頭の若者カルチャーがシチュエーションですもんね。だから歌詞が、相当ヤバいというか(笑)。例えば「休日のカフェテリアでポテトと夢 シェアしあった」ってフレーズには、50年代、80年代、2010年代の言葉が入っていると思うんです。個人的に、すご過ぎるって思いながらも、わけかわらんって思っちゃって。このワンフレーズ、きちゃってますもん(笑)。3人:はははははは(笑)。
──いい意味でいっちゃってんなぁっていう衝撃度が半端ない。
谷内伸也:ヤバいですよね(笑)。
──そういう言葉をLeadさんが歌っているのも新鮮です。伸也さんのラップ詞に「恋は盲目」とか、普段は絶対に出て来ないじゃんと思いましたし。
谷内伸也:普段は使わないですよ(笑)。でも、この歌詞だからですよね。ラップパート以外は歌詞が出来あがっていた中で、この世界観をどうにか自分なりに解釈して。そしたら「恋は盲目」とか使っちゃいましたね(一同笑)。もう、おかしいじゃないですか、このテンション。ファンタジーですもん。ファンタジーだからいいんですけど、もう、そのテンションを拾っていくしかないっていうね(笑)。
──はははははは。
谷内伸也:遊び心をどれだけ効かせられるかとか、どれだけメッセージを出せるかとか……っていうより、もう元々ある歌詞の方向に振り切るしかなかった。それしか無かったから、そこを今度はどれだけ楽しく演じられるかって感じなんですよね。
──確かに。じゃあ皆さんの中で、歌詞からイメージを膨らまして主人公の人物像を作っていった?
古屋敬多:そうですね。好きな子とプロムに行くって、学生時代の1番楽しみな瞬間だろうなって。だから初めて買ったタキシードで決めていく、みたいな。絶対に楽しいやろ。
──今回、ユニゾンで歌う部分も多いですよね。
鍵本輝:多いですね。
──贅沢だなと思いながら聴いていました。
鍵本輝:この曲に登場する主人公を含め、フラットに楽しんでいる様子をユニゾンで表現しているのかなと思ってるんですよね。
今ならプリウス?
──では、それぞれ、1番、ヤバいなと思ったフレーズを教えてください。
谷内伸也:「ガブリオレで迎えに行く」ですね。あら、ガブリオレで迎えに行っちゃったのか、これヤバいでしょ。
──ガブリオレ高級車だし。自分のじゃないなと(笑)。
谷内伸也:そうなんですよ。たぶん、親父のかなとか考えて。もうね、この歌詞は、入口からヤバい。でもガブリオレが当時のポピュラーなんやったんやろな。
鍵本輝:そうだよね。時代背景をしっかり出したいから、ガブリオレなんだと思う。今やったら、プリウスで迎えに行くかもね(一同笑)。
谷内伸也:プリウスで迎えに行くんやったらだいぶ変わってくるな(笑)。
鍵本輝:環境に優しい感じに(笑)。
──輝さんはどうです?
鍵本輝:「月光を君に羽織らせたい」とか、すごいですよね。
古屋敬多:そこ、すごいよね。僕もヤバいと思った(笑)。
──そこは、同じく、相当ヤバいと思いました。わけわかんないけど、語感もいいし、ロマンチック。それが当時のムードだったのかなって想像できる。
谷内伸也:それに年齢制限が下がってますからね、この曲。そこをどう演じていくかが課題かも(笑)。
──この曲は、コーラス部分も多いですけど、コールアンドレスポンスに繋がるような構成になっていますね。観客との掛け合いが目に浮かんできます。
古屋敬多:確かに。みんな、歌ってくれたら嬉しいですね。
──ファンの方々がどう受け止めて、どう成長してって、どうライブチューンになっていくのか、すごく楽しみ。
鍵本輝:確かにそうですよね。ライブで育てて、もっと完成させていきたい曲ですね。
2020年とリンクする曲
──「Wild Fight」については?
鍵本輝:この曲は、シングルとしてリリースしようというところから、制作がスタートしたんです。だから、今回の作品の中では、1番最初にレコーディングされた曲。この曲は、じつは4月には完成形が上がって来ていたんですね。でも、世の中が一変して自粛期間に入る中、リリースは不透明だったし、しばらくは、いつレコーディングしようかって感じだったんですよね。
──歌詞の内容が、本当に今というか、2020年の状況とリンクするなと思ったんですよね。
谷内伸也:僕もめっちゃ思いました。
鍵本輝:本当にそうだと思います。shungo.さんが、本当に調べに調べて書いてくれたんだろうな、と。shungo.さん自体が、アーティストに寄り添って歌詞を書いてくださる方なので、すごくLeadのことを調べてくださったんだろうなと思うんです。メンバーのなんでもないSNSの発信とかからワードをチョイスして、歌詞に落とし込んでくれてたのかな、と。だいぶ自分たちの言葉として言いやすいフレーズがたくさんありましたから。自分達でそれを歌って、再確認する部分もたりしましたね。
──例えば、どの部分?
鍵本輝:「ライバルや後輩に 追い抜かされたって」とか。実際、めちゃくちゃ経験してきていることですし。「将来とか語り合い 今があの日の未来」とか、18年やってきたからこその言葉かなって。あの時語り合っていた未来が今になっているかどうかは置いといたとしても、18年間活動してきたからこそ、今があるって思っているので。そういう中で、自分達でも「もういっちょ、ギアを入れなおして頑張ろう」って思える歌詞なんですよね。
──わかりました。ちょっとシビアな話になるんですけど、この2020年は、世界中の人にとって忘れられない1年になると思うんですね。エンターティメントを届ける人間として、今、それぞれが思っていることを教えてください。
鍵本輝:もちろん、ライブ再開が最終目標ではあるんですけど、楽曲をアウトプットしていくプラットフォームがたくさんある中で、まずはそこをうまく活用していくべきだなと思っています。そうやって、しっかり届けていくっていうこと、それを続けることが大事だと思いました。届けられたら方法は何でもいいってマインドに切り替えられた部分もあるっていうか。そういう切り替え方を覚えたことは、個人的にはすごく良かったと思っているんです。元々、ストリーミング系は自分も好きで使っているんですけど、そこにも、ちゃんとタネをまいていかないとっていうマインドに切り替わりました。
谷内伸也:僕らの場合、CDじゃないにしても、テレビでレギュラー番組が始まったりとか、何とかこう……発信の場があったのが、ありがたかったと思いますね。あとは、次のリリースタイミングや、ライブが出来るタイミングか来たら、ちゃんとアウトプット出来るように、勉強の時間だったというか。なんかまぁ、1人で籠って作ったりとか、意識してルーツを掘る時間を作ったりとか、本を読む時間を作ったりとか。自発的に勉強する時間を作って、次に動く時に生かそうと思って過ごしていましたね。
古屋敬多: このシングルも初めは本当に予定どおり出せるのか、みたいな感じだったんですよね。でも出せることになって、皆さんに届けられて本当に嬉しいです。ただ、まだリリースイベントとか握手会とかは出来ないだろうなと。ファンの方たちに直接会えない、触れ合うことが出来ないって言うのは、やっぱり寂しいし、ファンの気持ちを考えるとこう……やるせないっていうか、申し訳ないっていうか、すごく複雑な気持ちもあるんです。でも、新たなチャレンジも出来たりしていて。例えば、今回のシングルに関しては、リモートでサイン会をやったりとか。生電話とかもあったりとか。直接、触れられなくても、出来ることをやって、繋がり続けることが大事なのかな、と。まだまだ、メンバーみんなで模索中ではあるんですけどね。
谷内伸也:今回のシングルも、初めて、リリース前にストリーミング配信をしたんです。こういう新しいチャレンジは今後、増えていくと思うんですけど、その度きっと、ファンのみんなはどう思ったのかなっていう。やっぱり気になるところではありますよね。
皆さんを楽しませたい
──では、ファンの皆さんが、今、1番気になっているところに触れる質問を。今後の具体的な予定は?
鍵本輝:10月にオンライン形式でライブをやります。
──あぁ、今の質問をして良かったです。
鍵本輝:あまり詳しいことは、まだ言えないですけどね。これまでトークが絡んだりする生配信は、何回かやってきたんですけど、がっつりライブを生配信でやりますっていうのは初めてなので、どうしようかなと思っています。皆さん、画面で観てくれるわけじゃないですか、そこをどうやって飽きさせずに観てもらえるには、どうしたらいいのかな、と。とにかく考えていくしか無いかなと思っています。
谷内伸也:いろいろ話している中で、ライブ映像を先に録って、映像を作り込んで配信するのと、リアルで配信するのと、そんなに大差ないんじゃないか?って話も出て来たんです。でも、ライブ空間の空気感すべてを届けることは出来ないだろうけど、今リアルでやっているのを観てるっていうのが、観ている人にとっては大事なのかなと思ったんですよね。
──何回かライブ配信をリアルで観たんですけど、じつはコメント欄がすごく良くて。例えば、スルーハンズで盛り上がったりする曲では、コメント欄が手の絵文字で埋め尽くされたりするんですよね。こういう形で繋がりを感じて、感情を表現することも出来るのかと思って。
鍵本輝:あぁ、そうなんですね。いいですよね。ライブを見ながら、自分の気持ちを文字にしたり、コメントしたりすることってないじゃないですか。
──そうなんですよね。観ていて、毎回、かなりグッときますから。無料での配信ライブとかだと、途中から視聴者をもっと増やそう、みたいな空気になってきて、視聴者がリツイートしまくるとかね。応援の仕方って、いろいろあるんだな。音楽があれば繋がることが出来るんだなっていうことを、最近、すごく強く感じています。
古屋敬多:コメントとかも、後ろとかにドーンと出せたら面白いかもしれないですよね。
──でも、3人とも、見入っちゃうんじゃないですか?
3人:確かに(笑)。
古屋敬多:ある曲だけ、めっちゃ、アンチのコメント多かったりして(笑)。
谷内伸也:チケット買って、アンチのコメント? もはやファンじゃん(笑)。
鍵本輝:今予定している場所が、ステージの後ろに大きなスクリーンがあるから、そういうことも出来るかもしれないですね。まだ全然、内容の話もしてないから、本当にわからないんですけど。
──あと、もし無観客・ライブ配信なら、客席をサブステージみたいに使ったりも出来る。
谷内伸也:僕らもそういうこと考えてて。ステージ以外も使えるかなとか。客席もステージに出来るかなとか。
鍵本輝:そこも含めて、考えに考え抜いて、皆さんを楽しませるものにしたいなと思っています。
TEXT 伊藤亜希