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【インタビュー】SUPER BEAVER、「今一度、自分たちにとっての宣言のような気持ち」 (2/2)


言葉にするならこれしかないと思った

──1曲目の「突破口」に関しては、これまでのSUPER BEAVERの道のりと重なったのですが、もう1曲の「自慢になりたい」は、かみしめるようなミディアムナンバーで。そして「自慢になりたい」というのは、これまでの道のりに自負があるからこそ、堂々といえる言葉だと感じました。


柳沢亮太:ようやく今、口にできたと言いますか。ずっとそういった気持ちはあったはずだし、間違いなくありましたし。4人で始めたバンドでありながらも、友だちやお客さんに「いいライブだったね」と言われるのが、やっぱりシンプルにうれしかったんですよ。

規模の大小ではなくて、自分たちが「バンドをやっていて良かったな」と思える瞬間をたどっていくと、やっぱり「自慢になりたい」みたいな気持ちはあるものだよな、とすごく思いますし。「言葉にするならこれしかない」と堂々と言えるようになっているのかなと、思うので。これもSUPER BEAVER の素直な気持ちが表れた1曲になったと思いますね。

上杉研太:やなぎ(柳沢)は毎度いい曲を作ってくれるんですけれど、自分たちは30代になって、だからこそ生み出された名曲というか、その深みを感じました。こういうミディアムテンポのバラードで自分たちも好きな曲というのは過去にも何曲かありますが、また新しい軸な気がしていて。

メッセージの根底はずっと同じことを歌っているのかもしれないんですけれど、毎度新しい発見があります。それは曲と音楽とともに、自分たちがいい意味で、年齢を重ねていっているから経験できることなのかな、と思っています。

▲SUPER BEAVER 「自慢になりたい」 MV

──重ねた年月があるからこそのナンバーですよね。もしかすると20代のバンドがこの曲を歌うと、ちょっと説得力がないかもしれません。

柳沢亮太:どうなんですかね(笑)。

渋谷龍太:それは自分たちの中でも、結構悩まされてきたところではあるんです。おそらく普通の30代が経験していることを経験している20代もいるはずなんですよ。だから本当は一概には言えないはずなんです。でも何かをくくったときに、人間はそのものが入っている器をまず見るから。20代ですでに経験していても、響きづらいことがあるのは、やっぱり事実。それを打開する術をずっと考えていましたね。

でも本当に難しいですよ。どうしようもならない部分というのは、正直あって。「何歳?」と聞かれて「25」と答えた時に、「はっっ」っていう反応になる、あの感覚というのは、やっぱりどうしてもぬぐい切れないし。知らず知らずのうちに、自分がやっている瞬間もあるんですよね。「あ、20代なんだ」みたいな。絶対そうじゃないはずなのに。


──確かに。

渋谷龍太:「どうすれば伝えられるだろう?」ともモヤモヤしていたというか。どうすれば伝えられるだろうって、本当はおかしいんですよね。本質的に持っているのなら、そのまま伝えればいい話なので。でもそのあたりの感覚は、今はなくなってきて。結構、やりやすくなっているなとは、正直思います。


──言われていることは、すごく分かります。私も最近10代で起業した大学生の話を聞いたときに、「え、その歳で?」と思ってしまったんですけれど、話を聞くと、彼は完全に普通の経営者の目線で語っていて、見ている世界が一般的な大学生とは違ったんですよね。

渋谷龍太:そうなんですよ。10代のころからバンドをやっていて、何かを伝えたいというメッセージが1つあった時に、「ああ、俺が30歳なら」と思った瞬間は、少なからずあったことは間違いないので。そのしがらみのようなものから、器としても、体裁としても、今は脱することができている。そういうものがとっぱらわれてるというのは、やりやすくなってきたし、素直に受け取ってもらいやすくなった感覚は、正直していますね。


──社会に生きていると、どうしても一般的な概念を超えるのは難しいですよね。

渋谷龍太:そういうものすら超越してくる、図抜けた天才というのはいると思うんですけれど、自分がその類ではないことは、自覚はしていたので。等身大というか、「そのままの自分でどうしたらいいんだろう?」といったことは、ずっと考えていましたね。今でも頭の片隅にはあるんですけれど。


──話がちょっと横道にそれるんですけど、藤原さんは渋谷さんから、「あなたは何歳なんですか?」と言われてきましたよね。藤原さんから見て、今の話はどう思いますか。


藤原”32才”広明:だから、ぶーやん(渋谷)の思っている説得力は、ずっと顔面で持っていますから。

(一同爆笑)

渋谷龍太:そう、俺が超えられなかった壁を、彼は学生の頃から超えていた(笑)。

柳沢亮太:でもある意味、そうだよね。初見で舐められない、みたいな。

藤原”32才”広明:だから、歳のことでそういったことを実体験として感じたことは、あまりないかもしれないです。

渋谷龍太:達観していらっしゃる(笑)。


──ある意味、本質なんですね。

渋谷龍太:もとからどっしりしていたと、見た目が伴うと、ということなんでしょうね(笑)。


──話が横道にそれてしまってごめんなさい(笑)。改めて「自慢になりたい」は、みんなが実は心の奥で思っていることを描いた楽曲で、それを今のSUPER BEAVERが表現するから、なおさら心に響く気がします。

柳沢亮太:だからこそ「僕らのこの年(30代)にならないと分からないよ」ではなくて、たとえば10代や20代の方が聞いてくださった時に、「いつかはそう思うのかな」というよりも、「今まで言葉にできなかったけれど、これだ!」という気づきのようなものになってくれたら、うれしいです。

歌詞からドラムのイメージを広げる

──UtaTenでは、楽曲の中でお気に入りのフレーズを伺っているのですが、皆さん、それぞれ歌詞のどの部分に注目していますか?


上杉研太:「自慢になりたい」の<終わらせないために 終わらせるよ>というのが好きです。2番の<終わらせないために 終わらせたろう?>もいいんですけれど。要は生きていると、1つのストーリーだけじゃない。いろいろなストーリーがあって、1つは終わるかもしれないけど、もう一つのストーリーは始まるかもしれない。

人から見たら「やめた」と思われて、「逃げた」と言われているかもしれないけれど、もう一つのストーリーでは、またそこから始まっていたり、そこはそこで幸せになってるかもしれない。だからこの言葉は、自分的にぐっとくるものがありました。



柳沢亮太:難しいですけど、「突破口」の<もう前例になるよ>というワードかな。これは非常に SUPER BEAVERを意識して書いたワードでもあるので、今一度、自分たちにとっての宣言のような気持ちもありますし。「自慢になりたい」という楽曲の対になる気持ちのような気もするんですけれど。

今までやってきたことで、SUPER BEAVERがSUPER BEAVERなりに提示してこれたもの、それゆえに受け入れてくださったこと。そういったものを全部背負いたいなと思う気持ちも含めて、これまで突破してきた先に今があって、さらにこの先を見据えた時に、今の自分たちが出せた言葉がこれであるというのは、すごく未来が見えると思うので、この言葉はキーになるワンワードかな、と思いますね。



渋谷龍太:これ、選ばなきゃいけないんですよね? なしはアリでしょうか?


──なしでも大丈夫ですが、ぜひその思いについても教えていただけますか?

渋谷龍太:「特定させたくない」というのは、どこに思い入れがあるというのを言い放って
しまうと、そこが気になってしまうかもしれないので。決して、そこだけに注目してほしいわけではないので、発信者としては選べない、というのが正直なところですね。


──なるほど、すごく納得しました。

藤原”32才”広明:それを言った後に選ぶの?

(一同爆笑)


──申し訳ないです(苦笑)。

渋谷龍太:俺は歌を歌うからね。

柳沢亮太:そうだね、やっぱりボーカルとして口に出すからね。

藤原”32才”広明:じゃあ、選びますね。僕はアレンジを考える時、イメージをふくらませるために、よく歌詞にとっかかりを探すんです。「突破口」には<正面突破がしたいな>という歌詞があるんですけど、この歌詞を最初読んだ時に、スネアで突撃していくイメージが浮かんで。だったら転がるようなリズムがいいのかな、疾走感が大事なのかなと、どんどん曲のアレンジを広げていきました。そういう意味では、「突破口」の<正面突破がしたいな>が自分の中に飛び込んできた言葉ですね。


──まさにドラマー目線の素敵なセレクトですね。

柳沢亮太:ですね。いいコメントでしたよ!

藤原”32才”広明:良かった(笑)!


本質的なことから考え直す機会だった

──コロナ禍においてライブが中止、延期になってしまう状況が続いています。そんな中、SUPER BEAVERはチケットの払い戻しを希望されない方には、「特別ツアーTシャツ」「配信ライブ視聴券(限定ライブ)」をお送りするなど、いろいろなアイデアで対応していっています。こういったところにも、リスナーに寄り添う皆さんの姿勢がにじみ出ていると感じるのですが。


上杉研太:単純にバンドで今やれること、出せるカードを切っていくことをずっとやってきたので。もちろん、今まで当たり前でできたことができなくなってしまって困惑はしますけれども、その中でも、こうやってメジャーデビューをまた契約できたので、できることもうれしいことにありますし。SUPER BEAVER が普段やってきた熱量を、この状況の中でもどうやったら届けられるのかということも話して、みんなで決めてやっているんです。

でも今、世の中はこんな感じになってしまっていますけれど、思い起こせば、自分たち4人でバンドをずっと切り盛りしてた時から、同じことをやっているというか。こういう逆境があってこそ、バンドなんじゃないかなと思うんです。

登れなさそうな山を登れた時って、みんなでハイタッチしたくなるというか。はからずも、そういうことを繰り返していけているので、ネガティブだけじゃなくて、これが結構、馬力になって、バンドの今後につながっていくんじゃないかな、という気持ちで捉えていて。いろいろアイデアを出して、何より楽しんでやれたら、と思っています。


──払い戻しは参加する人間からすると、一番もやもやするところではあったので、その思いを汲み取られているんだな、と感じました。

渋谷龍太:そもそもこれらのアイデアが出てきたのは、自分もたくさんライブに行っていたからだと思うんです。自分がチケットを取って、お金がそのチケットに変更した時点で、お金以上のスペシャルに変わっていますよね。そのスペシャルに変わったものが、次にまたお金に戻るのかといったら、そんなわけはなくて。3000円で買ったそのドキドキワクワクは、そのドキドキワクワクを買い戻す時に、3000円で買えるわけはないとは、正直思っているんですよね。


──まさに、そうなんですよね。


渋谷龍太:それをさんざん経験してきて、さらにこういう状況になった時に、「なぜ自分たちがステージに立つのか」とか、「なぜライブをするのか」というのを、本質で考えなきゃいけないな、と思い始めてきたんです。

最初にやった配信ライブにしても、配信ライブはみんなが始めていて、別に珍しいものではないし、こういう選択肢があることも、みんな知っていた状態で。なおかつ、配信ライブをやるにあたって、ただやるだけでは絶対にダメだと思って。

なぜ自分たちがライブをやっているのかということまで考えると、今までやってたオンステージの布陣のままで配信ライブを届けるのは、自分の中でめちゃくちゃ不自然で。誰も見てない状態だったら、4人が同じ方向を向いてやる形には絶対にならないはず。

そもそも人がいない状態で発生したものであったのなら、どういうことが自然なんだろうと考えたら、やはり内に向いているのが自然だと思ったんです。配信で見てくださっている方がいるのは当然分かったうえでなんですけれど、その場に人がいないことを考えると、4人が同じ方向を向いて演奏をするのは、すごく気持ちの悪いことだなと思って。だったら最初はあるべき形を取るのが自然だし、おそらく向き合った方が一番伝わるんじゃないかなと逆に思ったんです。

それからアコースティックの配信というのも、そのスペシャリティというのを、「じゃあお金を返します。はい、おしまい」というふうにはしたくなかったという部分で考えて。


──なるほど。

渋谷龍太:今回のことは、何でチケットを買うのかとか、何故この陣形を取ってライブやるのかとか、すごく本質的なことから考え直す良い機会になったなと思っています。だからやっている行動は同じでも、バンドの本質はかなり出るなと思っていて。どれだけそれを考えているのか、いかにそれを大事に思っていたのかというのは、嫌な言い方をすると、たぶんバレると思うので。


──それはやはり伝わるものですよね。

渋谷龍太:だから、自分たちが考えてできる最善の選択をしていかないと、バンドとしてどうなんだろうと思って。アイデアもそんなにない中ではありますが、これは僕らの精一杯の行動なんです。



TEXT キャベトンコ
PHOTO 片山拓

SUPER BEAVER(スーパービーバー)。 渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“35才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成された。 2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビュー。 2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、···

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