大人気アニメ「鬼滅の刃」の神回を彩った挿入歌
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『鬼滅の刃』は、2016年から2020年まで『週刊少年ジャンプ』に連載されていた亜峠呼世晴の漫画です。
2019年にアニメ化され、「オリコン年間コミックランキング2019」で第1位を獲得。
単行本累計発行部数1億部を突破するなど国民的な人気を誇っています。
物語の舞台は大正時代。
主人公の竈門炭治郎は、亡き父の代わりに家族を支える6人兄弟の長男。
ある日鬼の急襲によって家族を失い、妹を鬼にされてしまいます。
妹を人間に戻すため、炭治郎が強大な力を持つ鬼達と戦い続けるアクション作品です。
そんな大人気アニメ『鬼滅の刃』ですが、兄妹の絆で奇跡の逆転劇を生み出した第19話は、ファンの間で神回と呼ばれるほど感動を呼びました。
その回で視聴者の涙を誘った挿入歌が『竈門炭治郎のうた』です。
作曲は音楽家の椎名豪が手掛け、声優であり歌手の中川奈美が芯のある優しい歌声で歌っています。
この楽曲を聴けば、『鬼滅の刃』のストーリーだけでなく、主人公の人柄や強い信念を感じ取ることができます。
早速歌詞を読み解いていきましょう。
戻らない幸せな日々と忘れられない惨劇
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目を閉じて 思い出す
過ぎ去りし あの頃の
戻れない 帰れない
広がった 深い闇
戻れない 帰れない
広がった 深い闇
≪竈門炭治郎のうた 歌詞より抜粋≫
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切なさが漂うメロディーに乗せて歌われている「過ぎ去りしあの頃」「戻りたい帰れない 広がった暗い闇」から、家族を鬼から救えなかった後悔や悲しみが感じ取れます。
目を閉じると思い出すほど、炭治郎にとって家族と過ごした日々が何よりも大切だったのです。
しかしそれは鬼によって奪われた過去であり、戻ることは出来ません。
心の支えである家族を失った時、炭治郎の心に絶望感を与え、命尽きる前に家族の感じた痛みがきっと「闇」のように広がったのでしょう。
「戻りたい帰れない 広がった暗い闇」は少し間を空けて、繰り返し歌われています。
家族を救えなかった悲しい記憶は、長い時間が経っても消えないでしょう。
しかし、彼は強くなって仇を倒し、鬼になった妹を人間に戻すと決意します。
その決意を決して忘れないために、繰り返し歌われているのかもしれません。
優しさと決意を秘めた剣士・竈門炭次郎の原点が歌われているといっても過言ではないでしょう。
人を思いやる気持ちと最後まで諦めない強さ
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泣きたくなるような 優しい音
どんなに苦しくても
前へ 前へ 進め 絶望断ち
≪竈門炭治郎のうた 歌詞より抜粋≫
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この部分は、サビへと少しずつ盛り上げていくように伸びやかに歌われています。
炭治郎は鬼が人間だった頃の悲しみや、鬼としての苦悩を理解しようとする優しい心の持ち主です。
「泣きたくなるような優しい音」とは、どんな相手も思いやり、命を懸けて大切な妹を守り通す炭治郎を巧みに捉えた言葉といっていいでしょう。
また、炭治郎は「どんなに苦しくても前へ前へ進め」と歌われるように、戦闘で負傷しても、戦況が苦しくなろうとも傷の痛みや辛さに挫けません。
犠牲者を出さないために、誰かが自分と同じ絶望感を抱くことのないように、鬼と戦い続ける炭治郎。
自分よりも他人を思いやり、どんなに苦しくても諦めない強くて優しい炭治郎を表す歌詞ですね。
どんなに打ちのめされても守り抜く
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失っても 失っても 生きていくしかない
どんなにうちのめされても 守るものがある
≪竈門炭治郎のうた 歌詞より抜粋≫
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サビでは、この楽曲の中で一番熱い想いが力強く歌われています。
「失っても失っても生きていくしかない どんなに打ちのめされても」は、アニメの中で婚約者を鬼に殺されて絶望した青年に炭治郎がかけた言葉です。
理不尽な現実は変えられない。
絶望せずに次の一歩を踏み出すことが運命だと伝えているのでしょう。
家族の死と運命を正面から受け入れ、力の限りを尽くして戦う炭治郎達には、生き方を学ばされます。
妹を人間に戻すと決めた以上、死ぬわけにはいかない炭治郎。
「どんなに打ちのめされても 守るものがある」からは、鬼から妹を守り抜く強い信念が感じ取れます。
また、このサビが繰り返し歌われることで彼の信念に曇りも揺らぎもないことが伝わってくるでしょう。
戦い続けるしか道はない
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我に課す 一択の
運命と 覚悟する
泥を舐め 足掻いても
目に見えぬ 細い糸
≪竈門炭治郎のうた 歌詞より抜粋≫
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「我に課す一択の運命」という歌詞から、炭治郎には逃げ場がなく進むべき道は一つしかないことが分かります。
炭治郎は、妹を人間に戻す方法を見つけるために、家族の仇である鬼やその部下の鬼達と戦うしか道はありません。
「泥を舐め足掻いても」から、彼の日常は辛く険しいものであり、逆境の中で鬼と戦っていると想像できます。
「目に見えぬ細い糸」と歌われるように、勝てる可能性はごくわずかかもしれません。
強敵に叩きのめされそうになっても、必死に食らいつき、自分を奮い立たせながら戦っているのです。
全ては妹のために、炭治郎は覚悟を決めて歩み続けていくのでしょう。
悔しさをエネルギーに変えて
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泣きたくなるような 優しい音
どんなに悔しくても
前へ 前へ 向かえ 絶望断ち
≪竈門炭治郎のうた 歌詞より抜粋≫
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「どんなに悔しくても 前へ 前へ 向かえ 絶望断ち」から、悔しい場面でも諦めない姿勢が感じ取れます。
新たな技を習得しても、仲間と連携しても一筋縄では倒せない敵。
歴戦の剣士でさえも鬼に破れてしまう絶望的な出来事を経験し、炭治郎は悔しさを募らせるのです。
悔しいという気持ちが強いのは、それだけ本気で挑んできたから
しかし、弱い自分を変えるためには、悔しさを前に進むエネルギーに変えて、努力を重ねるしか道はありません。
聴き手が大きな壁にぶつかった時に、どう行動したらいいかを教えてくれているようですね。
どうにもならない現実を強く生きる
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傷ついても 傷ついても 立ち上がるしかない
どんなにうちのめされても 守るものがある
守るものがある
≪竈門炭治郎のうた 歌詞より抜粋≫
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楽曲の最後まで炭治郎の信念に揺らぎはありません。
「傷ついても傷ついても」の歌詞から、苦しい状態に陥ろうとも何度でも立ち上がり、戦い続ける決心が感じ取れます。
そして「守るものがある」を繰り返すことで、自分のためでなく守るべき人々のために戦う意志が強調されていますね。
思いやりに溢れ、自分を奮い立たせながら困難に立ち向かう炭治郎。
そんな彼のひたむきな姿が徹底して表現されているからこそ、聴く人の心に響くのではないでしょうか。
不安に押しつぶされそうな現代の人々に、「泣きたくなるような優しい音」で優しく、時に強く心に語りかけてくれるのです。
この楽曲には、どうにもならない現実に直面した時に、強く生きていくための教えが詰まっています。
歌詞に綴られた優しさや揺るぎない強い意志が、あなたの心の支えや力になるでしょう。
TEXT Asakura Mika