「あたしヴァンパイア」が始まり
──ちなみに、『ヴァンパイア』っていう単語が思いついたのは、どういうきっかけなのでしょうか。DECO*27:僕、メモ帳に気になっている単語を書いたりすることが多いんですよ。あとはボイスメモで、なんとなく思いついたのを録ってたりしていて。
それで、メモ帳の方に「あたしヴァンパイア」っていう文字列が実はありまして…。
──えー!!すごい!そのワードが既に出来がってたんですね。
DECO*27:2年前ぐらいに書いていたんですよね。あと、ボイスメモで録っていたメロディーが、とても気に入っていて、これを何かに形にできないかなって思っていたので、その2つが組み合わさって、サビの「あたしヴァンパイア」から出来始めまして、タイトルもわかりやすく『ヴァンパイア』に決めました。
──てっきり怪物の「ヴァンパイア」がお好きで作られたのと思っていました(笑)
DECO*27:そんなことはないですね (笑)
──ちなみに、詞と曲はどちらが先にできたのでしょうか?
DECO*27:音が先ですね。僕、曲は全部音が先に、歌詞が最後なんです。
──アーティストさんって、皆さん曲が先のことが多いと思うんですが、曲が先で詞が後の方が作り方としては、やりやすいんでしょうか。
DECO*27:うーん、詞が先になってしまうと、僕の場合まとめられないんですよ。メロディーとか先に軽いアレンジがあると、パズルみたいにあてはめていけるんですよね。
──学生時代は、ノートで歌詞を書かれていたということですが、今はどういうもので歌詞を書かれていますか?
DECO*27:学世時代は、ファーストワードブックですね(笑)今は、Macで書いています。iPhoneでメモ取りすることはありますが、iPhoneで歌詞を書くことはないです。
──パソコンで書くことの良さはありますか。
DECO*27:僕の場合、音楽制作ソフト上でメロディーを流しながら歌詞を書くので、Macの方がやりやすいんです。ブラウザで単語を調べたり、調べに行った先で新しい言葉に出会うこともあるし。なので、作詞をするときはMacの前で書いていますね。
──時代も移り変わっているんですね…。
DECO*27:僕がノートに書いていた時代とは違いますからね(笑)
ヴァンパイアの連鎖を描く恋愛要素も
──ヴァンパイアって、人間の血液を吸う怪物として怖いイメージが古くから言い伝えられていますが、それをポップに可愛らしく表現させるのがDECO*27さんにしか描けないと思いました。私的な解釈になるのですが、歌詞全体を拝見した際に、小悪魔要素と可愛さもありつつ、現代社会の悪い空気を吸ってくれるような社会風刺というか、一石を投じる楽曲だなと感じましたが、そういった狙いはやはりあるのでしょうか。
DECO*27:実は僕、考察に対して答えを言わないようにしているんですよ。なので、全部正解です!!でも、小悪魔的なところは合っていて、可愛いミクが好きな人を噛んで、その人もヴァンパイアになって、それが連鎖していく恋愛的要素も入っています。
──すべてが正解なんですね!
DECO*27:そうです!でもどんな意味にでも取れるように余白を残して書いてはいるんです。これが答えですっていうのをなるべくわからないようしていて。
ニコニコ動画に投稿してから、DECO*27っていう名前で活動しているんですけど、曲を聴いて歌詞を見て、みんながコメントで“ここはこういう意味なんじゃないか?”って考察のやりとりをコミュニケーションとしてやってくれるんですよ。これは僕が子供のときにはしていなかった楽しみ方だなって思っているのと、それを見ているのが好きなので、だから答えを書かないようにしています。
──『ヴァンパイア』に出てくる主人公の一人称が「あたし」っていう女性目線なんですよね。ここは初音ミクちゃんが歌唱しているから女性目線なのでしょうか。
DECO*27:鋭いですね~!これめちゃくちゃ良い質問です。そのうち一人称の正体がわかると思います(笑)
──伏線があるんですか!?
DECO*27:お楽しみに(笑)
隠す美徳
──サビのヴァンパイアというフレーズで、語尾が上がると思うのですが、ここに中毒性がある!という風にファンの中でも話題です。ここを上げている意図が気になりました。
DECO*27:歌詞ってメロディーに沿って、口語で喋っている言葉をつけたほうが聴いている方が気持ちいいんですよ。だけどそこを外すことで違和感が残る。それを聴いているうちに人って慣れてしまうので、そこをあえて書いています。
──直接的な表現をしていないのに、DECO*27さんの歌詞は「あたしヴァンパイア いいの?吸っちゃっていいの?」のように色気のある歌詞が描かれています。こういったストレートではないけれど、そういう色気を出す描き方のテクニックはあるんでしょうか。
DECO*27:コツですか~!隠す美徳というか、恥じらいの美徳みたいな曝け出す感じじゃないのを書くことを大事にしています。例えば、恋愛とかであっけらかんとして、“好き”って来られるよりも、恥ずかしがりながら“好き”って言われる方がドキドキしたりするじゃないですか。
──確かに恥じらいがあった方が、魅力を感じちゃいますよね。その解釈とてもわかります。
DECO*27:そういうモジモジしている方が、本当の事を知りたくなったりもすると思うし、惹かれちゃうんですよね。
──そういう恥じらいさが見える歌詞を書くことに関して、ご自身の経験が反映されているのか、もしくは映画やドラマ、小説などの作品を見てなのか、どちらになるのでしょうか。
DECO*27:僕、歌詞が浮かぶときは、友達とか知り合いと話をしているワードを拾っていくんですよ。漫画とか映画を見てから書くこともありますが、『ヴァンパイア』は、ミクがこう歌っていたら可愛いだろうなっていう事を考えていました。