Aimer『朝が来る』が『鬼滅の刃』遊郭編EDテーマに
Aimerの『残響散歌/朝が来る』が2022年1月12日にリリースされました。
『鬼滅の刃』という作品は、作品と同じくらいアーティストの存在感も強いのが特徴。
アニメ版『鬼滅の刃』立志編、無限列車編までのオープニングテーマ、エンディングテーマに加え、映画『鬼滅の刃 無限列車編』の主題歌『炎』など、数々の名曲によって存在感を示してきたLiSAの活躍を見ても明らかです。
そんな『鬼滅の刃』と縁が深いLiSAからバトンタッチし、遊郭編からはAimerが楽曲を担当。
テレビアニメ『鬼滅の刃』遊郭編は2021年12月に放送が開始され、非常に盛り上がっています。
煉獄杏寿郎の生き様や、別れを前にした悲しみなどを描いた無限列車編とは打って変わり、遊郭編は新たな敵との対峙や炭治郎の成長など、疾走感に溢れたスリリングでド派手な展開が見所。
ド派手といえば、炭治郎たちをリードする柱も、煉獄杏寿郎から音柱・宇髄天元へと変わります。
この宇髄天元は元忍びという反動から、とにかく派手好き。「ド派手」という言葉も好んで使っています。
作品の世界観も遊郭編からはとにかくド派手。
Aimerが歌う遊郭編OP『残響散歌』は、遊郭を舞台にした煌びやかな世界にハマっています。
表舞台の華やかさと鬼が暗躍する闇の世界との対比も見事。
遊郭編EDの『朝が来る』でもやはり、遊郭という舞台で繰り広げられる炭治郎たちの心のありようを歌い上げています。
作詞作曲はLiSAの『炎』『明け星』に引き続き梶浦由記。
『鬼滅の刃』の世界観を歌詞に表現するセンスは抜群で、最強の布陣といえます。
『残響散歌』が夜の遊郭を舞台にしているなら『朝が来る』はタイトルの通り、朝の遊郭を描いた歌。
疾走感のある『残響散歌』とは対照的な歌の世界を、歌詞の意味と共に考察していきます。
鬼のいない朝の遊郭を舞台に
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傷だらけの世界の頭上に
闇が重たくもたれかかって
覚めない時の中
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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炭治郎が味わった絶望のように、大切な人を奪われた悲しみは、明けることのない闇のように重くのしかかってくることでしょう。
それでも、必ず夜は明けます。
眠らない街・遊郭を舞台にしながら、あえて朝の遊郭を描いた『朝が来る』。
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悲しみは何処までも追いすがって
それでも空は夜明けを探して
取りに行く未来
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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「取りに行く未来」という言葉にも象徴されるように、希望とはやはり明るい方にあるものなのでしょう。
夜から朝に移り変わるように、いつか闇も晴れる。
そんな願いが込められたような歌詞です。
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僕らは弱くも儚くもないよ
信じて愛して燃え尽きて行く
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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鬼という存在の前に人はどこまでも無力で、為す術もなく奪われる存在です。
しかし、諦めさえしなければ、自ら未来を取りにいくこともできる。
「僕らは弱くも儚くもないよ」という歌詞からは、人間は決して弱いばかりではなく、どれだけ踏みにじられても前を向き、立ち上がれる存在なのだという、強い思いが伝わってきます。
煉獄杏寿郎が命を燃やして目の前の人を守り抜いたように、炭治郎が禰豆子を人間に戻すという目的の下、絶望の淵から立ち上がったように。
守りたい誰かのために、揺るぎない志のためならば、どれほど傷ついていても立ち上がることができるのも人間です。
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繰り返し 繰り返し
血を流すたましいが
夢を見るその先に
輝いて 輝いて
新しい朝が来る
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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絶望のその先に希望の光が差すように、朝というものは、痛みのその先にこそ輝いているものなのです。
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希望が棚引く方へ
君を呼んでいる黎明へ
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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煉獄杏寿郎は黎明に散りましたが、黎明は希望への導きでもある。
無限列車編からつながる物語が、『朝が来る』の歌詞の中にもしっかりと息づいていますね。
追い求めた先に訪れる「朝」という希望
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失うことで堕ちて行くか
それとも光を追いかけるか
選んで来た道に散らした
涙も傷も遠くなって
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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大切なものを失った時、そこから立ち直れずに堕ちていくか、志を胸に立ち上がれるか、それは人それぞれ違います。
前に進むきっかけが希望であれ恨みであれ、立ち上がった者にしか手に入れられない未来があります。
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息を殺し追憶の影に焼かれ
それでも鮮やかに風を切って
手に入れる未来
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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背負った過去の傷に心がえぐられそうな時もあるでしょう。
大きな傷を抱えた人にとって、かけがえのないものを失った瞬間の痛みは、呪いのように離れないものです。
何度もフラッシュバックして苦しめられるかもしれません。
それでも痛みに耐え、過去を振り払いながら突き進んだ先には、眩い未来が待っているのです。
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情熱がいつだって灯火になるよ
天高く上れと狼煙を上げて
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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煉獄杏寿郎が「心を燃やせ」という言葉を残したように、炭治郎は常に熱い思いを糧に苦難に立ち向かってきました。
無限列車編のOPである『明け星』でも、魂は常に明るい方へ導かれていたように、生きている限り、人は光を追い求めて前に進んでいくのでしょう。
「狼煙」という歌詞も元忍である宇髄天元を連想させます。
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夜のもう一つ向こうまで
どうしても届かない手のひらを
支えてくれる声が
いつの間に こんなに
響いてた
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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暗い空に太陽が昇り、夜から朝に変わる瞬間は、鬼にとっても鬼殺隊にとっても重要な時間帯です。
鬼殺隊から逃げ延びるか、鬼を倒しきれるかの瀬戸際。
「夜のもう一つ向こうまで」届きそうで届かない時間はもどかしいものです。
しかし、一人残された炭治郎は鬼殺隊に入り、仲間ができ強くなって鬼のボスである鬼舞辻無惨へと迫っていきます。
その過程で、数え切れないほどの人を救い、縁を結んできました。
炭治郎は決して一人ではなくなったのです。
鬼殺隊として戦えなくとも、見守ることはできます。
そんな人たちの支えの声が集まって、いつの間にか大きな力となる。
その声はどこまでも温かく、頼もしく、炭治郎や鬼殺隊士たちに力を与えてくれることでしょう。
アニメの世界を体現した『朝が来る』MVも見所満載
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君の行く場所に
光あれと祈った
全ての心のため
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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柱を始め、鬼殺隊は皆、明日の命の保証はありません。
また、鬼殺隊そのものが政府非公認組織であるため、鬼を見たことがない一般人にとっては怪しい組織だと思われることもあるでしょう。
命をかけて戦っていても報われないこともある、そんな彼らが心から願うのは、大切な人たちの幸せです。
「君の行く場所に光あれ」
これはまさに、鬼殺隊士たちの願いそのものなのです。
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繰り返し 繰り返し
血を流すたましいが
夢を見るその先に
輝いて 輝いて
新しい朝が来る
もうすぐ始まる歌
君を呼んでいる黎明へ
傷だらけの世界の頭上に……
≪朝が来る 歌詞より抜粋≫
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自分自身の明日の命さえ分からぬ中、他の誰かの幸せを願う。
高潔で誇り高き魂がそこにはあります。
命を張って鬼と戦い、鬼のいない世界を目指す彼らの未来に光があるようにと、願わずにはいられません。
それでは最後に『朝が来る』のMVをご紹介します。
豪華で実力を備えた声優陣や映像美だけが『鬼滅の刃』遊郭編の魅力ではありません。
音楽もまた、作品を形作る大切なピースです。
目で楽しみ、耳で楽しむことのできる『鬼滅の刃』。
『朝が来る』のMVもまた、音楽という方面から作品を盛り上げています。
和を基調とした世界観はまさに遊郭を思わせ、長い廊下や大量の和傘など、美しくもどこか不安を煽る作りも見事。
華やかで美しい遊郭に潜む鬼のように、不可解な魅力を放っています。
苦しみながらも光を求める青年の姿は、まさに歌の世界そのもの。
藤の花やふすまに囲まれた部屋など、遊郭編をイメージさせる小物使いにも注目です。
生きていく不安や苦しみ、迷いを描きながらも、最後は光に手を伸ばす。
人生は決して楽ではないけれど、懸命に生きる人の背中をそっと押してくれるような、応援歌のような力強さも秘めた楽曲ではないでしょうか。