ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」主題歌
2022年6月8日に13thシングル『初恋が泣いている』をリリースする国民的シンガーソングライター・あいみょん。リリースに先立ち、5月11日にタイトル曲『初恋が泣いている』が先行配信されました。
この楽曲は、広瀬アリス主演、カンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』の主題歌に起用されたものです。
数々の恋愛ソングを生み出してきたあいみょんですが、『初恋が泣いている』では「昔の恋愛をずっと引きずっている様子」を歌にしたとのこと。
初恋を擬人化したファンタジックな失恋ソング。
果たしてどのような解釈ができるのでしょうか。
ファンタジックな「初恋」の姿
まずは1番の歌詞です。
冒頭から「初恋」というフレーズが登場します。
----------------
電柱にぶら下がったままの初恋は
痺れをきかして睨んでる
「そんなもんか?」と牙をむいて言うのさ
あれは幻か?
≪初恋が泣いている 歌詞より抜粋≫
----------------
「電柱にぶら下がったままの初恋」は、あいみょんいわく「ベランダから見える電柱にスライムのようにデローンとぶら下がった、ピンクの全身タイツを着た、おでこに初恋と書いてある人間みたいなの」だとか。
これについては各々想像を膨らませるしかありませんね。
実際に電柱を眺めてその「人間みたいなの」をイメージしてみましょう。
そんな「初恋」が「痺れをきかして睨んでる」という不思議な状況。
初恋を引きずっている主人公に痺れを切らし、「あの子への気持ちはそんなもんか?」と睨みをきかせた「初恋」の姿が想像できます。
どうしても初めての失恋を克服できず、苦悩している主人公。
「あれは幻か?」と疑っているので、とりあえず主人公は正気を保っているようです。
「初恋の泣き声」は雨の音?
次の歌詞です。
サビも一緒に見ていきましょう。
----------------
夜になればベランダから
聞こえてくる
過ちとかそんなのを混ぜた
後悔を歌にしたような呪文が
初恋が泣いている
思ってるよりも近くで
初恋が空を濡らす
もしもこの夜があの子を奪うなら
それもいいかもな
≪初恋が泣いている 歌詞より抜粋≫
----------------
時間は「夜」。
真っ暗で外が見えないからか、「初恋」の視覚的な情報はありません。
ただ「過ちとかそんなのを混ぜた 後悔を歌にしたような呪文」が聞こえるとのことです。
これは「初恋の人を前に失敗したことや、初恋が片思いに終わったことへの後悔」が襲っている様子だと考えられます。
そしてサビの始まりが「初恋が泣いている」であることから、そんな失敗や後悔を「歌にしたような呪文」は「“初恋”の泣き声」であるという解釈が可能です。
では「“初恋”の泣き声」とは何なのか。
歌詞から察するに、それは「雨音」の比喩ではないかと推測できます。
言い換えると「“初恋”の涙=降りしきる雨」という解釈です。
雨がベランダの窓を打っていると考えると、窓の向こうの電柱よりも「近く」に「初恋」の存在を感じることになります。
さらに「初恋が空を濡らす」というフレーズも「“初恋”の涙」が雨であることを暗示するような表現です。
雨音を聞いて再び初恋の人を思い出した主人公は、「初恋」の姿と同様、夜が「あの子」のことも見えなくすればいいのにと考えているのかもしれませんね。
いろいろな後悔と夢に出る「悪魔」
続いて、2番の歌詞です。
----------------
小さい頃からのママの言いつけは
今更だけれど響くよ
「そんなものよ」と紅を引いて言うのさ
あれは本当なのか?
≪初恋が泣いている 歌詞より抜粋≫
----------------
「ママの言いつけ」が「今更だけれど響く」とあります。
「女の子には優しくしなさい」や「いつも正直でいなさい」といった内容でしょうか。
いずれにせよ、主人公はその「言いつけ」に疑問や反発を抱いていたと考えられます。
「そんなことで相手は喜ぶのか」「そんなことが本当に大切なのか」など、当時の主人公には実感が湧かなかったようです。
それに対して「そんなもんよ」と、お化粧をしながら答えた母。
この片手間な感じは、まるで「大人と子供」「女性と男性」にある恋の認識のギャップを表しているようです。
そんな「ママの言いつけ」を思い出して「あれは本当なのか?」と自問する主人公。
もしかしたら主人公は初恋の相手をからかってしまったり、見栄を張って嘘をついてしまったりしたのかもしれません。
そしてそれこそが1番にあった「過ち」や「後悔」なのではとも考えられますね。
次の歌詞を見ていきましょう。
----------------
いつになればベランダから
聞こえてくる
夢の中で悪魔が唱えた
変な呪文が消えるのだろうか
≪初恋が泣いている 歌詞より抜粋≫
----------------
1番では「後悔を歌にしたような呪文」でしたが、今度は「夢の中で悪魔が唱えた 変な呪文」が聞こえるとのこと。
「悪魔」という言葉は、『AIMYON 弾き語りTOUR 2021』の書き下ろし楽曲『傷と悪魔と恋をした!』を思い起こさせます。
自分を悩ませる恋の相手を「悪魔」と表現しているとすれば、「夢の中の悪魔」は「夢に出てくる初恋の人」と解釈できそうです。
夢での会話というものは非常におぼろげなので、夢の中で初恋の人が語ったぼんやりした言葉を「悪魔が唱えた変な呪文」と表現しているのではないでしょうか。
そしてそのおぼろげな「呪文」も、ベランダの窓から聞こえてくる「雨音」と重なっているのかもしれません。
想いがあふれても雨が降るばかり
ここからは2番のサビ以降の歌詞を見ていきます。
----------------
初恋が泣いている
思いもよらない別れの
記憶から抜け出せずに
引きずりすぎた心が
ほらこうして破れてく
「愛してる?」 「愛してる」
「愛してる?」 「愛してる」
初恋が泣いている
思ってるよりも近くで
≪初恋が泣いている 歌詞より抜粋≫
----------------
主人公は「思いもよらない別れの記憶」から抜け出せないようです。
初恋は学生時代に経験することが多いと仮定すると、主人公の想い人は突然の転校などで離れていってしまったのかもしれません。
そんな「別れの記憶」を引きずりすぎて破れていく心。
次の「愛してる?」「愛してる」の繰り返しは、「今でも好きか?」「大好きだ!」という「想いがダダ漏れしたような自問自答」を表しているように思えます。
そしてそんなことを考えている間にも「初恋」は泣いている(=雨は降り続いている)ようです。
最後のサビに入りましょう。
----------------
初恋が泣いている
思ってるよりももっと近くで
初恋が空を濡らす
もしもこの世からあの子が消えるなら
それもいいかもな
忘れられるなら
それもいいかもな
≪初恋が泣いている 歌詞より抜粋≫
----------------
想いがあふれて敏感になったからか、雨音が激しくなったからか、「初恋」が「もっと近くで」泣いているように感じ始めた主人公。
窓越しの「空を濡らす」しずくを見ながら、「いっそあの子の存在が消えてしまったら楽になれるのに」と嘆いているようです。
そして最後は「忘れられるなら それもいいかもな」。
悪魔のように心にまとわりついて離れない初恋の相手、それを思い出させる「初恋の泣き声(=雨音)」。
しっとりしているようなジメジメしているような、絶妙にリアルな「初恋を引きずる苦悩」が伝わってくる歌詞でした。
梅雨の物思いに御用心
今回は、あいみょん『初恋が泣いている』の歌詞の意味を考察しました。「初恋」のイメージこそファンタジックなものでしたが、妙なリアル感も漂っているあいみょんらしい1曲でしたね。
『初恋が泣いている』のリリース日は6月8日で、ちょうど梅雨入りくらいです。
また「涙と雨」というと「催涙雨(さいるいう)=七夕に降る雨」を連想します。
織姫と彦星のように離れ離れの日々の中で梅雨に見舞われるのは憂鬱なものです。
やがてやってくるジメジメした季節、かつての「初恋」や「悪魔」に心を持っていかれないよう、十分な警戒が必要かもしれません。