まふまふによる「プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク」の書き下ろし曲に注目
ニコニコ動画出身の人気歌い手であり、自身で作詞・作曲・編曲も手がける多彩なアーティスト・まふまふ。2021年1月10日配信リリースの『悔やむと書いてミライ』は、人気リズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』のゲーム内ユニット「25時、ナイトコードで。」への最初の書き下ろし楽曲です。
ニーゴの愛称で親しまれる「25時、ナイトコードで。」はそれぞれ闇を抱えたメンバー4人で構成されていて、今作は彼女たちの持つダークなイメージを象徴するような作品となっています。
どんな内容なのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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一思いにボクを刺してくれたら
いいのにな いいのにな
不条理な御託で刺してくれたら
いいのにな いいのにな
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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冒頭から「一思いにボクを刺してくれたらいいのにな」という衝撃的なフレーズから始まります。
どうやら主人公は自殺願望があり、できることなら誰かに命を奪ってほしいと思っているようです。
「不条理な御託」とは、殺人を犯した犯人が言う“誰でも良かった”というような理解しがたい動機のことと解釈できます。
自ら命を絶つ勇気はないから、誰かがそんなめちゃくちゃな理由で強引に命を奪ってくれたらいいのにと考えていると分かります。
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いつかゴミに出したのに
袖口に隠していた生涯
燃やせぬまま灰になれずにいたんだ
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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「袖口に隠していた」のはリストカットの跡でしょう。
ゴミに出すかのように命を捨てようとしましたが死に損ない、憂鬱そうにその跡を見つめている様子が想像できますね。
灰になることができなかった主人公は、自殺願望を募らせていきます。
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死にたい 消えたい以上ない
こんな命に期待はしないさ
故に夢に魘され
塞いだ過去に咲いた世界
癒えない 見えない傷ほど
きっと瘡蓋だって出来やしないと
ボクは知っていた
悔やむと書いてミライ
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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サビでも「死にたい 消えたい以上ない」とつらい胸の内を明かしています。
「こんな命に期待はしないさ」と続け、自分の命には価値がなく期待をしても無駄だとさえ考えているようです。
それなのに生きているから悪夢にうなされ、苦しい過去ばかりが増えていきます。
目には見えず癒えることもない心の傷は「きっと瘡蓋だって出来やしない」と思っていて、もうどうにもならないと諦めていることも伝わってくるでしょう。
タイトルでもある「悔やむと書いてミライ」というフレーズは、「悔やむ」という文字に「ミライ」という読みを当てた当て字のことを指しています。
つまり彼女にとって未来は希望のあるものではなく、過去を思い返しては後悔するだけの時間であることを表しているのです。
期待するだけ無駄な人生
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生きるふりをして死んでいくのが
人生か 人生だ
それじゃボクらはどうしてこの世に
こんな未完成な身体に
未だ 心を持っているんだ
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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死にたいと願っている主人公からすれば、生きることは苦しいことです。
だから「生きるふりをして死んでいくのが人生」と結論づけています。
しかし、それならどうして人は絶望するような生きづらいこの世界と価値のない自分自身を悲しむ心をまだ持っているのだろうという疑問も浮かんでいるようです。
いっそ自我なんてなくなって何も感じなければ生きていても死んでいても同じなのに、と胸の痛みに苦しむ気持ちを吐露しています。
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きっと拉げた如雨露で
花を咲かせようとした そうさ
種一つない土に撒いちゃいないか
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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努力が実ったり才能が発揮されたりすることを“花開く”と言いますよね。
花を咲かせるために如雨露で水をやるように、主人公も初めは未来に希望を持って努力していたのでしょう。
ところが結果は思うようにいかず、ふと「種一つない土に撒いちゃいないか」と考えます。
自分の人生にはそもそも実るような種がなく、最初から何をやっても無駄だったのではないか。
そんな風に考えたのなら、“死にたい” “消えたい”と思ってしまうのも無理はないことかもしれません。
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だから一抜けした 捨てた
この世の流行り病のような愛も
爪の先よりも細い
底浅い友の情愛も
知らない 知りたいこともない
どうせ言葉以上の意味などないと
ボクは知っていた
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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「この世の流行り病のような愛」や「爪の先よりも細い底浅い友の情愛」といった表現から、人々が人生になくてはならないと感じている愛を主人公は意味のないものと捉えていることが伝わってくるでしょう。
そして自分は愛をさっさと捨てて、人生から離脱することにしました。
彼女に対してきっと周囲はまだ愛を知らないだけだと言うのでしょう。
主人公は確かに「知らない」と認めつつも「知りたいこともない」、「どうせ言葉以上の意味などない」と知ろうとすることも無駄だと拒絶しています。
本当は希望を持って生きたいけれど
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片道分の蝋を持って
消さないように必死になって
わずか照らした一寸先の
穴ぼこは誰が落ちた跡?
それが人生です ボクら手にした人生なんです
生まれたこと自体が
間違いだったの?
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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人生は後戻りできない一方通行の道のようです。
死に向かうだけの真っ暗な道を、「片道分の蝋」の一寸先しか照らせない小さな光を必死に守りながら進んでいます。
そして見つけたのは、誰かが落ちたらしい絶望という穴ぼこです。
そんな険しい道が「ボクら手にした人生なんです」と、主人公は見切りをつけています。
「生まれたこと自体が間違いだったの?」という問いかけがあまりに切なく響きます。
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消えたいの 消えたいの
何回だって言い聞かせた
夢も見れぬような 後悔を頂戴
≪悔やむと書いてミライ 歌詞より抜粋≫
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繰り返し「消えたいの」と願望を言葉にしてきた主人公。
しかし「何回だって言い聞かせた」とあるように、本音は希望を持って生きたいと願っています。
とはいえ期待を何度も裏切られてきたせいで、これ以上期待して傷つくことを恐れています。
だから希望なんて捨てたのだと自分に言い聞かせることで、その身を守ろうとしているのです。
そしてうっかり期待してしまうような夢さえ見れなくなるほどの「後悔を頂戴」と、とことん打ちのめされることを望んでいます。
本心と現実とのギャップにもがきながら日々を生きる主人公の痛々しい叫びに胸が締めつけられます。
まふまふ×25時、ナイトコードで。の世界観に引き込まれる
『悔やむと書いてミライ』はまふまふと「25時、ナイトコードで。」の世界観がリンクするメッセージ性の強い楽曲です。聴いているだけで苦しくなるような言葉の連続に圧倒されますが、人生に苦しむ自分の気持ちを代弁してくれていると感じる人も少なくないのではないでしょうか。
軽快なギターロックの明るい音楽に背中を押され、きっと明日を生きる力が湧いてきますよ。