ジブリ映画といって『ホーホケキョ となりの山田くん』を思い浮かべる人はどれくらいいるでしょうか。いしいひさいちの四コマ漫画が原作のこの映画は、ジブリの中ではマイナーな存在。原作の内容をふまえつつ、一本の映画になっているファミリー向けコメディ作品です。原作の画を最大限に再現した作画も特徴。この作画技法は後に『かぐや姫の物語』でも活かされます。
公開日:2016年4月3日
ジブリ映画といって『ホーホケキョ となりの山田くん』を思い浮かべる人はどれくらいいるでしょうか。いしいひさいちの四コマ漫画が原作のこの映画は、ジブリの中ではマイナーな存在。原作の内容をふまえつつ、一本の映画になっているファミリー向けコメディ作品です。原作の画を最大限に再現した作画も特徴。この作画技法は後に『かぐや姫の物語』でも活かされます。
矢野顕子の『ひとりぼっちはやめた』は、この映画『ホーホケキョ となりの山田くん』主題歌。矢野顕子の優しい歌声が映画の内容とマッチしています。矢野顕子といえば、独特な歌声をもつシンガーソングライター。この歌声が映画の優しい世界観を作っていると言っても過言ではありません。矢野顕子は、この映画で声優としても参加。その後もジブリ美術館の短編映画や『崖の上のポニョ』でもポニョの妹たち役で声優として参加しています。
“だれも気づかない この気持ち
あなたにだけには わかってほしい”
誰も気付かない気持ちを、あなただけには分かって欲しい!という歌詞。見事にこの映画にハマっています。この作品は、レンタルビデオ店のジブリ映画コーナーにおいても、必ず端に置かれます。高畑勲監督作品としても『火垂るの墓』『平成狸合戦ぽんぽこ』や『かぐや姫の物語』の影になる『となりの山田くん』。しかし、この『となりの山田くん』が好きな人は、今作の良さを「わかってほしい」と思っています。
“さよならだけが 人生なんて
ほんとのことかな? それだけかな?
こんにちはだって あるよね 毎日あるよね”
「さよならだけが 人生なんて ほんとのことかな?」という問いかけ。原作の四コマ漫画は、その後『ののちゃん』というタイトルに変更になり、『となりの山田くん』という元のタイトルにさよならをしています。しかし『ののちゃん』として新たに「こんにちは」している。原作漫画は続いているのです。さよならだけが人生ではないという証明。
“力がないの こんな時 しかたがないの
泣きたい時 あなたの声が必要”
力がない時、泣きたい時、あなたの声が必要!という歌詞は、この映画にとっては切実なフレーズ。『となりの山田くん』は、製作費がかかったにも関わらず興行成績は大コケ。1回だけあったテレビ放送でも視聴率9%という記録を持っています。ジブリ作品の中でもかなり「力がない」この映画。しかし、ほんわかした内容を評価する人も多い作品。だから少しでも評価してくれる「あなたの声が必要」なのです。
“ひとりぼっちはやめた ほら 楽しい気持ちを 分けてあげる”
「ほら 楽しい気持ちを分けてあげる」という歌詞どおり、楽しいほっこりした気持ちになれる映画です。
この曲を聴いたあなたなら、この映画を観たあなたなら、楽しい気持ちを分けてあげたくなるはず。『ホーホケキョ となりの山田くん』をひとりぼっちにしない!というこの気持ちが分かるはず。タイトルフレーズ「ひとりぼっちはやめた」。このフレーズは、はからずも悲しい歴史をたどってしまったこの映画を救う言葉なのです。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)