大人気の平成桜ソングを徹底解釈！
母は歌手で女優の森山良子、父は元歌手のジェームス滝という音楽家系のサラブレッドで、持ち前の圧倒的な歌唱力と独特な世界観で日本中のファンを魅了してきたシンガーソングライター・森山直太朗。メジャーデビューから20年、多くの名曲を生み出してきた中でもひときわリスナーの心に残っているのは『さくら(独唱)』ではないでしょうか。
2002年10月リリースのメジャーデビューミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』にバンドアレンジで収録されていた楽曲をシングルカットし、ピアノのみの独唱版として2003年3月にリリースしたのが『さくら(独唱)』です。
初回出荷枚数は1200枚からスタートしたものの最終的に120万枚を超える大ヒットを記録し、春ソングや桜ソングといえば必ずタイトルが上がる人気曲となっています。
また儚さと切なさが詰まった歌詞とメロディにより、定番の卒業ソングとして多くの学校の卒業式で使用され親しまれています。
実はこの楽曲は森山直太朗自身の友人の結婚をきっかけに作詞作曲したとのこと。
どのような想いが込められているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
----------------
僕らは きっと待ってる 君とまた会える日々を
さくら並木の道の上で 手を振り叫ぶよ
どんなに苦しい時も 君は笑っているから
挫けそうになりかけても 頑張れる気がしたよ
霞みゆく景色の中に あの日の唄が聴こえる
≪さくら (独唱) 歌詞より抜粋≫
----------------
主人公は大切な「君とまた会える日々を」待っていると語っています。
この曲が結婚する友人への曲であることをふまえると、これまでずっと一緒に過ごしてきたものの結婚によってこれから少し距離ができてしまうだろう友人への寂しい気持ちが感じ取れるでしょう。
それでもこれは永遠の別れではないから「また会える日々」を待っているという言葉に、優しく温かな友情関係が見えてきます。
だからこそ友人と別々の道を歩み始める卒業生たちの心にも響くのだと思われます。
「さくら並木の道の上で手を振り叫ぶ」のは、きっと友人への応援や労いの言葉です。
思い返せば、友人は「どんなに苦しい時も」笑っていました。
主人公はそのポジティブな姿に励まされていたため、何度「挫けそうになりかけても頑張れる気がした」のです。
それでそんな友人を明るく送り出してあげたいという気持ちが垣間見えます。
「霞みゆく景色」は涙があふれて景色が霞んでいく様子を表していると解釈できますね。
涙ながらに友人を見送っていると思い出の曲が頭の中を流れ、様々な感情が心に湧き上がってきます。
桜の儚さは別れの切なさに似ている
----------------
さくら さくら 今 咲き誇る
刹那に散りゆく運命と知って
さらば友よ 旅立ちの刻 変わらないその想いを 今
≪さくら (独唱) 歌詞より抜粋≫
----------------
日本の春を代表する花として愛される桜は咲き誇る姿が圧巻であると同時に、たった2週間程度で花が散ってしまう儚さも持ち合わせた花です。
もしかしたら桜の美しさは「刹那に散りゆく運命」だからこそより際立つものなのかもしれません。
この曲では桜の刹那的な儚さと別れの切なさを重ねて表現しています。
桜が咲き誇っている期間が短いように、友人との楽しい時間も一瞬に感じるほど早く過ぎ去っていきます。
しかし桜は散っても美しい花びらを残すのと同じく、別れても自分たちの友情は変わらず心に残り続けるという熱い想いを伝えようとしていることが感じられますね。
----------------
今なら言えるだろうか 偽りのない言葉
輝ける君の未来を願う 本当の言葉
移りゆく街は まるで 僕らを急かすように
≪さくら (独唱) 歌詞より抜粋≫
----------------
仲の良い友人同士ゆえに言いにくいことがあります。
特に相手への感謝やエールは気恥ずかしく感じてしまい、つい本当の気持ちを隠して憎まれ口を叩いてしまう人も少なくないのではないでしょうか。
それでもその友人と次にいつ会えるか分からないという状況になったら、自分の気持ちをきちんと伝えたいと思うはずです。
主人公も友人と別れる時になって「今なら言えるだろうか」と考えています。
「輝ける君の未来を願う本当の言葉」を伝えれば、きっと友人は喜んでくれます。
風で桜の花びらが舞って刻一刻と変わっていく景色に急かされて、思い切って「偽りのない言葉」を語る主人公の姿が見えてくるかのようです。
いつか必ず再会できるから笑顔で別れよう
----------------
さくら さくら ただ舞い落ちる
いつか生まれ変わる瞬間を信じ
泣くな友よ 今 惜別の時 飾らない あの笑顔で さあ
≪さくら (独唱) 歌詞より抜粋≫
----------------
枝を離れた花びらは「ただ舞い落ちる」ばかりで、その様子がより別れの切なさを強調します。
その生命を終えて土に還った花びらは養分となり、きっといつか新しい桜の花となって生まれ変わるのでしょう。
人も生まれて死ぬ運命にありますが、信じていればまたいつかどこかで大切な人と再会できるはずです。
だから主人公は別れに泣く友人に「泣くな」と告げ、これまで何度も自分を力づけてくれた「飾らないあの笑顔で」笑ってほしいと語りかけます。
----------------
さくら さくら いざ舞い上がれ
永遠に さんざめく光を浴びて
さらば友よ また この場所で会おう さくら舞い散る道の上で
≪さくら (独唱) 歌詞より抜粋≫
----------------
桜が散った後、風で多くの花びらが舞い上がる風景も美しいものです。
永遠にわたって輝き続ける太陽の光に照らされる花びらを眺めていた主人公は、おそらくこの先もその風景が不変であることを確信したのでしょう。
それは同時に自分と友人の関係も不変であり、また再会できる日が来るはずだという確信に繋がったと考えられます。
それで最後に「またこの場所で会おう」と約束し、別々の道を歩み始めます。
不朽の春ソングに癒される！
森山直太朗の『さくら』は悲しい別れの場面を美しく繊細に切り取った歌詞が魅力的です。人は出会えばいつか別れてしまうものですが、ただ別れを悲しむのではなくお互いの正直な気持ちを伝え合って再会を約束するなら、もうそばにはいなくてもずっと力づけられるでしょう。
切なくも温かい音楽に包まれながら出会いと別れの春を大切に過ごしてみませんか？
