MVも話題!別れのバラード「一輪花」を解釈
愛や葛藤を歌った『晩餐歌』がTikTokで大流行し、15歳にして一躍注目の的になったシンガーソングライター・tuki.。みずみずしい感性でつづる詩的な歌詞、儚くも芯のある歌声、それらが調和するエモーショナルな音楽に多くのリスナーが魅了されています。
今回考察するのは、そんなtuki.が2023年11月に配信リリースした『一輪花』。
別れの後のたたずまいを「一輪花」になぞらえた淡く切ないバラードです。
MVの公開は自身初で、楽曲とマッチしたストーリー性のあるアニメーションMVにも共感と絶賛の声が集まっています。
そんな話題の楽曲『一輪花』の歌詞には、はたしてどのような意味が込められているのでしょうか。
「最大級の愛が雨に変わる」
『一輪花』の歌詞では、大切な人との別れ、それに対する「私」の思いがつづられています。
まずは1番の歌詞から見ていきましょう。
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誰かのために歩いていたから
気付けなかった
私のために歩いても
構わないって気付いた
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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主人公は「私のために歩いても構わない」と気づいたとのこと。
親や先生など、これまで「誰か」の期待に応えようと意気込んで生活してきたのでしょうか。
それほどに大事な人を失った今、主人公は自分の人生を自分で切り開いていこうと考えているようです。
続く歌詞はこちら。
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いついつまでもあなたを
忘れられないなんて嫌だよ
望んでたんだ 凛と立つ一輪花
元に戻るだけさ
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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気持ちを切り替えようと頑張っても、これからも「あなた」を忘れられない。
胸の苦しさが続く将来を予感しつつも「元に戻るだけさ」と主人公は自分に言い聞かせます。
「あなた」という人物は、主人公の孤独を癒してくれる存在でもあったようですね。
そして孤独だった当時に望んでいた生き方こそ「凛と立つ一輪花」。
周りに流されない、芯のある落ち着いた女性のようなイメージでしょうか。
そんな孤高の花でありたいと望む日々に戻っていく主人公。
サビの歌詞からは、感情の揺らぎを隠せない様相がうかがえます。
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さよなら
最大級の愛が 雨に変わる
会えないバイバイなんてあの日
思わなかった
風に揺らぐ 一輪花
飛ばされないように
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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「最大級の愛が雨に変わる」。
失った「あなた」への愛の大きさは、その後の悲しみや空虚感の強さに比例するのでしょう。
続く「会えないバイバイなんてあの日 思わなかった」という歌詞からは、大切な人との別れが突然のものだったことも想像できますね。
悲しみの大雨に打たれ、気持ちの整理がつかない「一輪花」。
風に飛ばされないよう、自分を見失わないようにするのが今の彼女の精一杯のようです。
続く歌詞はこちら。
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最大級の愛を
会いたいよって居ないよ
会えばきっと痛いよ 痛いよ 痛いよ
最大級の愛と
朝露に濡れた私は一輪花
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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どれだけ会いたいと願っても「あなた」はもういない。
たとえ会えたとしても想いがあふれて胸が痛くなってしまうでしょう。
別れの心痛に震える孤独な「私」。
「最大級の愛と朝露に濡れた」というのは、大きな悲しみの雨に加えて自分自身の涙に濡れたという意味かもしれませんね。
「愛」も「雨」も糧にして成長する
ここからは2番以降の歌詞を考察します。
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明日のために歩き出そうとは
思ってたんだ
思い出ばかり眺めては
今日じゃなくって良いって
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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「前に進もう」という思いがあっても、すぐには割り切れないのが感情というもの。
主人公も例外ではなく、思い出にとらわれ「今日じゃなくって良い」と、今を生きることを先延ばしにしているようですね。
次の歌詞も見てみましょう。
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今が続けばいいよと
あの時は思えていたけど
変わっていくんだ 凛と立つ一輪花
咲き続けるために
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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大事な人がそばにいる当たり前の尊さには、当事者の立場だとなかなか気づきにくいものです。
「今が続けばいいよ」と思えていた主人公は、どれだけ身近で大切な人とも必ず別れるときが来るというもうひとつの当たり前を見落としていたのでしょう。
「あなた」との突然の別れを経て、現実は変わっていくのだと主人公は痛感します。
そして同時に、自分自身も変わっていくことを強く認識した様子です。
ほかでもない自分の人生をまっとうすること、悲しみを乗り越えて笑って生きていくこと。
それらはきっと、凛とたたずみ、咲き続ける「一輪花」のような生き様なのでしょうね。
続くサビの歌詞は1番と同様です。
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さよなら
最大級の愛が 雨に変わる
会えないバイバイなんてあの日
思わなかった
風に揺らぐ 一輪花
飛ばされないように
最大級の愛を
会いたいよって居ないよ
会えばきっと痛いよ 痛いよ 痛いよ
最大級の愛と
朝露に濡れた私は一輪花
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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大事な人との「さよなら」という、誰にでも起こりうる変化に気持ちが揺らぐ「私」。
「風に揺らぐ一輪花」にはそういった意味も込められているのかもしれません。
また「朝露」は、儚いものや命のたとえとしても知られています。
それを踏まえると「最大級の愛と朝露」は、「あなた」からもらった大きな愛情と「あなた」が教えてくれた人生の尊さという意味にも解釈できそうですね。
最後の歌詞には、それらを受け取った「私」の成長が垣間見えます。
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ばいばいきっと居ないよ
会いたいよって居ないよ
会えばきっと痛いよ 期待もしないよ
最大級の愛で
どしゃぶりの雨だ
泣かないよ一輪花
Ah…
≪一輪花 歌詞より抜粋≫
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悲しみに暮れながらも「期待もしないよ」と、彼女は現実を直視し始めたようです。
「最大級の愛でどしゃぶりの雨だ」というフレーズからは「悲しみ(の雨)の強さ」がイメージされますが、最後のひと言は「泣かないよ一輪花」。
この「どしゃぶりの雨」は、もっとポジティブに「成長の糧」と解釈することもできそうです。
強い雨に打たれる一輪花は、一見すると儚く、心もとないように感じられるかもしれません。
しかし、その雨を糧にして花はまたひとつ成長します。
大きな愛を受け取った主人公も同様、つらく悲しい現実を乗り越えて立派に成長していくのでしょう。
「一輪花」弾き語りver.も必聴!
今回は、tuki.『一輪花』の歌詞の意味を考察しました。大事な人を失う心の痛み、そしてそれを乗り越えようとする健気さがまさに「一輪花」に重なる歌詞でしたね。
その世界観が豊かなイメージとともに情感たっぷりに伝わってくるのは、tuki.のまっすぐな歌声あってのことだともいえそうです。
なお『一輪花』は『晩餐歌』ともども、YouTubeで弾き語りver.も公開されています。
歌詞も歌声も、そしてピアノの旋律も美しい『一輪花』。
MVとはまた違ったイメージが湧いてくるので、ぜひチェックしてみてくださいね。