君と夢を見ていたいのに
共にパフォーマンスグループ・AAAのメンバーでありソロアーティストとしても活躍するNissy × SKY-HIが再びタッグを組んだ楽曲『Stormy(ストーミー)』は、2024年4月19日より放映の『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。『ブルーロック』は週刊少年マガジンで連載されている原作・金城宗幸、漫画・ノ村優介による大人気サバイバルサッカー漫画。
日本をW杯優勝に導くストライカーを育成するための施設「ブルーロック(青い監獄)」へ入寮した登場人物たちの熱い闘いを描くストーリーとなっており、2022年にはTVアニメ化、2023年には舞台化も果たしました。
『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』は、無気力な日々の中で同級生の御影玲王に誘われてサッカーを始め才能を開花させるキャラクター・凪誠士郎にスポットを当てた作品です。
主題歌のオファーを受けたNissyは歌詞に凪と玲王のかけ合いが必要だと考え、元々原作ファンであるSKY-HIと話し合いながら作詞したそうです。
楽曲タイトルの「Stormy」は嵐や暴風雨、波乱などを意味します。
このタイトルは作品をどのように表現しているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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冷め切った眼の
中にエゴや理想を
映した君と
一緒に見ていたい...けど
想像の範囲内で見れる夢
地位、大金、名声 それが何?うるせぇ
世界のてっぺんから見る風景
対価ならこの才能 I bet, You bet
So「努力」って楽しいのかい?
小さい目標は必要ない
勝てばそれが正解
≪Stormy 歌詞より抜粋≫
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1番の歌詞は玲王目線で歌われていると考えられます。
出会った頃、無気力で「冷め切った眼」をしていた凪が、サッカーとブルーロックでの闘いを通してその瞳の中に「エゴや理想」の炎を燃やすようになっていく過程をずっと見てきました。
そんな彼と一緒に夢を見続けたいけれど、夢を追いかけて遠ざかっていく彼にもどかしい気持ちを抱えている様子が伝わってきます。
「地位・大金・名声」のようなものを求めているのではなく、ただ彼と共に「世界のてっぺんから見る風景」を勝ち取りたい一心なのでしょう。
そして、そのために必要な才能なら持っていると自負しています。
「bet」は「賭ける」を意味する英単語で、「I bet,You bet」は自分も相手もそれに賭けていいくらいに確信があることを表現しています。
「勝てばそれが正解」になるから目の前にある努力なんて「小さい目標は必要ない」、ひたすら真っ直ぐに頂点を目指すのだという力強い感情が読み取れますね。
俺らのエゴに勝てる奴なんていない
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ルールする世界 頭が高いぞ控えろ
手持ちの飛車、角 蹴散らすピエロ
何掛けてもゼロはゼロ 諦めろ
手も足も出ないだろ 俺らのエゴ
ご褒美はなんですか?
次の絶望者は誰ですか?
Theory通りにはいかない
この気持ちは僕のですか?
そう「悔しさ」を手に入れて
その感情ごと燃やせ
僕らごと飲み込んでいく
≪Stormy 歌詞より抜粋≫
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2番の歌詞は凪と玲王に共通する想いが綴られているようです。
「飛車、角」は将棋で攻守の中心となる駒のことで、チームの重要な役割を担うメンバーのことを指して使われることもあります。
玲王は一次選考のチームVで凪と剣城斬鉄という最高のメンバーと共に圧倒的な力を見せつけ、その場を支配しました。
続く歌詞は、そのエピソードで取り上げられた“0”を“1”にする方法についてのセリフにかかっていると考察できます。
「何掛けてもゼロはゼロ」のように才能がない人間がいくら集まっても自分たちには勝てないのだから「諦めろ」と、他のチームを見下しているようです。
『ブルーロック』のキーワードである己の「エゴ」に自信を持っていることが分かります。
しかし、試合が進んでいくごとに「Theory(理論)通りにはいかない」ことを悟りました。
凪は本気で挑み負けた時に初めて感じた「悔しさ」に戸惑います。
やがて2人は「その感情ごと燃やせ」という熱い感情で、悔しささえも自分自身の糧にして突き進むよう気持ちを切り替えたことが表現されています。
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王冠を奪え ただ一つだけ
Oh Yah Yah Yah
お構いはしないぜ ほらここから去れ
Oh Yah Yah Yah
青く染まる 混沌を増す 要塞のせいで
Jealousy, energy, benefit, ability
Such a crazy game
≪Stormy 歌詞より抜粋≫
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唯一の「王冠」を奪うことを目指し、彼らは闘い続けます。
その過程で凪と怜王は別れ、敵としてぶつかることになりました。
玲王は「お構いはしないぜ ほらここから去れ」と強がっていますが、「青く染まる 混沌を増す 要塞のせいで」というフレーズからブルーロックに入ったがために道が分かたれてしまったことを嘆く想いも感じ取れます。
次の英語詞は「嫉妬、エネルギー、利益、能力 あんな狂ったゲーム」と訳せるでしょう。
隣に並んで夢を目指せなくなった今、自分自身の全てを賭けてこのゲームの覇者になってやるという気合いが伝わります。
進む未来は違ってもいつかまた巡り合える
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めんどくさい僕に 触れてくれて 目覚めたんだ
目が覚めてどこに行こうと
知ったことじゃないぜ お好きにどうぞ
君のいない 未来へ行く
僕のワガママを許して
嘘と裏切り 好きにすれば良い
送り出せないけど引き止めない
答えが欲しい
否、カタチが欲しい
先走る希望
失う残酷さを知る
この傷がいつか瘡蓋になる頃
僕ら迷路の中また巡り合う
≪Stormy 歌詞より抜粋≫
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この歌詞は凪と玲王のかけ合いだと解釈できるでしょう。
凪はマイペースで「めんどくさい僕」を玲王がサッカーに誘ってくれたから、サッカーの才能を開花させると共にサッカーの楽しさにも目覚められたことを語ります。
それなのに「君のいない未来へ行く僕のワガママを許して」と告げているところに、玲王への申し訳なさと夢への固い決意が込められているように感じますね。
それに対して玲王は、凪がどのように先に進もうと「お好きにどうぞ」と返します。
「送り出せないけど引き止めない」と語り、凪の選択を決して喜んで応援することはできないものの、彼が夢に進むのを阻むつもりはないことを伝えているようです。
追い求める「希望」のために気持ちが先走って大切な友を「失う残酷さを知る」時、自分の選択に迷いを感じることもあるでしょう。
入り組んだ人生は「迷路の中」のように複雑です。
しかし彼らは今感じている傷が完全に癒える前に、きっと「また巡り合う」と信じています。
これは凪と玲王が最高のパートナーであると感じさせてくれる秀逸なフレーズです。
映画のストーリーに入り込める歌詞に注目!
Nissy × SKY-HIの『Stormy』は嵐のように吹き荒れるブルーロックの中での闘いと、自分自身の心や友情の中に巻き起こる波乱を表現した楽曲でした。凪と玲王という2人の人物の心情を取り上げることで、2人の関係性の深さが感じられたのではないでしょうか。
原作ファンの方も映画から作品に触れる方も、歌詞とストーリーのリンクをじっくりと楽しんでくださいね。
-SKY-HI- 圧倒的なRAPスキルのみならず、卓越したボーカル&ダンス&トラックメイキングスキルを武器にエンターテインメント性溢れるコンテンツをセルフプロデュースで創り上げ、常に世に提示し続ける。 2023年自身初となるアリーナツアーを成功させる。 2020年にマネジメント/レーベル「BM···