「星座になれたら」と並ぶ人気曲の歌詞に注目!
2022年11月より配信されている『ギターと孤独と蒼い惑星』は、漫画・TVアニメで人気の『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する、後藤ひとり・伊地知虹夏・山田リョウ・喜多郁代の4人のメンバーからなる劇中バンド「結束バンド」の楽曲です。原作漫画では第9話に曲名が登場し、ライブハウス「STARRY」のライブに出るために店長の伊地知星歌によるオーディションを受ける際に発表されています。
アニメでは第5話に劇中歌として登場し、漫画と同様にオーディションで披露されました。
劇中設定では“ぼっち”こと後藤ひとりが作詞を、山田リョウが作曲を担当しているとされています。
実際には作詞をシンガーソングライターのZAQ、作曲をアーティスト・クリエイターの音羽-otoha-、編曲をギタリストでサウンドプロデューサーでもあるakkinが務めています。
ZAQは高校生らしい勢いを大切にして作詞をしたそう。
その歌詞がまさに後藤ひとりの想いを反映しており、アニメ最終話で後藤ひとりが通う秀華高校の学園祭ライブにて披露された『星座になれたら』と並んで高い人気を誇っています。
劇中で歌詞を見た山田リョウが「ぼっちらしい」と表現した『ギターと孤独と蒼い惑星』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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突然降る夕立 あぁ傘もないや嫌
空のご機嫌なんか知らない
季節の変わり目の服は 何着りゃいいんだろ
春と秋 どこいっちゃったんだよ
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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1番では、社会で生きる難しさを歌っているようです。
天気や気候について取り上げられていますが、「空のご機嫌なんか知らない」というフレーズに注目すると、「空」は世間一般の人と捉えられます。
「突然降る夕立」や季節の移り変わりに圧倒されるように、世間の流れの早さに戸惑っている様子が読み取れますね。
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息も出来ない 情報の圧力
めまいの螺旋だ わたしはどこにいる
こんなに こんなに 息の音がするのに
変だね 世界の音がしない
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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現代では、誰もがネットやSNSを通して「息も出来ない 情報の圧力」に飲み込まれています。
何が本当で何が嘘かも分からない情報の波に揉まれているうちに、「わたしはどこにいる」と自問しなければならないほど頭が混乱してしまったようです。
実際にネット上でのトラブルが絶えないのは、多くの人が情報の圧力に思考を奪われているからなのかもしれません。
「こんなに息の音がするのに変だね 世界の音がしない」というフレーズは、孤独を見事に表現しています。
独りきりでいると、自分の息の音は聞こえるのに周囲の音が遠くに感じてしまいます。
それと同じように、自分自身のことは分かっても世間一般の考え方や周囲の人との付き合い方が分からずに苦しんでいることが伝わってきますね。
音楽しかないからひたすら歌い続ける
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足りない 足りない 誰にも気づかれない
殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
「ありのまま」なんて 誰に見せるんだ
馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星に
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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サビでは、自分自身が生み出したものの未熟さに対する葛藤が「足りない」の言葉で示されています。
目に見える評価がないと、自分の想いなんて「誰にも気づかれない」取るに足らないものだと感じてしまうのも、無理はないことかもしれません。
「殴り書きみたいな音」とは、音楽にもならない自分の感情を思いのままに表現した音であり、心の底から湧き上がる本音のことでしょう。
そんな「ありのまま」を見せても、誰も喜ばないことは分かっています。
とはいえ、ほかに自分の気持ちを表現する方法を知らないため、ひたすら歌い続けます。
「ぶちまけちゃおうか星に」のフレーズは1番の「空」と関連させると、周囲の機嫌を窺うのではなく思い切って音楽で自分の感情を吐き出したいという意味だと解釈できそうです。
また、彼らが目指すライブハウス「STARRY」は「星空」を意味しています。
この場所で思いの丈を歌いたいという気持ちも込められているのではないでしょうか。
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エリクサーに張り替える作業もなんとなくなんだ
欠けた爪を少し触る
半径300mmの体で 必死に鳴いてる
音楽にとっちゃ ココが地球だな
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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2番では音楽に対する想いが歌われています。
「エリクサー」とはギター弦のことで、弦を張り替える作業がなんとなくでもできるほどにギターが体になじんできたことを表しています。
繰り返し演奏していることで「欠けた爪」は努力の証です。
その爪を触り、これまで積み重ねてきた時間を思い返しているのでしょう。
「半径300mmの体」はギターのボディを表していて、そこから「必死に鳴いてる」かのように音が紡がれていきます。
「音楽にとっちゃココが地球だな」というフレーズで、自分のギターから音楽が生まれていく様子を壮大な表現で例えています。
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空気を握って 空を殴るよ
なんにも起きない わたしは無力さ
だけどさ その手で この鉄を弾いたら
何かが変わって見えた…ような。
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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「空気を握って空を殴る」ような無力な自分でも、ギターを弾けば「何かが変わって見えた…ような」気がする。
そんな風に、音楽を生み出している時だけは自分自身の価値を信じることができたのでしょう。
ここから、音楽を続ける理由がありありと読み取れます。
このギターから生まれる音楽を聴けよ
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眩しい 眩しい そんなに光るなよ
わたしのダサい影が より色濃くなってしまうだろ
なんでこんな熱くなっちゃってんだ 止まんない
馬鹿なわたしは歌うだけ
うるさいんだって 心臓
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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周囲が青春を謳歌する眩しさは、“陰キャ”にとっては目の毒です。
光が強ければ強いほど影が濃くなるように、その眩しさで「わたしのダサい影がより色濃く」なり自分の惨めさが際立つように感じてしまいます。
そう思う一方で、バンド活動をしている時は自分が熱くなっていることに気づきます。
まるで自分ではないようなのに、歌うのをやめられません。
その胸の高鳴りに対してかけられた「うるさいんだって 心臓」という言葉には、変化する自分への気恥ずかしさが込められているようで、高校生ゆえの青さが感じられます。
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蒼い惑星 ひとりぼっち
いっぱいの音を聞いてきた
回り続けて 幾億年
一瞬でもいいから…ああ
聞いて
聴けよ
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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後藤ひとりはひとりぼっちで音楽を聞き、生み出してきました。
地球が幾億年も回り続けているように、音楽を生み出すギターも鳴り続けています。
だからその音を「聞いて」と率直に伝えています。
この部分で最後に「聴けよ」と命令形になっているところも荒々しい感情が爆発した瞬間を見ているかのようで、まさにロックを感じるフレーズです。
また、漢字の表記が変化している点にも注目できるでしょう。
「聞く」は音が自然と耳に入る様子を表しますが、「聴く」は理解しようと自ら耳を傾ける状態を表します。
つまり「聞いて」には一瞬でもいいから皆の耳に自分の歌と音楽が届いてほしいという気持ちなのに対し、「聴けよ」はこの歌を耳にして自分の想いを理解してくれという熱いメッセージであると考察できます。
こうして歌詞の意味をじっくりと考えることが彼女の願いなのだと思うと、より歌詞が心に響きますね。
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わたし わたし わたしはここにいる
殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
なんかになりたい なりたい 何者かでいい
馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星に
≪ギターと孤独と蒼い惑星 歌詞より抜粋≫
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音楽を通して、彼女たちは「わたしはここにいる」と叫んでいます。
「なんかになりたい なりたい 何者かでいい」というフレーズも、周囲に認められたい気持ちがよく表れています。
大それた者になりたいなんて望まないから、せめて胸を張って生きられる存在になりたい。
そんな気持ちを必死に訴える歌詞がかっこいいですね。
心を震わせるメッセージから力をもらおう
結束バンドの『ギターと孤独と蒼い惑星』は、音楽を通して自分を表現しようとする熱い想いを感じるロックナンバーです。自分自身の心の底にある弱さと抗いながら強気に立ち向かおうとする歌詞と疾走感のある力強い演奏が、日々を懸命に生きる全ての人の心を奮い立たせてくれるでしょう。
ぜひ結束バンドのバックグラウンドにも思いを馳せながら、生命力あふれる音楽の魅力に浸ってください。