ドラマ「海のはじまり」主題歌を徹底解説!
2024年7月15日の海の日に配信リリースされたback numberの新曲『新しい恋人達に』は、目黒連主演のフジテレビ系月9ドラマ『海のはじまり』の主題歌として書き下ろされました。
清水依与吏は「いつも“誰にも言うべきじゃない”と閉じ込めている本当の言葉たち」をドラマの登場人物たちによって引き出され、「恥ずかしいくらい混じり気のない“自分”という名の一色で書ききった」と語っています。
父性をテーマに、よりパーソナルな部分をさらけ出した今作は、誰にとっても自分自身のことのように心に響くでしょう。
どのようなメッセージが込められているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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光が閉じるように
会えない人がまた増えても
大人になれなかった
それを誰にも言えないでいる
素敵なものを 大事なものを
抱えきれないくらいに
もらったのに
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭の「光が閉じる」という表現は、太陽が沈んで夜が来る様子を表しているのかもしれません。
毎日必ず日が暮れていくように、人生の中で会えない人が増えていくことは必然的です。
そしてそれは冷たく静かな夜のように、心を暗くしてしまう出来事でもあります。
しかしそのような心揺さぶる出来事に直面しても成長するのは簡単ではなく、「大人になれなかった」と感じることもあるでしょう。
自分の未熟さを不甲斐なく感じ、誰かに相談もできずにいつもその気持ちを飲み込んでばかりです。
「素敵なものを 大事なものを 抱えきれないくらいにもらったのに」という言葉から、大切な人から受け取った全てに見合うものを少しも返せていない後悔が垣間見えます。
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指先で雲をなぞって
僕にはもう見えないものを
描く君に
かける言葉があるとしても
僕にはとても探せないだろう
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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サビの「指先で雲をなぞって」というフレーズから、届かないものに触れようとする儚さが感じ取れます。
それが「君」には描けるのに主人公には「もう見えないもの」と歌われているのも印象的です。
この楽曲が父性をテーマにしていることを考えると、大人が子どもの豊かな発想力に触れた時に、自分にはもうこんな自由な発想はできないと感じるのと似ているように思えます。
自分は大切なものを失って手遅れになってからようやくその価値に気づくほど弱いから、この子に「かける言葉があるとしても僕にはとても探せないだろう」と苦い思いを抱えていることが伝わってきます。
大切な君のためにできること
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頼んだ覚えは無くても
守られてきた事は知ってる
自分じゃできやしないけど
君には優しくあれと願い 祈る
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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自ら頼んだことはないのにいつも誰かが自分を守ってくれていたことを知ると、深い感謝と愛情が湧いてくるものです。
主人公はそんな大それたことは「自分じゃできやしない」と認めながらも、せめて目の前にいる「君には優しくあれ」と真剣に思っています。
今度は手遅れにならないように手放さず大切にしたいという切実な気持ちが見えてきます。
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似合ってなんかいなくて
なにもかも足りないのに
投げ出し方も分かんなくて
ここにいる
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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主人公にとって、父親という立場は「似合ってなんかいなくてなにもかも足りない」称号です。
かといって「投げ出し方も分かんなくて」、ただ「ここにいる」だけ。
不安や焦燥感など、複雑な感情を抱えながら立ち往生している様子が読み取れます。
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張りぼてに描いた虹でも
手垢にまみれたバトンでも
なにかひとつ
渡せるものが見つけられたら
少しは胸を張れるだろうか
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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「張りぼてに描いた虹」や「手垢にまみれたバトン」とあるように、持っているのは決して美しくなく泥臭いものです。
現実はドラマのような美しさも華やかさもなく、はたから見れば笑われてしまうほどに不器用で無価値にさえ思えます。
それでも「なにかひとつ渡せるものが見つけられたら」、自分の人生に少しは胸を張れるのかもしれません。
今はまだそれを見つけられていないものの、大切な「君」に渡せるものを見つけたいと前向きな気持ちになっていることが窺えます。
この先に続くのは誰の人生だ
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閉じた絵本の
終わりのページで
これは誰の人生だ
誰の人生だ
誰の人生だ 誰の人生だ 誰の人生だ
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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絵本に描かれるのは、誰かの人生のごく一部です。
読み手にはそれが見えないだけで、絵本の結末の後も登場人物たちの世界は続いていきます。
では、その人生は登場人物のものなのでしょうか?それとも、その世界を生み出した作者のものなのでしょうか?
これは親子の関係とも重なります。
子どもの人生は親のものと言えますが子ども自身のものでもあるため、親の都合で子どもを振り回すべきではありません。
とはいえ、幼い子どもが親に頼らず自分で人生を決めるのは無理なことです。
「誰の人生だ」と繰り返されていることから、主人公も何が「君」の最善で、自分はどうすればいいのかと苦悩していることが感じられます。
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真白な君の未来を
真白なまま
君が色を塗れるように
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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子どもの未来はまだ色づいていない、真白なキャンバスのようなもの。
そこに親が勝手に色をつけてしまっては、子どもの自由は奪われてしまいます。
だから特別な何かはできないとしても、「君が色を塗れるように」助けられる存在になりたいと思っているようです。
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指先で雲をなぞって
僕にはもう見えないものを
描く君に
かける言葉があるとしても
僕にはとても探せないだろう
でもいつか君が誰かを
どうにか幸せにしたいと
願う日に
笑って頷けたとしたら
それでもうじゅうぶんじゃないか
と思う
≪新しい恋人達に 歌詞より抜粋≫
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子どもが描く自由な空想は、大人たちもかつて描いてきたものでしょう。
だから同じ時期を歩んだ者としてきっとその子にかけられる言葉があるはずですが、主人公は今の自分では最適な言葉をかけてあげられないと考えています。
しかし、子どもが成長して「誰かをどうにか幸せにしたいと願う日」に、笑って頷きたいと願っています。
それを実現するには、その日まで子どものそばにいて良い関係を築き続ける必要があるでしょう。
その生活は苦労が多いですが、幸せな出来事にもたくさん出会えるはずです。
だからこそ、笑って頷くという単純な出来事すら尊く感じられます。
「それでもうじゅうぶんじゃないかと思う」のフレーズには、それ以上に幸せなことはないというあふれる感情が込められているように思えます。
親として、また人として愛する人を大切にできる幸福を噛み締めながら、不器用なりに人生を歩もうとする主人公の心情がイメージできますね。
全ての人の人生と心にリンクする歌詞が胸に迫る
back numberの『新しい恋人達に』は、人生の中で起こる変化に戸惑い悩みながらも懸命に人と共に生きる全ての人の心に寄り添う温かな楽曲でした。タイトルは出会いと別れを繰り返し、愛の連鎖によって未来へバトンをつないでいく人と人との繋がりを示していると考察できます。
楽曲の土台となっているドラマのストーリーや聴く人自身の立場に当てはめながら、それぞれの解釈で歌詞を味わってみてください。
Vocal & Guitar : 清水依与吏(シミズイヨリ) Bass : 小島和也(コジマカズヤ) Drums : 栗原寿(クリハラヒサシ) 2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。 幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。 デビュー直前にiTunesが選ぶ2011年最もブレイクが期待でき···