恋の終わりと「ルビーの指環」の思い出
冒頭の歌詞では、主人公の心情が風景の描写とともに語られます。
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くもり硝子の向うは
風の街
問わず語りの心が
切ないね
枯葉ひとつの重さも
ない命
貴女を失ってから・・・・・・
≪ルビーの指環 歌詞より抜粋≫
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ここから読み取れるのは主人公は「貴女」を失った状態にあるということ。
そしてそれに対して、自らの命を「枯葉ひとつの重さもない」といってしまうほど、ショックを受けている様子が伺えます。
主人公にとって「貴女」との別れは大きな喪失だったのでしょう。
続く歌詞では、「貴女」との出来事が描写されていきます。
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背中を丸めながら
指のリング抜き取ったね
俺に返すつもりならば
捨ててくれ
そうね
誕生石ならルビーなの
そんな言葉が
頭に渦巻くよ
あれは八月
目映い陽の中で
誓った愛の幻
≪ルビーの指環 歌詞より抜粋≫
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主人公は「貴女」が指からリングを抜き取った情景を思い浮かべています。
そのリングは、「貴女」の誕生石であるルビーが飾られていたものなのではないでしょうか。
つまり、主人公が「貴女」に愛を誓う意味で渡したはずの「ルビーの指環」は、2人の恋愛の終わりによって、「貴女」の指から外されることとなってしまったのです。
そして、主人公は自らがプレゼントしたルビーの指環をそのまま捨て去ってほしいと「貴女」に言い放ちます。
自分の元に戻ってきてしまった指環を見て、恋の終わりを実感したくなかったからではないでしょうか。
「貴女」を見送る主人公
続く歌詞では、主人公が「貴女」を見送る情景が描写されます。
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孤独が好きな俺さ
気にしないで行っていいよ
気が変らぬうちに早く
消えてくれ
≪ルビーの指環 歌詞より抜粋≫
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これは、主人公が「貴女」に言い放った言葉だと考えられるでしょう。
もし別れることで、自分が孤独になることを心配しているのならば、その必要はない。
なぜなら自分は孤独が好きだから…と、主人公が「貴女」に伝えている様子が浮かび上がります。
その言葉を受けて、「貴女」は本当に主人公の元を去っていきます。
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くもり硝子の向うは
風の街
さめた紅茶が残った
テーブルで
衿を合わせて
日暮れの人波に
まぎれる貴女を見てた
≪ルビーの指環 歌詞より抜粋≫
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「貴女」が人波にまぎれていくのを見送る主人公。
「貴女」が去っていくのをずっと見ている姿からは、未練が伺えるでしょう。
つまり、先ほど「早く消えてくれ」とまで言っていたのはもしかしたら強がりにすぎず、主人公は「貴女」に対していまだに強い想いを持ち続けているのかもしれません。
こうした観点から歌詞を考察すると、『ルビーの指環』に描かれる主人公は、別れを潔く受け入れる男らしい人物というよりも、「貴女」の前では精一杯カッコつけながら、ひっそりとその別れを惜しんでいる人物と捉えることもできるでしょう。
2年の月日が流れても
次の歌詞では、「貴女」との別れからしばらく時間が経ってからの、主人公の様子が描写されます。
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そして二年の月日が
流れ去り
街でベージュのコートを
見かけると
指にルビーのリングを
探すのさ
貴女を失ってから・・・・
≪ルビーの指環 歌詞より抜粋≫
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主人公は、別れから2年が経っても、街でベージュのコートを着ている人を見かけると、指に「ルビーの指環」がないか探してしまっているようです。
別れのときにそのまま渡した「ルビーの指環」をもしかしたら「貴女」がつけてくれているかもしれない。
そうなのだとしたら、「貴女」のなかに自分への想いが残っているのかもしれない…。
そうした主人公の気持ちがこの行動に現れていると考えられます。
やはり、主人公は「貴女」への想いを断ち切れないまま日々を過ごしているのです。
恋愛に対する未練を描いた「ルビーの指環」
『ルビーの指環』は、ある男が抱く恋への未練を描いた楽曲です。そのタイトルにある「ルビーの指環」についての繊細な描写が、主人公の強がりや未練をより一層引き立てています。
どこか大人な雰囲気を漂わせているその歌詞の世界は、多くの人にとって共感できる内容となっているのではないでしょうか。