相対性理論は、日本のバンド。アインシュタインの世界的に有名な理論をバンド名にしているだけあり、ちょっと知的なグループです。ボーカルやくしまるえつこの歌声と曲のクオリティで人気。2016年7月22日には、初の武道館公演を控えている相対性理論。
公開日:2016年5月9日
相対性理論は、日本のバンド。アインシュタインの世界的に有名な理論をバンド名にしているだけあり、ちょっと知的なグループです。ボーカルやくしまるえつこの歌声と曲のクオリティで人気。2016年7月22日には、初の武道館公演を控えている相対性理論。
そんな相対性理論の『品川ナンバー』は2009年に発売のアルバム『ハイファイ新書』収録の曲。「品川ナンバー」という言葉のイメージから世界観をふくらませている歌詞が特徴です。品川ナンバーは、東京では人気の車ナンバー。高級住宅地がある地域のイメージがつくんですね。
“車は品川ナンバー いけてる東京ナンバー あなたと港でバイバイ
わたしは真夏のダイバー 七つの大海制覇 見送るあなたにバイバイ
車の先頭バンパー 雨降りいやだなワイパー 見慣れた街並みバイバイ
いなせな見習いダイバー 目指すは赤道直下 過ぎ去る季節にバイバイ”
「ナンバー」「バイバイ」「制覇」「バンパー」「ワイパー」という韻の踏み方が巧み。前半の歌詞でさりげなく韻を踏んで、リズムを刻みながら世界観を示していきます。単に似たような音を重ねているだけでなく、よく歌詞を読むときちんとストーリーになっているところが特徴。「真夏のダイバー」である田舎者の「わたし」は、「いけてる東京ナンバー」で見送る「あなた」に憧れているのです。
“カラフル パッションフルーツもぎ取りたい
南の海にダイブしたい あなたにDIVE”
「カラフルパッションフルーツ」という単語が登場。それまで韻を踏んできたのに、ここで「もぎ取りたい」と変化をつけてきます。それまでのリズムの積み重ねがあるからこそ、この「カラフルパッションフルーツもぎ取りたい」というフレーズが際立つんですね。パッションフルーツは、アメリカ大陸の亜熱帯地域を原産とする果物。日本国内では沖縄などの南西諸島で人気が高いのが特徴です。この「パッションフルーツ」という言葉に南国のイメージがついているのです。
ダイバーの「わたし」が、品川ナンバーの車に乗っているような「あなた」と南国でパッションフルーツをとるような妄想をしています。南の海にダイブするように、あなたのもとに飛び込みたい、という歌詞。パッションフルーツはパッション=情熱の象徴でもあります。
“「南の暮らしはどうだい?」
あなたの手紙はナンセンス あの子と朝までわいわい
気まぐれパッションフルーツもぎ取りたい
南の海にダイブしたい あなたを…”
しかし、「あなた」はナンセンス=意味のない手紙を送ってくるばかり。「あの子と朝までわいわい」していることから、「あなた」と「あの子」が親密な関係であることが分かります。そんな気まぐれな「あなた」。そんな「あなた」に対して、後半は「愛してルンルン」「恋してルーレット」「恋してるんだ」「愛してるよ」と愛と恋のメッセージを畳みかけてきます。
“うるわしのパッションフルーツもぎ取りたい
南の海にダイブしたい あなたにDIVE”
そして最後に再び出てくる「パッションフルーツ」。最初は「カラフルパッションフルーツ」だったのが、「気まぐれパッションフルーツ」になり、最後は「うるわしのパッションフルーツ」に変化します。そう、パッションフルーツは「あなた」の象徴。果物をもぎ取るようにあなたの心をもぎ取りたい、という情念の歌詞です。
やくしまるえつこが歌うと、情念の歌も軽く聴こえます。だから聴きやすい。レコード会社に所属していない相対性理論が武道館まで辿り着いたのは、こういった独自の工夫を積み重ねてきたからなんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)