スネオヘアーは渡辺健二によるソロプロジェクト。独特なアーティスト名が特徴のシンガーソングライターです。作詞作曲のクレジットでは、本名の渡辺健二を使用。
スネオヘアーという名前は、インパクトある芸名を考えていた際に、風呂上りの自身の髪型が『ドラえもん』のスネ夫のように見えたことから、つけられました。スネ夫の髪型といえば横に向けてとがっている不思議なスタイルですが、実際のスネオヘアーの髪型はマッシュルームに近く、特にとがっているわけではありません。音楽もとがっているというよりは、都会的でお洒落な楽曲が特徴。数々のタイアップ曲を持ちます。
公開日:2016年5月24日
スネオヘアーは渡辺健二によるソロプロジェクト。独特なアーティスト名が特徴のシンガーソングライターです。作詞作曲のクレジットでは、本名の渡辺健二を使用。
スネオヘアーという名前は、インパクトある芸名を考えていた際に、風呂上りの自身の髪型が『ドラえもん』のスネ夫のように見えたことから、つけられました。スネ夫の髪型といえば横に向けてとがっている不思議なスタイルですが、実際のスネオヘアーの髪型はマッシュルームに近く、特にとがっているわけではありません。音楽もとがっているというよりは、都会的でお洒落な楽曲が特徴。数々のタイアップ曲を持ちます。
そんなスネオヘアーの『ワルツ』もアニメタイアップ曲。この曲はアニメ『ハチミツとクローバー』のエンディングテーマでした。『ハチミツとクローバー』通称ハチクロは、美大を舞台にした群像劇のラブストーリー。登場人物全員が片想いという切ない作品です。明るさと切なさが混ざったスネオヘアーの『ワルツ』は、物語の雰囲気にハマっていました。
「パステル模様の未来」「吐き出して見えるランドスケープ」「イメージに灯を燈して」「原色で塗り替えてしまえ」美大が舞台のストーリーなので、視覚にうったえる歌詞がならびます。
この曲は、なぜタイトルが『ワルツ』なのでしょうか。ワルツは三拍子で男女がステップを踏むダンス。三拍子でもないこの曲のタイトルの意味は、歌詞を追っていくと判明します。
“開かない瞼こすって見える パステル模様の未来に
散りばめられた記号を辿る 手繰り寄せた表情”
冒頭の歌詞。パステル模様の未来とは、パステルで描いたかのようなぼやけた未来のこと。開かない瞼をこすってやっと見えるような未来。物語の登場人物たちの不安定な気持ちを表現しています。「散りばめられた記号を辿」って、「手繰り寄せた表情」にたどりつくという歌詞も良いですね。登場人物が基本片想いの話なので、相手の気持ちを得ることができない。仕草や態度などの記号をたよりに、手繰り寄せて、やっといい表情にたどり着く。そんな状況を歌詞にしています。
“僕等が引力に逆らいながら出会った頃”
サビの直前で「引力に逆らいながら出会った」というフレーズが登場。引力は、字のとおり引きあう力のこと。引力に逆らう=引きあっていないこと。このフレーズだけでも、片想いの人物だらけのハチクロのストーリーをとらえているのです。「恋」も「愛」も「片想い」という単語も出てきませんが、この曲は見事にタイアップ曲としての役割を果たしています。スネオヘアーがすごいのは、こういう点なんですね。
“それはワルツの様だね 不思議さ ささやく様な木漏れ日の交差点で
二人ワルツの様にね 廻りながら 描き出してゆくもの”
サビの歌詞で「ワルツの様にね」と、タイトルの「ワルツ」が登場。「描き出して」と歌詞が続くように「ワルツ」を音ではなく、画としてとらえています。視覚にうったえる歌詞を散りばめて、「ワルツ」ですら視覚的な意味で使っている構成。
“僕等の引力で引き合い求め合うのだろう”
「引力に逆らい」だった箇所も後半で「引力で引き合い」に変化します。この曲の中では、明るい未来を想像できます。『ワルツ』のラストは、「まるでワルツのようにね 二人が描き出してゆくもの」というフレーズ。肯定的なニュアンスで終わる曲です。
ハチクロの原作ラストは意外な着地点だった為、賛否両論が巻き起こりました。この終わり方なのか!と物議をかもした作品でもあります。だからこそ、この曲で示された未来、物語の中の登場人物や読者や視聴者が、それぞれ想像したエンディングは貴重なんですね。
『ワルツ』というタイトルは、「男女2人で優雅に踊るダンス」転じて「男女が徐々に親密になっていく様」の象徴。物語中の男女の登場人物たちを自由に当てはめることができる仕組みである『ワルツ』は、ファンの想像力を刺激するタイトルだったのです。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)