日本の名曲を生み出すベテラン作詞家 森雪之丞
作詞か活動40周年を記念して、2016年5月にCDボックス『森雪之丞原色大百科』を発売する森雪之丞。日本の音楽史に残る数々の曲の作詞をしている、ベテラン作詞家です。名前だけでも聞いたことがある人は多いでしょう。歌謡曲からアニソンまで、様々な曲の歌詞を書いている森雪之丞。今回その中から、『お料理行進曲』を取り上げます。
みんな大好き「お料理行進曲」
『お料理行進曲』は、『キテレツ大百科』の主題歌の一つ。『キテレツ大百科』は、藤子・F・不二雄原作のアニメ作品。フジテレビ系列で放送されていました。主人公のキテレツが、先祖の残した古文書を元に、数々の道具を発明するストーリー。
マスコットキャラともいえるロボットのコロ助が可愛いことでも有名です。この『キテレツ大百科』は、内容はもちろん主題歌も人気。
数々のアーティストによりカバーされている恋愛ソング『はじめてのチュウ』も、元は『キテレツ大百科』のエンディングテーマの一つです。
『お料理行進曲』は、東京カランコロンもカバーしている名曲。
一度聞くと、もう離れない。
壮大な行進曲のアレンジにのせて歌われる曲ですが、歌詞がコロッケを作る過程になっているのが特徴。ユニークな歌詞とのギャップに、一度聴けば印象に残ること間違いなしの曲です。コロッケは、コロ助の好物でもあります。きちんと内容に沿っている歌詞なんですね。歌っているのは女性歌手のYUKA。第171回から最終回である第331回まで、約4年間も使用された人気曲です。
----------------
いざ進めやキッチン
めざすはジャガイモ
ゆでたら皮をむいて
グニグニとつぶせ
≪お料理行進曲 歌詞より抜粋≫
----------------
壮大なイントロから「いざ進めやキッチン めざすはジャガイモ」とスタートする歌詞。「進めや」と「や」を入れることで「めざすは」の「は」の音とリズムを作っています。
この出だしの歌詞から、この曲がキッチンが舞台で、ジャガイモに関する料理の歌であることが分かります。
----------------
さぁ 勇気を出し
みじん切りだ 包丁
タマネギ 目にしみても 涙こらえて
≪お料理行進曲 歌詞より抜粋≫
----------------
「さぁ 勇気を出し」と、「いざ」「さあ」で揃える次のフレーズの出だし。「みじん切りだ 包丁」の歌詞も良いですね。
勇気を出して挑むことは何か?と一瞬予想させてから、包丁でのみじん切りだと、明かします。料理に慣れてない人、包丁を使い慣れていない人にとっては、包丁でのみじん切りは勇気がいる行為。その絶妙な心境を歌詞にしています。
さらに「包丁でみじんぎりだ」とせずに「みじんぎりだ ほうちょー」とすることで、「めざすはじゃがいもー」と末尾の音を「お」で揃えています。
「タマネギ 目にしみても 涙こらえて」この歌詞で、「勇気を出し」というフレーズが活きてきます。「涙こらえて」というフレーズが、タマネギを切ることで発生する自然現象としての涙の発生と、料理に対する精神的な困難を、同時に表現。
----------------
小麦粉・卵に
パン粉をまぶして
揚げればコロッケだよ
(キャベツはどうした?)
≪お料理行進曲 歌詞より抜粋≫
----------------
小麦粉と卵にパン粉をまぶして揚げて、料理が完成します。最後の最後で「揚げればコロッケだよ」と作っていた料理が判明する歌詞。
これにより、料理が得意な人は前半の歌詞から何を作っているか予想できるようになっている、ミステリー小説のような構成。
壮大なアレンジの中、最後に(キャベツはどうした?)というオチが来るのが、また良いですね。コロッケに添えるキャベツは欠かせません。ここのパートのみ男性コーラスなので( )付きにしてあります。
実は2番が存在する!?
実は、この曲は2番があります。2番の歌詞はスパゲティナポリタンのレシピになっているんですね。最後に「食べればペロリヤーナ」という謎のフレーズが登場。----------------
食べればペロリヤーナ
赤いナポリタン
≪お料理行進曲 歌詞より抜粋≫
----------------
「ペロリヤーナ」とは、ペロリと食べられる様をイタリア語のように言っている造語。ナポリタンスパゲティは、子供に人気の料理。子供がペロリとたいらげる様子をこの造語一言で表現するところに、作詞家・森雪之丞の力が見えます。
ユニークな曲なので、『キテレツ大百科』を知らない人にも是非知ってもらいたいですね。
お料理行進曲 歌詞 全文
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)