よみ:めいじいちだいおんな
明治一代女 歌詞
友情
感動
恋愛
元気
結果
- 文字サイズ
- ふりがな
- ダークモード
浮ういた浮ういたと 浜町はまちょう河岸がしに
浮うかれ柳やなぎの 恥はずかしや
人目ひとめしのんで 小舟こぶねを出だせば
すねた夜風よかぜが 邪魔じゃまをする
アラ、お月つきさま。この梅雨空つゆぞらで、
うっとうしゅうござんしょう
私わたしもねえ、旦那だんなも持もたずに芸げい一本いっぽんで、
この柳橋やぎはしでの辛つらい芸者げいしゃ稼業かぎょう…
でもねえ、この叶かのう家やお梅うめにも、
やっと春はるが来きたのよねえ。
新富町しんとみちょうの蔦吉つたきち姐ねえさんと、深ふかい訳わけありの
今いま、人気にんき絶頂ぜっちょうの花形はながた役者やくしゃ
津つの国くに屋やの太夫たゆうさんと、ひょんな事ことから駒こまが出でて、
想おもい想おもわれ…
あら嫌いやだ、ごめんなさい。
太夫たゆうさん、お待またせしました。
すがりついたか 屋形やかた船ぶね
揺ゆらぐ灯あかりも 消きえたそな
後ごは両国りょうこく 新大橋しんおおはしか
中洲なかす岬みさきの 漁いさり火びか
風かぜに瞬またたきゃ 照てる月つきが
風流ふうりゅうじゃないか 船ふなべりで
十三じゅうさん七ななツに 揺ゆれている
姐ねえさん、それじゃ約束やくそくが違ちがいます。
津つの国くに屋やの太夫たゆうさんが、四よ代目だいめ銀之助ぎんのすけの襲名しゅうめいは
役者やくしゃにとって一世一代いっせいちだいの晴はれ舞台ぶたい。
名披露目なびろめ千せん両りょうというくらいだから、莫大ばくだいな金かねが要いる。
姐ねえさんが太夫たゆうのために、
金かねの工面くめんに苦くるしんでいるのを見みて、
あっしが何なんとか役やくに立たちたい。
こんな箱屋はこや風情ふぜいでも、故郷こきょうへ帰かえれば地主じぬしの伜せがれ。
今いまは亡ねえ父親ちちおやが、あっしのために残のこしてくれた
田畑たはたを売うり払はらい
姐ねえさんに千せん円えんという金かねを、お渡わたしいたしました。
それというのも、この名披露目なびろめを最後さいごに、
あっしと一緒いっしょになって
堅気かたぎの商売しょうばいをしてくれるというから…
姐ねえさん…あっしは命いのちがけで惚ほれているんです。
峯吉みねよしさん、頼たのむから待まっておくれでないか。
今いまは太夫たゆうも披露目ひろめの準備じゅんびで寝ねる間あいだも無ないくらい…
今いま、別わかれ話ばなしを持もち出だしたら、
手切てぎれの金かねで名披露目なびろめをしたと
世間せけん様ようにいわれて、津つの国くに屋やの男おとこが廃すたる…
峯ほうさん、お前まえさんの親切しんせつには、
この通とおり、手てを合あわせています。
どうか、察さっしておくんなさい。
いいや、名披露目なびろめがすんだら、女房にょうぼうにすると、
津つの国屋くやさんが云いっているとか、いないとか。
そ、それは
じゃあ、その噂うわさは本当ほんとうなんでござんすね。
あっしを、あっしを欺だましていたんだ。
そうじゃない、堪忍かんにんしておくれよ。
きっと約束やくそくは守まもります。
今いますぐに、太夫たゆうと切きれるという事ことは…
峯ほうさん。お前まえさん何なにをするんだよ。
姐ねえさん、太夫たゆうと別わかれないのなら…
あっしと、あっしと一緒いっしょに死しんでくれ。
あぶない。峯みねさん、そんな物ものを持もって
待まって、峯みねさん、峯みねさん、止とめて、峯みねさん。
あ、あぶない。峯みねさん、峯みねさん、止とめて。
待まって、峯みねさん、峯みねさん…
峯吉みねよしさん、
私わたしは、私わたしはとんでもないことを…
恨うらみますまい この世よの事ことは
仕掛しかけ花火はなびに 似にた命いのち
燃もえて散ちる間あいだに 舞台ぶたいが変かわる
まして女おんなは なおさらに
あれから、十六じゅうろく年ねんもたってしまった。
今日きょうようやく、市ヶ谷いちがやの監獄かんごくから、出所しゅっしょ出来できました。
これからは、峯吉みねよしさんのお墓はか守まもりをして、
あなたの供養くように、一生いっしょう償つぐない続つづけます。
あれも夢ゆめ、これも夢ゆめ、一寸先いっすんさきは闇やみの浮世うきよなのねえ。
空そら眺ながめむれば 一いち点てんの
雲くも無なき果はての ほの白しろき
月つきの光ひかりに 浮うき出いでた
桧舞台ひのきぶたいの 両りょう花道はなみちに
許ゆるしてくれと 手てを合あわせ
女おんなの誠まことを 見みせましょう
浮うかれ柳やなぎの 恥はずかしや
人目ひとめしのんで 小舟こぶねを出だせば
すねた夜風よかぜが 邪魔じゃまをする
アラ、お月つきさま。この梅雨空つゆぞらで、
うっとうしゅうござんしょう
私わたしもねえ、旦那だんなも持もたずに芸げい一本いっぽんで、
この柳橋やぎはしでの辛つらい芸者げいしゃ稼業かぎょう…
でもねえ、この叶かのう家やお梅うめにも、
やっと春はるが来きたのよねえ。
新富町しんとみちょうの蔦吉つたきち姐ねえさんと、深ふかい訳わけありの
今いま、人気にんき絶頂ぜっちょうの花形はながた役者やくしゃ
津つの国くに屋やの太夫たゆうさんと、ひょんな事ことから駒こまが出でて、
想おもい想おもわれ…
あら嫌いやだ、ごめんなさい。
太夫たゆうさん、お待またせしました。
すがりついたか 屋形やかた船ぶね
揺ゆらぐ灯あかりも 消きえたそな
後ごは両国りょうこく 新大橋しんおおはしか
中洲なかす岬みさきの 漁いさり火びか
風かぜに瞬またたきゃ 照てる月つきが
風流ふうりゅうじゃないか 船ふなべりで
十三じゅうさん七ななツに 揺ゆれている
姐ねえさん、それじゃ約束やくそくが違ちがいます。
津つの国くに屋やの太夫たゆうさんが、四よ代目だいめ銀之助ぎんのすけの襲名しゅうめいは
役者やくしゃにとって一世一代いっせいちだいの晴はれ舞台ぶたい。
名披露目なびろめ千せん両りょうというくらいだから、莫大ばくだいな金かねが要いる。
姐ねえさんが太夫たゆうのために、
金かねの工面くめんに苦くるしんでいるのを見みて、
あっしが何なんとか役やくに立たちたい。
こんな箱屋はこや風情ふぜいでも、故郷こきょうへ帰かえれば地主じぬしの伜せがれ。
今いまは亡ねえ父親ちちおやが、あっしのために残のこしてくれた
田畑たはたを売うり払はらい
姐ねえさんに千せん円えんという金かねを、お渡わたしいたしました。
それというのも、この名披露目なびろめを最後さいごに、
あっしと一緒いっしょになって
堅気かたぎの商売しょうばいをしてくれるというから…
姐ねえさん…あっしは命いのちがけで惚ほれているんです。
峯吉みねよしさん、頼たのむから待まっておくれでないか。
今いまは太夫たゆうも披露目ひろめの準備じゅんびで寝ねる間あいだも無ないくらい…
今いま、別わかれ話ばなしを持もち出だしたら、
手切てぎれの金かねで名披露目なびろめをしたと
世間せけん様ようにいわれて、津つの国くに屋やの男おとこが廃すたる…
峯ほうさん、お前まえさんの親切しんせつには、
この通とおり、手てを合あわせています。
どうか、察さっしておくんなさい。
いいや、名披露目なびろめがすんだら、女房にょうぼうにすると、
津つの国屋くやさんが云いっているとか、いないとか。
そ、それは
じゃあ、その噂うわさは本当ほんとうなんでござんすね。
あっしを、あっしを欺だましていたんだ。
そうじゃない、堪忍かんにんしておくれよ。
きっと約束やくそくは守まもります。
今いますぐに、太夫たゆうと切きれるという事ことは…
峯ほうさん。お前まえさん何なにをするんだよ。
姐ねえさん、太夫たゆうと別わかれないのなら…
あっしと、あっしと一緒いっしょに死しんでくれ。
あぶない。峯みねさん、そんな物ものを持もって
待まって、峯みねさん、峯みねさん、止とめて、峯みねさん。
あ、あぶない。峯みねさん、峯みねさん、止とめて。
待まって、峯みねさん、峯みねさん…
峯吉みねよしさん、
私わたしは、私わたしはとんでもないことを…
恨うらみますまい この世よの事ことは
仕掛しかけ花火はなびに 似にた命いのち
燃もえて散ちる間あいだに 舞台ぶたいが変かわる
まして女おんなは なおさらに
あれから、十六じゅうろく年ねんもたってしまった。
今日きょうようやく、市ヶ谷いちがやの監獄かんごくから、出所しゅっしょ出来できました。
これからは、峯吉みねよしさんのお墓はか守まもりをして、
あなたの供養くように、一生いっしょう償つぐない続つづけます。
あれも夢ゆめ、これも夢ゆめ、一寸先いっすんさきは闇やみの浮世うきよなのねえ。
空そら眺ながめむれば 一いち点てんの
雲くも無なき果はての ほの白しろき
月つきの光ひかりに 浮うき出いでた
桧舞台ひのきぶたいの 両りょう花道はなみちに
許ゆるしてくれと 手てを合あわせ
女おんなの誠まことを 見みせましょう