叶かなうものなら もうひと太刀たちを
斬きって捨すてたや 吉良きら殿どのを
勅使ちょくし饗応きょうおうの 大役たいやく捨すてて
松まつの廊下ろうかを 血ちで染そめる
積つもる恨うらみの 意趣返いしゅがえし
「重かさねて申もうす 梶川かじかわ殿どの 乱心らんしんではござらぬ。
吉良きら殿どのへの積つもり重かさなる遺恨いこんでござる。
浅野あさの内匠頭あさのたくみのかみも五万石ごまんごくの城主じょうしゅ
打うち損そんじたからには神妙しんみょうにいたす。
その手放てばなして 衣服いふくの乱みだれを直なおす暇いとまをお与あたえ下くだされ 梶川かじかわ殿どの」
殿とのと呼よばれた 昨日きのうはいずこ
今日きょうは奈落ならくの 座敷牢ざしきろう
なんであの時とき 出来できない我慢がまん
捨すてて初はじめて 知しらされた
五ご万余まんよ石いしの 重おもたさを
「ああ 余よはあまりにも愚おろかであった。 許ゆるせよ 赤穂あこうの皆みんなの者もの…」
風かぜさそう花ばなよりもなお我われはまた 春はるの名残なごりを如何いかにとやせん
七日なのか桜さくらと 世間せけんは言いうが
わずか一いち夜いちやの 若桜わかさ
死出しでの旅路たびじの 白装束しろしょうぞくに
代かえて覚悟かくごの 目めの裏うらに
浮うかぶ赤穂あこうの 天守閣てんしゅかく
叶kanaうものならumononara もうひとmouhito太刀tachiをwo
斬kiってtte捨suてたやtetaya 吉良kira殿donoをwo
勅使chokushi饗応kyououのno 大役taiyaku捨suててtete
松matsuのno廊下roukaをwo 血chiでde染soめるmeru
積tsumoるru恨uraみのmino 意趣返isyugaeしshi
「重kasaねてnete申mouすsu 梶川kajikawa殿dono 乱心ranshinではござらぬdehagozaranu。
吉良kira殿donoへのheno積tsuもりmori重kasaなるnaru遺恨ikonでござるdegozaru。
浅野asano内匠頭asanotakuminokamiもmo五万石gomangokuのno城主jousyu
打uちchi損sonじたからにはjitakaraniha神妙shinmyouにいたすniitasu。
そのsono手放tebanaしてshite 衣服ifukuのno乱midaれをrewo直naoすsu暇itomaをおwoo与ataえe下kudaされsare 梶川kajikawa殿dono」
殿tonoとto呼yoばれたbareta 昨日kinouはいずこhaizuko
今日kyouはha奈落narakuのno 座敷牢zashikirou
なんであのnandeano時toki 出来dekiないnai我慢gaman
捨suててtete初hajiめてmete 知shiらされたrasareta
五go万余manyo石ishiのno 重omoたさをtasawo
「ああaa 余yoはあまりにもhaamarinimo愚oroかであったkadeatta。 許yuruせよseyo 赤穂akouのno皆minnaのno者mono…」
風kazeさそうsasou花banaよりもなおyorimonao我wareはまたhamata 春haruのno名残nagoりをriwo如何ikaにとやせんnitoyasen
七日nanoka桜sakuraとto 世間sekenはha言iうがuga
わずかwazuka一ichi夜ichiyaのno 若桜wakasa
死出shideのno旅路tabijiのno 白装束shirosyouzokuにni
代kaえてete覚悟kakugoのno 目meのno裏uraにni
浮uかぶkabu赤穂akouのno 天守閣tensyukaku