2007年「メルト」とともに始まった初音ミクの歴史
2007年8月31日に発売された「初音ミク」。
発売後はニコニコ動画を中心にオリジナル曲が次々と投稿され、新しい音楽文化が広がっていきました。
その初期を代表する一曲が、ryoの「メルト」です。
「メルト」は恋する気持ちを歌った初音ミク初期の代表曲
「メルト」は、ryoが2007年12月7日に投稿した初音ミクのオリジナル曲です。好きな人を前にした女の子の恋心を描いた歌詞と、爽やかで疾走感のあるメロディが魅力。
恋をして少し浮かれてしまう気持ちや、好きな人との距離にドキドキする様子が初音ミクの歌声で表現されています。
機械的な歌声でありながら、そこに一人の女の子の姿を想像できることも「メルト」の面白さ。
2026年にはNetflix映画『超かぐや姫!』のスペシャルトラックとして、ryo自身が新たにアレンジした「メルト CPK! Remix」も登場。
2007年の発表から約19年を経ても、新しい形で楽しまれ続けている初音ミクの代表曲です。
「歌ってみた」とともに広がったネット発のボカロ文化
「メルト」が大きく広がった背景には、当時のニコニコ動画ならではの文化もありました。誰かが投稿したボカロ曲を別の人が歌う「歌ってみた」、楽器で再現する「演奏してみた」、イラストや映像を付けた二次創作など、一つの曲をきっかけに次々と新しい作品が生まれていったのです。
リスナーはただ音楽を聴くだけではなく、自分なりの方法で作品に参加できるようになりました。
また、それまで音楽を広く届けるにはレコード会社やテレビなどを通すことが一般的でしたが、ボカロPはインターネットへ直接オリジナル曲を投稿できます。
ネットから生まれた一曲が多くの人に聴かれ、そこから新しいクリエイターや歌い手が注目されていく。
現在につながるボカロ文化の大きな流れは、初音ミクが誕生したこの時代から広がっていきました。
2010年「ローリンガール」が広げたボカロならではの表現
初音ミクの登場から約3年。
ボカロ曲にはポップスだけでなく、激しいロックや人間が歌うには難しい高速な楽曲も増えていきました。
その代表的な一曲が、wowakaの「ローリンガール」です。
「ローリンガール」は高速なメロディが印象的なwowakaの名曲
「ローリンガール」は、wowakaが2010年2月14日に投稿した初音ミクのオリジナル曲です。勢いのあるバンドサウンドと、目まぐるしく動くメロディが大きな特徴。
思うように進めなくても何度も繰り返そうとする少女を描いたような歌詞と、息つく暇もないほどのスピード感が強烈な印象を残します。
初音ミクの高音や高速な歌唱も相まって、一度聴けば耳に残るwowakaらしい一曲です。
ロックとVOCALOIDが結びつき、音楽表現がさらに自由に
2010年前後には、ロックとVOCALOIDを組み合わせた「VOCAROCK」もボカロシーンで存在感を高めていきました。「ローリンガール」のように、人間が歌いやすいかどうかに縛られず、初音ミクだからこそできる高速な歌唱や音程の動きを取り入れた曲も登場。
初音ミクは「人間の代わりに歌う存在」だけでなく、クリエイターの自由なアイデアを形にできる存在として可能性を広げていきました。
2014年「ヒビカセ」が描いた“電子の歌姫”初音ミク
2010年代半ばには、ロックだけでなくEDMやエレクトロなど、ボカロ曲のジャンルもさらに多彩に。
そんな時代を象徴する一曲が「ヒビカセ」です。
「ヒビカセ」はエレクトロサウンドと初音ミクの歌声が響く一曲
2014年に発表された「ヒビカセ」は、Gigaが作曲・編曲、Reolが作詞を担当した楽曲です。重低音の効いたビートとエレクトロサウンドに、デジタルな初音ミクの歌声が重なります。
楽曲では、画面越しの存在やバーチャルな歌声を感じさせる世界観も描かれており、「電子の歌姫」である初音ミクとの相性も抜群。
人間らしい歌声を目指すのではなく、電子的な声だからこそのかっこよさを楽しめる人気曲です。
電子的な歌声や映像も含めて楽しむボカロ文化へ
このころには、MVやイラスト、ダンスなども含めてボカロ曲を楽しむスタイルがより広がっていきました。「ヒビカセ」も「踊ってみた」やMMDなど、さまざまな形で楽しまれてきた楽曲の一つです。
ボカロPによって初音ミクの歌わせ方も大きく異なり、曲ごとにまったく違う「初音ミク」と出会えることも、ボカロならではの魅力になっていきました。
2017年10周年を迎えた初音ミクと「砂の惑星」
2007年に誕生した初音ミクは、2017年に10周年を迎えました。
そんな記念の年に登場したのが、ハチによる「砂の惑星」です。
「砂の惑星」はハチが手掛けたマジカルミライ2017テーマソング
「砂の惑星」は、「初音ミク『マジカルミライ 2017』」のテーマソングとしてハチが書き下ろした楽曲です。どこか乾いた雰囲気のサウンドと独特な言葉選びが印象的で、華やかに10周年を祝うだけではないところも大きな特徴。
ハチ自身も制作時に、以前とは変わったボーカロイドを取り巻く環境や、自身が見てきた「原風景」を振り返ったことを明かしています。
初音ミク10周年という節目だからこそ、ボカロの過去とこれからを考えたくなる一曲です。
10年の歴史を経て、ボカロ出身クリエイターも活躍
「砂の惑星」が話題になった理由の一つが、米津玄師として活動していたハチによる約4年ぶりのボカロ曲だったことです。初音ミクが登場したころには新しい存在だった「ボカロP」も、2017年には日本の音楽シーンにつながる大きな文化へと成長していました。
10周年はゴールではなく、新しいクリエイターやリスナーが加わっていく次の時代への節目となったのです。
2020年「愛されなくても君がいる」が歌った初音ミクとのつながり
2020年になると、ボカロ曲と出会う場所もニコニコ動画だけでなく、YouTubeやSNS、音楽配信サービスへと広がっていました。
そんな中で生まれたのが、ピノキオピーの「愛されなくても君がいる」です。
「愛されなくても君がいる」はピノキオピーが届けたマジカルミライ2020テーマソング
「愛されなくても君がいる」は、「初音ミク『マジカルミライ 2020』」のテーマソングです。明るさの中にどこか切なさを感じるサウンドと、初音ミクという存在そのものを意識させる歌詞が印象的。
誰かが曲を作り、初音ミクが歌い、それを誰かが聴く。
そんなクリエイターと初音ミク、そしてリスナーのつながりを感じられる一曲です。
長く初音ミクを聴いてきた人なら、自分自身のボカロとの思い出を重ねたくなるのではないでしょうか。
時代や世代が変わっても受け継がれていくボカロ文化
2007年から13年が経ち、音楽を楽しむ場所は大きく変化しました。それでも「初音ミクに歌わせたい曲を作る」というクリエイターたちの楽しみ方は続いています。
昔から活動するボカロPと新しいクリエイター、昔からのファンと新しいリスナー。
さまざまな世代が同じ初音ミクを通じてつながっていくことも、長く続くボカロ文化ならではです。
2025年「モニタリング」が示した現在進行形の初音ミク
初音ミクの歴史は、昔の名曲だけではありません。
誕生から18年を迎えた2025年にも、大きな記録を作る楽曲が登場しました。
DECO*27の「モニタリング (Best Friend Remix)」です。
「モニタリング (Best Friend Remix)」はYouTubeで新記録を生んだ話題曲
「モニタリング (Best Friend Remix)」は、大ヒットした「モニタリング」をDECO*27とHayato Yamamotoがリミックスした楽曲です。原曲の雰囲気から大きく変わり、明るく爽やかなダンスポップへとアレンジ。
歌詞やメロディにも変化が加えられ、「ベストフレンド」というタイトルに合った新しい魅力を楽しめます。
2025年9月5日のMV公開から8日4時間40分でYouTube1000万再生を突破し、ボカロ曲史上最速記録を更新しました。
初音ミク誕生から18年が経っても、新しい曲が記録を塗り替えていることを象徴する一曲です。
SNS・YouTube時代にも新しい世代へ広がる初音ミク
2007年の「メルト」がニコニコ動画から広がった一方、現在はYouTubeやSNS、ショート動画など、曲との出会い方もさまざまです。実際に「モニタリング」もUGCを中心に大きなムーブメントとなり、「Best Friend Remix」はYouTubeのウィークリーミュージックビデオランキングで初登場1位を記録しました。
「メルト」から初音ミクを知った人もいれば、DECO*27の近年の人気曲から知った人もいる。
19周年を迎えても、新しい世代にとっての「最初の初音ミク」が生まれ続けています。
初音ミク19周年!名曲とともに続いていく20周年への歴史
2007年の「メルト」から2025年の「モニタリング (Best Friend Remix)」まで、6曲を並べるだけでも初音ミクの音楽が大きく変化してきたことが分かります。ロック、エレクトロ、ダンスポップなど曲のジャンルは広がり、ニコニコ動画からYouTubeやSNSへと曲との出会い方も変わってきました。
それでも、初音ミクから新しい曲や作品が生まれ続けていることは19年前から変わりません。
2027年には、いよいよ初音ミク20周年。
あなたにとって、忘れられない初音ミクの一曲は何ですか?

