夏にふさわしい楽曲『夏の終わり』
森山直太朗の代表曲の一つ『夏の終わり』。2003年のシングルで、森山直太朗の歌マネでもよく使われる楽曲です。
サザンの『真夏の果実』、ZONEの『secret base ~君がくれたもの~』、井上陽水の『少年時代』など夏ソングは沢山あります。そんな夏にふさわしい曲の一つ。
「水芭蕉揺れる畦道 肩並べ夢を紡いだ」で始まる歌詞。夏の終わりの情景が見えてきます。
夏の終わり
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夏の終わり 夏の終わりには ただ貴方に会いたくなるの
いつかと同じ風吹き抜けるから
≪夏の終わり 歌詞より抜粋≫
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夏の終わりの時期に遠くにいる人を思う歌詞。曲のゆったりした雰囲気やメロディが確かに夏の終わりを感じさせます。
一見、夏の終わりのラブソングにも思えるこの楽曲。しかし、実はこの曲は森山直太朗曰く、「反戦歌」なんだとか。
「あれから」が指す意味
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流れゆく時に 笹舟を浮かべ
焼け落ちた夏の恋唄 忘れじの人は泡沫
空は夕暮れ
≪夏の終わり 歌詞より抜粋≫
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反戦と聞くと、確かに「焼け落ちた」というフレーズが空襲で焼け落ちた家屋を連想させることが分かります。
泡沫は水面に浮かぶ泡のこと。転じてはかなく消えていくものを指します。ここでは直前の笹舟にもかかっています。忘れたくない人は泡沫のようにはかなく消えてしまった。笹舟は笹で作った舟なので、これもはかないものの象徴。
また舟=航海を表すので、「肩並べ」一緒にいた人が遠くに行ってしまった、亡くなってしまったことを表しています。
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追憶は人の心の 傷口に深く染み入り
霞立つ野辺に 夏草は茂り
あれから どれだけの時が 徒に過ぎただろうか
せせらぎのように
≪夏の終わり 歌詞より抜粋≫
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心の傷口、痛ましい戦争の記憶に染み入ってくる過去の記憶。しかし、そんな忘れたくない人の記憶も、野辺に霞が立つように霧がかかってきて、新たに夏草が茂るように新しい記憶に上書きされていく。
「あれから」とは戦争のころからを指すことが分かります。せせらぎのように少しずつ記憶が薄れていくことを歌詞にしています。
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夏の祈り 夏の祈りは 妙なる蛍火の調べ
風が揺らした 風鈴の響き
≪夏の終わり 歌詞より抜粋≫
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魂が風となり、心に届く
夏の祈り=終戦記念に絡んだ反戦の祈り。この祈りこそが妙なる調べ=素晴らしい旋律である、と歌っています。蛍火はホタルの光ですが、「火垂るの墓」という映画があるように戦死者の魂の象徴でもあります。
「風が揺らした」「風鈴の響き」は、そんな戦死者の魂が風となって、風鈴の響きを使って語りかけてくるようだ、という意味。
「夏の終わり」というのは「戦争の終わり」でもある。この曲が切なく感じるのは、こういった反戦の思いも込められているからなんですね。
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TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)