今も昔も、日本人が共感しやすい歌詞
『雨のち晴れ』はミスチルの90年代の楽曲です。「今日は雨ふりでもいつの日にか」「虹をわたろう」という歌。
ミスチルの歌詞は日本人が「共感しやすい」。共感する人が多いことでずっと支持されてきました。
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レンタルビデオ店においてどこの店舗でも人気で、常に古いアルバムも新しいアルバムもレンタルされるアーティストがいました。それがミスチルです。
常に古いアルバムもまわるのはミスチルのみ。厳密にはゆず、バンプあたりもずっと人気ですが、やっぱり印象としてミスチルがダントツです。
雨のち晴れ
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不景気のあおり受けて 社内のムードは
緊迫しているから 僕一人が浮いてる
≪雨のち晴れ 歌詞より抜粋≫
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これが90年代の歌詞です。いまだに古さを感じさせません。というより、不景気はさらにひどくなっているといえます。
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「お前って暗い奴」そう言われてる
幼少の頃からさ
≪雨のち晴れ 歌詞より抜粋≫
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悲しいですね。幼少のころから暗い奴と言われてるのはさすがに悲しいものがあります。しかし、これこそがミスチル。とにかく日本人がイメージを抱きやすいワードを使ってきます。
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1DK 狛江のアパートには
2羽のインコを飼う
≪雨のち晴れ 歌詞より抜粋≫
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このようにさらに細かい描写がきます。光景を想像できるんですね。「1DK」「狛江」というところが「あるある」ポイントをついてきます。この言葉のチョイスが絶妙。
「2羽のインコ」というのがまた、ありそう!と感じさせるポイント。うだつのあがらないサラリーマンは何となくインコに話しかけてそうだというイメージがわきます。
誰もが言われたことのありそうな一撃
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たまに実家に帰れば 真面目な顔して
出来損ないの僕に母親は繰り返す
「生きているうちに孫を抱きたい」それもわかる気がする
なるべくいい娘探したいって思っちゃいるけど
≪雨のち晴れ 歌詞より抜粋≫
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この追い打ちがすごいですね。母親が言いそうなことナンバー1です。ここも「あるある」。この歌はとにかくそういった「あるある」で構成されています。
この曲はこういった「些細な日常の描写」にあふれているのです。これこそがミスチル。メッセージに普遍性がある、ということ以上に「共感」しやすい。多くの日本人がイメージを共有しやすいんですね。
それだけ日本人の生活におけるイメージとはこういうもんなんだなと実感します。
それでも「イメージはいつでも 雨のち晴れ」と歌うのです。
良くないことばかりの現実でも、いつの日にか良い方向へ向かうという歌。多くの日本人はこの歌に励まされるのです。
「共感して聴ける」それが最大の魅力
だから誰もミスチル地蔵に文句を言えません。ミスチル地蔵とは、サマソニにミスチルが出演した際におきた現象を指します。ファンが大挙しておしよせミスチル出番前のアーティストから前方を陣取り、他の海外アーティストに全く関心も示さず動かぬ地蔵状態だったことが批判の対象になりました。
「フェスにおいて前方を陣取るのであれば、興味のないアーティストでも盛り上がれ」というフェスの不文律が存在します。しかし、この時集まったフェス慣れしてないミスチルファンには通じませんでした。「メッセージ」に「共感」して聴くのがミスチルだからです。
しかし批判されて「雨」状態だったミスチル地蔵の人も、次にミスチルがフェスに出るときは「晴れ」てミスチル手拍子、ミスチルヘドバンぐらいになってくれると思います。彼彼女らは『雨のち晴れ』に共感してくれるような、多くの良き日本人だからです。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)
1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。 1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。 「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングル···