「手越祐也×すりぃ」の異色のコラボ
7月から開始された、手越祐也の6ヶ月連続配信プロジェクト。
これまでに公開された『シナモン』『ARE U READY』『LUV ME, LUV ME』に続いて、第4弾となる『ウインク』が2021年10月13日に配信リリースされました。
この楽曲は ”手越らしさ” が余すことなく展開されたハロウィンソング。
MVは、昭和レトロなイントロに始まり、妖しさ漂う洋館で手越が狼男に変身するコミカルな内容となっています。
また、ヴァンパイアの仮装をした手越が、渋谷のスクランブル交差点や原宿の竹下通りを練り歩く個性的なシーンも盛り込まれていますよ。
手越の自由なアイディアから生まれた「空想と現実の絶妙な曖昧さ」が、楽曲の魅力をさらに引き出しました。
「ウインク」の作詞・作曲・編曲を手掛けたのは、ボカロPのすりぃです。
2018年に発表した『空中分解』という楽曲をきっかけに、ボカロPとしての活動をスタートさせました。
2020年8月からは、他のアーティストへの楽曲提供も意欲的に行っており、Adoの『レディメイド』等をプロデュースしています。
代表作には『テレキャスタービーボーイ』『ジャンキーナイトタウンオーケストラ』『エゴロック』などがあります。
強いメッセージ性と発音の面白さの両方に特化した歌詞は、すりぃならでは。
また、音楽の中に主題が確立されており、どんなに速いテンポの楽曲でも聴き所をワンフレーズでまとめているので、腑に落ちる気持ちよさが感じられます。
『テレキャスタービーボーイ』や『エゴロック』は、3分に満たない楽曲であるにもかかわらず、聴いた後の満足感は計り知れません。
手越祐也×すりぃという異色のタッグが一体どんな楽曲を生み出したのか、さっそく『ウインク』の歌詞の内容を見ていきましょう。
「恋のトキメキ」を三ヶ国語で表現
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あの子に夢中 オットッケ チンチャ love you
四六六時中 ほっとけないと熱中
キュートなの溶け出す左脳
気付かない思考停止のままね
≪ウインク 歌詞より抜粋≫
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最初から最後までとにかく遊び心満載な『ウインク』。
冒頭からワンフレーズに日本語・韓国語・英語の三ヶ国語が詰まっています。
韓国語の部分をピックアップしてみましょう。
”オットッケ(어떡해)” は「どうしよう、どうやって」、そして ”チンチャ(진짜)” は「本当に」といった意味です。
つまり ”オットッケ チンチャ” は「どうしようマジで」といったニュアンスになります。
K-POPの楽曲や韓国ドラマでもよく使われるフレーズですね。
この部分では、主人公が素敵な「あの子」に魅了され、大興奮している様子が伝わってくるでしょう。
「あの子に夢中」と「四六六時中」や「オットッケ チンチャ love you」と、「ほっとけないと熱中」のように発音の面白さがありながらも、韻はキレイに揃えているところに、すりぃの個性が光ります。
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甘口のレビュー クェンチャナチャナ love you
眼の中に電流 君、だってだって猛獣
誘いはNo 心は摩耗
気付かない不毛なこの時間を
≪ウインク 歌詞より抜粋≫
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ここで登場するのは ”クェンチャナ(괜찮아)”という韓国語です。
これは日本語で「大丈夫」という意味で、親しい間柄で使われるカジュアルな言い方です。
主人公は「君」に対して必死にアプローチしますが、冷たくあしらわれてしまいます。
すりぃは『ウインク』について「思わせぶりな態度に惑わされ時間とお金を使っても手に入らないまま手のひらで踊らされている。そんな不毛な時間を過ごしたとて学ばずまた盲目になっていく様を描きました。」と語っています。
このコメントどおり、魅惑的な「君」に主人公が手玉に取られる様がダイレクトに描かれています。
手越がこだわった「二面性」
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ラッタッタッ
華麗なウインク
ラッタッタッ
酔い時雨 今宵ソワレ
あの子が欲しい花いちもんめ
恋しくて 夢の中で
枯れるまで泣いてる
≪ウインク 歌詞より抜粋≫
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手越は『ウインク』の制作にあたって、歌い方やコンセプト等あらゆる表現の中に「二面性」というテーマを取り入れました。
すりぃはこれを受けて、楽曲の構成にも工夫を施しました。
「ラッタッタ」の部分からは、トラップヒップホップの要素が取り入れられ、全く違う顔を覗かせます。
それまでハロウィン色を前面に出し、BPM130で軽快に進んできましたが、ここからは2拍取りで重低音の利いたダーティーなビートが主体となっている様子。
「酔い時雨(よいしぐれ)」 とは、完全に酔っ払ってしまう一歩手前の状態のことを指します。
「ソワレ」は劇場の「夜公演」のこと。
ここで初めて主人公の”我”の部分が現れます。
花いちもんめの遊び歌になぞらえて、はっきりと”あの子が欲しい”と要求する主人公。
しかし、それはどうやら現実の話ではなかったようで、彼は夢の中でも”あの子”に振られてしまいます。
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夜明けの風 切なさを帯びて
酔いを覚ます 雨のメロディ
≪ウインク 歌詞より抜粋≫
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手越が最後にこだわったのは、実声とファルセットの使い分けです。
もともと伸びやかな高音が持ち味の手越ですが、最後の「雨のメロディ」ではあえてファルセットで歌い収めています。
それまでのパワフルな実声と中世的な美しいファルセットの対比が、鮮烈なインパクトを残していますよ。
圧倒的なセルフプロデュース力
『ウインク』の中毒性に、ヘビロテから抜け出せなくなってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。何よりもこの楽曲を通して、手越の圧倒的なセルフプロデュース力が証明されたかと思います。
『ウインク』は歌い方のニュアンスによって、様々な表情を見せてくれる楽曲です。
これから、手越祐也がどのように『ウインク』をライブパフォーマンスしていくのか、期待して注目していきましょう。