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フライングスタート上等。岩崎愛「woman's Rib」による”飛び出す勇気“のススメ

久しぶりに、激しすぎず、スローすぎず、聴きながらずっと歩き続けたくなるような曲に出会った。ギターが奏でる小気味いいリズム。そこに絶妙にリンクする、英語の発音みたいにルーズなボーカル。岩崎愛の「woman's Rib」は、聴いているだけで楽しい気持ちになれるハッピー・トラックだ。


久しぶりに、激しすぎず、スローすぎず、聴きながらずっと歩き続けたくなるような曲に出会った。ギターが奏でる小気味いいリズム。そこに絶妙にリンクする、英語の発音みたいにルーズなボーカル。岩崎愛の「woman's Rib」は、聴いているだけで楽しい気持ちになれるハッピー・トラックだ。

岩崎愛は大阪出身で、現在はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文が主催する「only in dreams」に籍を置くシンガーソングライター。「woman's Rib」は、同レーベルから3月に発売された彼女の1stフルアルバム『It's Me』のセカンドリードトラックとなっている。



曲の第一印象で「ハッピー・トラック」と書いたけれど、歌詞のほうは、実は一筋縄ではいかないところがおもしろい。「ウーマン・リブ=女性解放運動」だと見せかけて、「リブ」は「Lib(Liberation)」ではなく「Rib」。「解放」ではなく「肋骨」。「女性たちよ立ち上がれ!」という意味ではなく、したたかに生きる女性の図太さを、骨にたとえて歌っているのだ。

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素敵なdarling 私はここよ
白馬のプリンス Please pick me up
年収は一千万円 高層マンション買って 長男以外で
Where are you?

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例えば上の歌詞。周りを見渡すと、結婚相手に求める条件が厳しい女性が多すぎる。少女のままの心で夢を見ている女性が多いから、結婚適齢期も上がっていく。「年収は一千万円 高層マンション買って 長男以外で」そんな王子みたいな男性、どこにいるんだろう。いないと思うよ。うーん、ここはちょっと耳が痛い。

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Heart break! 何も喉を通らないわ
Don't go I can't live without you
悲劇のヒロイン 涙止まらないわ
ケーキ食べながら Somebody help
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寂しかっただけなの だけどいつでも本気で生きてるわ
あなたのことも上書き保存ですぐに忘れるわー

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男性を条件で選んでいるなんて、本気で愛していないんじゃないの?何もかもが恋愛ごっこみたい。「悲劇のヒロイン」「ケーキ食べながら」というのが、ネットでも話題になる「スイーツ女子」を皮肉っているフレーズに見える。そして、そういう女性って、実はけっこうしたたか。上記の最後「わー」と伸ばすところが適当に楽しくやってますよ、という軽さを醸し出していて、「だまされんなよ、男たち」とほくそ笑んでしまう。

…でも、この曲はそれだけでは終わらない。

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被害者はどこだ 心から愛してるって言えるかい
理解者はだーれ 心から信じてるって言えるかい

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上で挙げた2パターンは、現代社会を生きる女性の主流イメージ。でも、それって本当? イメージに踊らされていない? と、岩崎愛は続ける。「体裁ばっかりで愛がない」という現象の、本当の被害者は誰なのか。それは、高い条件を突きつけられて、女性に選ばれる側の男性だけじゃない。

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フライングスタートがずっこいんだなぁ っつーんで
一から All over again
How many times 繰り返してくうちに一抜けた
あれ?Who are you?

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「ずっこい」は、関西の方言で「ずるい」ということ。「ずっこい」フライングスタートを避けようとするあまり、周りに合わせて自分を見失う。
「これが幸せ!」というガチガチの一般論に踊らされて、戸惑っている女性だって被害者なのだ。ステレオタイプな幸せを追うあまり、自分に向かって「Who are you?(一体だれ?)」となってしまうのだから。

曲の中で繰り返される「フライングスタート」という言葉に込められているのは、きっと、岩崎愛なりのエールだ。一般論に、女性も男性も負けるな。みんなと同じじゃないと…と怖がって踏み出せずにいると、カタチだけの幸せのループの中をずっと漂うことになる。「フライングスタート(=人と違うこと)」だって、時にはしてみなきゃ。

「How many times 繰り返してくうちに一抜けた」
そのループを抜けた時、人は心からハッピーになれるんじゃないの?

この曲は、男性ミュージシャンを入れず、女性のみで演奏されているところにも注目したい。参加するのは、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)、福岡晃子(チャットモンチー)に、あらきゆうこ。精鋭選りすぐりの「女性が作った女性のための歌」という演出が心憎い。

耳に残る歌声。そして、皮肉に見せかけたエール。岩崎愛、これから気になる存在になりそうだ。

TEXT:佐藤マタリ

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